軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第068話 仕事へ

その後もワインを飲みながらゆっくりと食事を堪能していくと、食事が終わった頃には外が暗くなっていた。

しかし、海には所々に灯りが見えており、船が通っているのがわかる。

「静かな夜ですねー」

「そうだな」

ヤークの町でも夜の川を見ていたが、あそこは飲み屋が近かったこともあってか、少し騒がしかった。

しかし、ここではそういった声もなく、心地良い静寂だ。

「さて、休む前に防腐剤の方を作ってしまいましょうか」

「そうだな」

防腐剤を作ることに決めると、ベッドの方で跳ねていたウェンディがテーブルまでやってきた。

「どうした?」

「見学です」

あ、そう……

「先輩、この本によると、防腐剤は銅やクロムを水と錬成したらできるそうですね」

エルシィがそう言ってレシピ本を見せてくる。

「ふーん、やはりそんなに難しくないな」

「そんなものですか?」

ウェンディが聞いてくる。

「難易度的にはお前のための食器類の方が高いくらいだ」

サイズを小さくするのがね。

特にグラス。

「その辺がわかりませんね」

「お前が得意なのは魔法の方だからな」

俺とエルシィはインゴットから防腐剤を錬成していく。

水はウェンディに教えてもらった水魔法があるのでスムーズに錬成することができた。

そして、1時間もしないうちに木5本分の防腐剤が完成した。

なお、インゴットはかなり余ったのでまた後日使うことにする。

「終わりましたねー。お風呂に入ってゆっくりしましょうか」

「ああ。先に入ってこいよ。片付けはしておくから」

「先輩、やさしー!」

エルシィが満面の笑みを浮かべると、風呂場の方に行ったので片付けをした。

テーブルがすっきりすると、ウェンディと暗い海を眺めながら待ち、エルシィが風呂から上がってきたので俺も入る。

その後、3人で海を眺めながら話をし、この日は早めに就寝した。

そして、翌日。

少し遅めに起きた俺達は朝食を食べ、準備をすると、時間になったので1階に降りる。

すると、受付の前にはニーナがすでに来ており、俺達を待っていた。

「おはよー。ニーナちゃん、もう来てたんだ」

「おはよう。港町の朝は早いからね。あ、レスター先輩、兄さんが今夜、一緒に食事に行かないかって言ってましたよ」

カルロが?

昨日、そんなことを言っていたが……

「社交辞令じゃなかったのか……」

「いや、卒業以来に会ったクラスメイトだったら普通は誘うじゃないですか」

いや?

俺はそんな経験ないぞ。

「まあ、誘われたのなら行くか……」

断るのも悪いし。

一応、友達だし……

「じゃあ、エルシィ、私達は私達で女子会をしようか」

そっちは真の友達だもんな。

「良いね。ウェンディちゃんもこっちに来るよねー?」

「そうですね。男性は男性で積もる話もあるでしょうから」

ないんだなー、これが。

「ニーナ、造船場にいるカルロに声をかければいいのか?」

「いえ、夕方にウチに来れば良いと思いますよ」

近いし、それでいいか。

「わかった。じゃあ、行くか」

「そうですね。女将さーん! 行ってくるねー!」

ニーナが奥の方に声をかける。

すると、バスケットを持った女将さんが奥から出てきた。

「出るの? 森の方に行くんでしょ。じゃあ、これを持っていって」

女将さんがニーナにバスケットを渡す。

「これ、何ですか?」

「お弁当。残った食材で作ったものだけど、お昼にでも食べて」

この宿屋、サービスがすごいな。

「おー! ありがとうございます!」

「いいのよ。じゃあ、お仕事頑張ってね」

女将さんはそう言って、奥に引っ込んでいった。

「ニーナちゃん、女将さんと知り合いなの?」

エルシィが聞く。

「ご近所さんだもん。子供の頃から知っているお姉さんだね」

だからこんなにサービスが良いのか。

「なんかそういうのって良いね」

「そう? まあいいや。じゃあ、行こうか」

俺達は宿屋を出ると、坂道を降りていく、下の工場街にやってきた。

工場街は昨日と同様に屈強な船乗りや職人があちこちにおり、仕事をしている。

「忙しそうだな」

「まあ、これが主産業ですからね。こういう人達がいるから私達もご飯を食べられているんですよ」

まあ、そうだな。

「ニーナちゃん、森はあっち?」

エルシィが左の方にある通りを指差す。

「うん。あっちに行けば西門だね。そこを抜ければ森に行ける。行こうか」

俺達は左の方に歩いていく。

やはり造船関係の工場が多かったが、飲食店も多くあり、まだ朝だというのに酒を飲んでいる船乗りの姿も見える。

「飲んでる奴がいるが、仕事は?」

ニーナに聞いてみる。

「夜勤とかありますからね。漁師さんの中には夜に漁をする人もいるし、船って夜も動いたりしますから昼夜が逆転している人もいるんですよ。まだ朝ですけど、あの人達からしたら仕事終わりの一杯でしょう。そういう人達も多いですし、同じように夜勤がある軍の方もいるのでこの町は朝から店をやっている飲食店も多いんですよ」

なるほどねー。

俺達がその後も通りを歩いていくと、門が見えてきた。

「あれか」

「はい。昨日説明したようにこの町は国としても重要な拠点ですので出入りする時に身分証の提出を求められたり、審査をすることがあります。そういう時に冒険者ギルドのカードが役に立つんですよ」

確かにそういうこともあるか。

「冒険者カードを提出すればいいのか?」

「あ、いえ。今回は別にいらないです。私もよく採取に行きますし、軍の方にも商品を納めるのでほとんど顔見知りです。顔パスですね」

ニーナがついてきてくれて、正解だったわけだ。

そのまま歩いていくと、門までやってきた。

すると、ニーナが門の周りにいる兵士に手を振る。

「んー? ニーナちゃん、採取か?」

一人の兵士がニーナに声をかけてきた。

「そうなんですよ。それと学校の同級生と先輩を森に案内します。木材の採取の仕事をされるらしいので」

「先輩? 錬金術師か?」

「そうですね。ご結婚されて新婚旅行中なんですよ。ヤークの町でたまたま会ったんですけど、先輩は兄さんの同級生でもありますし、寄ってもらったんです」

「へー、それは良いね。まあ、気を付けてな」

兵士達は朗らかな表情だし、警戒している様子はない。

「ええ。またポーションを買ってくださいよー。二日酔いに効くポーションを作ったんですよ」

「そりゃ良いな」

兵士達が笑う。

「今ならサービスで値引きしますよ」

「あいよー」

ニーナと兵士達は終始和やかであり、そのまま門を抜けた。

「警戒がゼロだったな」

「まあ、地元の人間ですからね、これでレスター先輩とエルシィの顔も売れましたし、次からは私がいなくてもすんなり通れると思いますよ」

それはありがたいが、良いのかね?

いやまあ、それだけニーナに信用があるっていうことなんだろうな。