軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第139話 そんなもん

「じゃあ、夕方になったらその宿屋に行ってみるわ」

「どうぞ、どうぞ! 連絡はしておきますので!」

受付嬢がうんうんと頷く。

「悪いな。それとこの町ってやはり湖が観光地なんだよな?」

「オーレー湖ですね。一番はそこでしょう。あとはワイン工場の見学とか、畑の収穫体験とかありますよ」

修学旅行かな?

「惹かれないなー」

「まあ、そうかもしれませんね。大きい街ですし、美術品を始め、小物なんかも売っている店も多いです。デートコースはその辺りでしょうかね?」

やっぱり惹かれないな。

でも、エルシィはそういう買い物が好きだったはずだ。

まあ、これ良いなーって言って、買わずにあとで自分で作るような奴だけど。

「町を回るのも良いかもな。でも、やっぱり湖か……どうする? 今から行ってみるか?」

エルシィに確認する。

「そうですね。昼食を食べて、行ってみても良いと思います」

「私も見てみたいです」

ウェンディも賛成のようだ。

「あ、今日はやめた方が良いですよ」

受付嬢が止めてきた。

「何かあるのか?」

「昨日、雨が降ったんですよ。だから今日は濁っていると思います。明日の方が綺麗ですし、せっかく湖を見に来られたのならベストな日が良いと思います」

あー、雨か。

「確かにそれは明日に回した方が良いな」

「ええ。おすすめは昼くらいに行って、ピクニックを楽しみ、夕方にボートに乗ってちゅーです。私もいつか王子様が迎えに来たらそうするんだって子供の頃から思ってました」

王子様って……まあ、子供の時の話か。

「ちゅーは置いておいて、それが良いかもな。ピクニックには良い気温だし」

寒くもなく、暑すぎない。

暖かい春を感じられそうだ。

「ええ。明日は晴れですし、この町はパン屋も多いんでおすすめです。あ、町の中央の役所のそばにあるパン屋さんが美味しいですよ」

へー……

「そんな感じでいくか?」

エルシィとウェンディに再度、確認する。

「さんせー」

「良いと思います」

じゃあ、そうするか。

となると、今日はどうしよう?

町巡りかな?

「あのー、良かったら仕事をしませんか? 良い仕事がいっぱいありますよ?」

受付嬢が提案してくる。

「仕事ねー……どういうのだ?」

「本当に何でもありますね。御二人は錬金術師なのでその関係の仕事で言えば、各種ポーションや農業用肥料の作成、あとは害獣用の毒の作成もあります」

普通だな。

「肥料は匂うから無理だとして、ポーションか毒ってところだな」

もちろん、どちらも作れる。

「あー、それもそうですね。作るなら宿屋でしょうから肥料はマズいです。では、ポーションと毒はどうです? この町は人口も冒険者も多いのでポーションはいくらでも受け付けています。毒もここまで来るのにご覧になったでしょうが、広大な農地がありますので同じく、いくらでも受け付けております。しかもー、今ならなんと! 依頼料にボーナスが加算されます! VIPなんで!」

VIPだもんな。

「エルシィ、どうする?」

「やってもいいですけど、材料ですね。在庫がないので薬草や毒草を仕入れる必要があります」

買うか?

「なあ、各種ポーションって言ってたけど、何でもいいのか? 回復ポーションやキュアポーションとか色々あるが」

受付嬢に確認する。

「もちろんですよ。これが買い取り表になります。あ、1.5倍です」

受付嬢が一枚の紙をカウンターに置いたのでエルシィと見てみる。

「ポーションが3000ゼル、ハイポーションが8000ゼル、キュアポーションが1万2千ゼル……普通ですね」

うん。

普通だ。

まあ、これが1.5倍になるみたいだが。

「なあ、ランクは?」

買い取り表にランクが書いてなかったので受付嬢に聞く。

「その料金はDランクですね。Cランクなら1.5倍でBランクなら2倍になります。Aランク以上はあまりいらないんですが、せっかくなんで2.5倍で引き取りますよ」

ポーションのAランクって実は需要があまりないんだよな。

ほとんどのケースでCランク、Bランクで事足りてしまうから。

「貴族や金持ちが買うぞ」

あいつら、見栄っ張りだから。

「それ用ですね」

なるほど……

ちゃんとわかっているわけだ。

「これが1.5倍ならやっても良くないか?」

「良いと思いますよ。材料を買っても十分に黒字ですしね」

宿屋でゆっくり雑談でもしながらやれるし、高級宿屋なら楽しみながらできそうだ。

「あのー、買っても良いですけど、採取とかされませんか? 実は南西に薬草なんかが良く採れる森があるんですけど」

またもや受付嬢が勧めてくる。

「南西ってどっちだ?」

「あ、周辺を網羅したこの町の地図を差し上げますよ。本当はお金を取るんですけど、厚意ですね。私達はチーム新婚アルケミストを応援していますので」

受付嬢がそう言って、地図をカウンターに置く。

地図はおおざっぱだが、町の主要な施設の位置が描いてあったし、町の外の簡単な地形も描いてある。

「南と北に駅があるな」

「私達が来たのは南の駅ですね」

となると、このギルドは町の南の辺りか。

「えーっとですね、南の駅は西の森を迂回するように王都に行きます。北の駅はナンス方面です。そのまま乗っていけばゲイツに行けます」

俺達がこの町を出る時は北の駅だな。

「西のこれが湖か……でかいな」

町と同じくらいのサイズがないか?

「この国最大の湖ですからね。かつて、許されざる関係の男女がこの湖に身を投げたと言われています。なので、別名が悲恋湖です」

たまに聞くな、そういうの……

「そんなところで王子様とキスするのが夢なのか? 呪われそうだぞ」

許されざる関係の男女とやらの霊が湖に引きずり込むんじゃないか?

「べ、別にいいじゃないですか。本当に夕日が綺麗なんですよ」

まあ、言い伝えとか、伝説とかそういうのか。