軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第161話 嫌になった先輩 ★

俺とニーナは町の西の方にある公園がある広場の芝生の上で敷物を敷いて座っていた。

「この旅でよくわかったが、彼女が欲しいな」

「私も彼氏が欲しい。かっこいい感じの」

俺も可愛い感じの。

「なんで隣がお前なんだか……」

周りにはカップルと家族連れしかいない。

まあ、俺達も家族なんだが……

「それはずっと思っている。兄さんは嫌」

俺も嫌。

別にニーナのことが嫌いとかではなく、何か嫌だ。

「兄妹はそんなものだろうな」

「あと、いちゃつく2人のせいかな」

レスターとエルシィな。

「「ハァ……」」

「ため息なんてどうした? 嫌なことでもあったか?」

女性の声がしたので振り向くと、そこには長い金髪を一本に結んだ若い女性が立っていた。

「あ、ミュリエル先輩」

「こんにちはー。別にそんなことないっすよ」

本当にたいしたことではない。

「ふーん……座っていいか?」

「どうぞ、どうぞ」

そう答えると、ミュリエル先輩が俺の隣に座った。

これでぱっと見は両手に華のいけ好かない野郎だ。

もっとも、事実はそんなに甘くないが。

「わざわざ来てもらって悪いな」

ミュリエル先輩が謝ってきた。

「仕方がないっすよ」

「そうですよ。びっくりはしましたけど」

ホントにな。

「そうか……私は昔からことごとく、貧乏くじを引くんだよ」

運はないだろうな。

「まあ、そのことは置いておきましょう。まずは脱出のことです。ここに来る前に駅や軍を見てきましたが、特に動きはありませんね」

「ああ。私もその辺を見ながらここまで来たが、いつもと変わらない感じだ。とはいえ、いつまでもこの国にはいたくない」

それはそうだろう。

「先輩、脱出の話をする前にちょっといいですか?」

「何だ?」

「なんでレスターとエルシィを追っているんですか? ほら、前にウチに来たじゃないですか」

探り、探り。

「あー、あれか。知らんが、そいつらは宮廷錬金術師だったらしい。どうせ、貴族とぶつかって逃げたってところだろう」

「そんなところですか……見つけたら始末するんですっけ?」

あの2人が何をしたのかは知らないが、殺すまでのことかね?

「私はそんなことできないから上に連絡してそういうことを生業とする人間を呼ぶ形だろうな」

「俺らの同級生なんですけど……」

「私の後輩だな。でもまあ、仕方がないだろう。それが仕事だ。もっとも、もう知らんがな。私は一度、イラドに帰ったらそのまま仕事を辞めて、実家に帰る。もう付き合ってられんわ」

あ、密偵を辞めるんだ。

「大丈夫なんですかね? 密偵って辞められます?」

「私の実家はイラドの北の方にある港町だが、昔からそこの領主に誘われていたんだ。実家にいた頃はそこの令嬢とも親しかったし、何とかなる」

実家の領地貴族のお抱え錬金術師になるわけか。

ミュリエル先輩も優秀な錬金術師だし、地元の貴族がバックにいるなら辞められるかもな。

「それは良いことを聞きました」

「そうか?」

ミュリエル先輩がきょとんとする。

「ええ。実はレスターとエルシィってエルディアに来てたんですよ」

「そうなのか? 何故言わない?」

「そりゃ同級生で友人なんで」

普通、売らないわ。

「それもそうか……仕事は真面目にやらないとダメだぞ」

「真面目にやって、今の先輩があるんじゃないですか」

「ホントにな……ハァ……卒業する時、素直に伯爵の誘いに乗っておけば良かった」

ミュリエル先輩の実家の領主って伯爵か。

結構、偉いな。

「ミュリエル先輩はなんで今の仕事に?」

「好きに笑うと良い。ランスに行きたかったからだ。華の都でキラキラした生活を送りたかった」

しょうもなさすぎて笑えねー。

「それだけ?」

「まあ、一度くらいは国の外を見たかったんだよ」

ふーん……

「そうっすか」

「それでそのレスターとエルシィはどうしたんだ? まだエルディアか?」

「いえ、話はここからです。2人は船でイパニーアに向かい、そこから北上し、ランスにいます」

「よりにもよってランスか。あの2人も運がないな」

そこはどうだろう?

「それでですね、オーレーで偶然、再会したわけです」

「ランスにいることを知っているということはそうだろうな」

まあね。

「それでまあ、一緒にここまで来たわけですよ」

「ふむ……2人もイラドの人間だし、協力して脱出しようというわけか?」

ちょっと抜けているけど、やっぱり賢い人だな。

「そうなりますね」

「大所帯になるが、大丈夫か?」

ミュリエル先輩はレスターとエルシィをどうにかしようとは思っておらず、そっちの方が心配のようだ。

「ミュリエル先輩、ここからは私が説明します」

ニーナが説明するようだ。

「頼む」

「脱出方法ですが、私が商人でもあることを生かし、この町で物資を購入します。さらにはトールハイルでも同じように購入し、ターリーに帰るという仕入れの商人を装います」

まあ、実際に買うし、儲かるんだけどな。

「なるほど。私達はその護衛、もしくは、手伝いといった感じだな?」

「はい。ミュリエル先輩は剣も使えますよね?」

「実戦経験はほぼないが、任せておけ」

うん、まあ……

「装うだけですからそれで十分です」

「わかった。となると、出発はいつだ?」

「今日はこれから調査をします。そして、明日に仕入れをしますから早ければ明後日にでも出発しましょう」

「貨物列車の切符は取れるか?」

貨物列車は商人に人気だからなかなか取れないのだ。

「調査を兼ねて、駅に行きますので取ってみます。ダメな場合でもなんとかします。こういう町はお金でどうにかなりますので」

それでは赤字が出るかもしれないが、さすがに経費ということでイラドも見てくれるはずだ。

「わかった」

「では、早速、動きましょう。ミュリエル先輩は念のため、人目が付かないように待機しておいてください。明日の夕方にでもレスター先輩とエルシィを紹介します」

それくらいが良いだろうな。

「ああ。泊まっている宿屋で待っている。北の方にある【ささやきの宿】だ」

「わかりました。ではこれで」

俺達は立ち上がり、敷物をしまうと、解散した。