軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

みんなで幸せになるぞー!

パン!と世界が弾けるような感覚に、目を開いた。

天上界の神々が見える。

(え、ここ天国?いえいえ、ベッドの天蓋に描かれた絵ですね。ルネサンスの巨匠が描いたみたいな絵だよ、セレブやなー)

わたくし、何を考えているの?ここはどこ?

「エカテリーナ!」

「はうっ!」

すぐ横から名前を呼ばれて、そちらを見たエカテリーナは安心した。

しかし中の人は思わずのけぞった。

(ななななんという美形!肉眼で見たことない、俳優にだっていないレベル!

どストライク命中すぎて胸に穴が空きそう!)

ベッドの横にいるのはもちろん、前世の一推しアレクセイ・ユールノヴァ。水色の髪、水色の瞳、トレードマークの片眼鏡もしっかり着けている。

でもゲームの画面よりはるかに素敵だよ!

抜けるように白い肌のきれいなこと。そして瞳の色。水色じゃ言い尽くせない、あれだ宝石のパライバトルマリン、自ら光を放つようなネオンブルーだよ実物は。切れ長の目が賢そう、完璧な鼻、少し薄い唇のバランスの良さ。

アラサー目線ではまだ線の細さが残る若さがまぶしいけど、もう身体は成長して男の骨張った感じが出てる。可愛いじゃなくかっこいいライン。

(一瞬にしてチェック細けえな自分!)

「大丈夫か、どこか苦しいのか?お前まで失ったら私は……」

自分の方が苦しそうな声音に、はっと我に返る。

またお兄様を苦しめてしまった。

(ピンチはチャンス!関係改善のチャンスだよ!甘えて頼るだけでお兄ちゃん喜ぶよ!)

……なに、これ。

(あー、人格が分裂状態……。同時に二人分の思考が稼働しちゃってる……)

頭が痛い。

思わず片手を額に当てる。

「エカテリーナ……医師を呼ぶか?うなずくだけでいい、応えてくれないか。お願いだ」

お兄様に、大丈夫と伝えなければ。でも、ずっと意地を張ってきて、今さら声がかけられない。

(んじゃ、額の手をちょっと横移動しようか)

額から離した手を横へ動かすと……兄へ手を差し伸べる状態になった。

アレクセイは目を見開く。

我に返って、エカテリーナの手が細かく震える。

それに気付くと、アレクセイは妹の手を取って両手で包み込んだ。

大きな手。温かい。……心地良い。

エカテリーナは横を向いて、兄と目を合わせた。

「お兄様……心配……おかけして、ごめんなさい」

アレクセイは一瞬呆然とし、すぐに微笑んだ。とても優しく。抑えきれない喜びをにじませて。

「何を言う、悪いのは私だ。初めて皇都に来たお前を連れ回してしまってすまなかった」

そう、だった。公爵家の皇都邸に着く前に、お兄様がわたくしのために、入学予定の魔法学園へ馬車を着けてくださったのだけど。正門の向こうにそびえる校舎を見たとたん何かが心の中から噴き出してきて、何もわからなくなってしまった。

(魔法学園の正門て、乙女ゲームのオープニングでさんざん見たアレかー。それがきっかけで記憶が蘇ったわけね。じゃあここは公爵家か、どおりでセレブ)

前世の記憶。

(ほんとになんじゃそらだけど)

アラサー社畜雪村利奈は、乙女ゲームの悪役令嬢エカテリーナに生まれ変わってしまったらしい……。

(え、じゃああのままいくと破滅するの?皇国が滅ぶルートなんかもあったんだけど!)

「えっ⁉︎」

びくっと震えた妹の手を、アレクセイはあわてて離した。

「すまない、エカテリーナ。やはり医師を呼ぼう」

「いいえ、お兄様。わたくし、病ではございませんわ。誰も呼ばないでくださいまし」

「しかし……」

「それより、もう少し……手を握っていてほしいの」

それを聞いて、アレクセイは今度こそ喜びに顔を輝かせた。

「ああ、もちろん。お前が望むことなら、私は何でもしよう」

そんな表情をすると、少し大人っぽさが薄れて、片眼鏡の似合わない少年の顔になる。

(あ、お兄ちゃんデレた。……くうう可愛い!エカテリーナも壁を破れて良かったねえ!

よっしゃ、絶対あなたたちを破滅なんかさせない。それに私も、いいように使われて過労死する人生なんか二度とごめんだし。

破滅フラグへし折って、みんなで幸せになるぞー!)

「い、痛……」

「エカテリーナ!」

(ごめん、まずこの分裂状態をなんとかしよう……)