軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第119話 良い夫婦だ

ロロン夫妻から話を聞いたり、たまにくるお客さんの対応を見ながら仕事をしていると、昼になったので昨日と同じようにエルシィが買ってきてくれたパンを食べる。

午後からも同じように仕事をしていると、16時前にはもう残り数個になっていた。

「頑張ったな」

「ですね。あれだけあった木箱がなくなりました」

代わりに部屋の隅に木箱が積み重なっている。

「御二人は本当にすごいですね」

ウェンディが褒めてくれる。

「いや、本当にすごいですよ。助かります」

「旦那様もですが、奥様も素晴らしい錬金術師なんですね」

ロロン夫妻も褒めてきた。

「どうも。合計で172個になると思う」

86万ゼルだ。

これが日当だったら20万ゼルになるからエルシィがアホくさいと言ったのだ。

「わかりました。用意しておきましょう」

バシリオさんはそう言うと、立ち上がり、奥の部屋に入っていった。

そのまま作業をしながら待っていると、バシリオさんが封筒を持って戻ってきた。

「どうぞ。172個で86万ゼルですが、予想以上にやってくださいましたし、切りよく90万ゼル入っています。確認してください」

そう言われたので錬成を始めようとしていた鉱石を置き、封筒を開けると、中に入っている1万ゼル札を数え始める。

「…………確かに90万ゼルあるな。いいのか?」

「ええ。非常に助かりました」

そうか。

「じゃあ、もらっておく。残りの分も片付けよう」

魔法のカバンに封筒を入れると、鉱石を取り、錬成を始める。

「お願いします。レスターさん達は店を開くために資金集めをしているんでしたよね?」

ん?

「ああ。アトリエだな。小さくてもいいからどこかの町で開きたいと思っている」

「失礼ですが、現在の資金はどれほど?」

「今は1000万ゼルくらいだ。それにちょっとした資産がある程度だな」

金貨のことね。

「なるほど……」

「足りないだろ。王都みたいな大きい町は避けるつもりなんだが……」

「足りるか足りないかで言えば足りないでしょうね。ですが、どこからか資金を調達するという方法もありますよ」

調達?

「どういう意味だ?」

「昨日、今日とレスターさんとエルシィさんの錬金術の腕を見ていましたが、相当のように思えます。それでいて、別にこれが専門ということではないのでしょう?」

「ああ。俺達に専門はない。大抵のことはできる」

ポーションだって作れるし、木材だって作れる。

何ならエリクサーまで作れる。

「新たに店を建てる場合、どこからか援助を申し込むという方法もありますよ。もちろん、月々返済していかないといけませんし、利子は付くでしょう。ですが、それなら今の金額でも店を建てられるかもしれません」

つまりローンか。

「そういうのはありなのか?」

前世では銀行の融資がある。

しかし、この世界に銀行なんてない。

「貴族、資産家、商業ギルドなどに頼めば貸してくれますよ。額に大小あると思いますが、満額貸してくれるかもしれません。それが錬金術師の需要の高さです。さらに良いのは御二人共が素晴らしい腕を持っていることです。これは貸す側としては大きいです」

どちらかが事故に遭ったり、病気になってももう片方に返済する能力があるからか。

「錬金術師はそれだけ信用があるか?」

「ありますし、貴族、資産家、商業ギルドは十分なバックが見込めます。正直、御二人がこの王都に店を建てたいと望んでいるなら父を紹介しますよ。おそらく、父も貸してくれますし、商業ギルド、もしくは付き合いのある貴族を紹介してくれると思います」

それほどか……

「こういうケースはよくあるか?」

「担保があればですけどね。失敗したら家を奪われたりしますし、下手をすると、一生タダ働きもあり得ます。ですが、御二人はそうならないでしょう。店が失敗してもこういうフリーの仕事でいくらでも返済できますからね。貸す側もそういうのを見込んでのことです」

なるほどねー……

バシリオさん、元商人だけあって詳しいわ。

「確かにそれもありかもしれんな」

「ええ。ですが、その場合、相手はよく吟味してください。それと契約書はちゃんと読み込んで第三者である商業ギルドなどを間に挟んでください」

それは当然だな。

悲しいが、祖国のせいで貴族に良い印象がないし。

「わかった。教えてくれて感謝する」

「いえいえ、頑張ってください」

バシリオさんが笑顔で頷いたところで鉱石の錬成が終わる。

隣にいるエルシィはちょっと前に終わっており、手が止まっていた。

後ろの残っている木箱の中は空であり、すべての作業が終わったのだ。

「バシリオさん、終わった」

そう言って立ち上がると、エルシィもデスクにいるウェンディを抱えて立ち上がった。

「ありがとうございます!」

「本当に助かりました」

バシリオさんが立ち上がると、受付にいるダナさんも立ち上がり、こちらにやってくる。

「こちらも色々と教えてくれて助かった。非常に勉強になった」

「ありがとうございまーす」

こちらも礼を返す。

「いえいえ。本当に助かりましたよ。これからも旅を続けるようですが、頑張ってください」

「アトリエが開けるように頑張ってくださいね」

俺とエルシィはそれぞれバシリオさんとダナさんと握手をした。

「ありがとう。では、これで」

「お世話になりましたー」

そう言うと、2人が丁寧に頭を下げてきたのでこちらも下げ返し、店をあとにした。