軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

認められない者もいる

「エミリさん、大丈夫ですか?」

「うん、全然元気よー。魔力切れは寝れば治るから」

衛兵の力を借りたニナは、エミリを宿に運び込み寝かせた。

それから一晩眠るとエミリはけろっとした顔で起き出して「お腹空いた」だなんて言ったのだった。

多めの食事を取ったエミリは、これから冒険者ギルドに行くという。

ニナの「護衛依頼」を終えた報告が必要だし、隣国に移るのでその申請もしておくのだ。

「そう言えばニナ、あんたの身分証ってどうなってるの?」

「わたしですか? わたしは市内労働者の証明書ですね」

ギルドへの道すがらそんなことを話す。

メイドギルドというものはなく、使用人一般が登録するのが「市内労働者」となる。

「ふーん。それなら冒険者ギルドに入っておく?」

「え!? わたしがですか!? そ、そんな無理ですよ」

「いやいや、身分証代わりよ。市内労働者だったら国境を越えるたびに税金払わなきゃでしょ? その点冒険者ギルドなら一度登録すればどの国でも使えるし、なにも依頼をこなさなくとも1年は大丈夫。あたしがいっしょにいる間は依頼もこなせるだろうし」

「そ、それは……確かに。でも、エミリさんに頼りきりになってしまいそうで」

「——もう」

ぐいっ、とまるで肩でも組むようにエミリがニナを引き寄せる。

「ニナがあたしにしてくれたことを考えたら、全然たいしたことじゃないわよ……あたしが第2位階以上の魔法を使えるようになることを、どれくらい夢見たと思う?」

「エミリさん……」

「そんなわけで、道中のお料理は期待してるからね!」

「……はい!」

ふたりは冒険者ギルドにやってきた。

中には朝から多くの冒険者がいたが、そのざわつきはいつもよりも大きくギルドの外まで聞こえていたほどだった。

ニナとエミリが中へと入ると——ぴたり、とざわつきは止まった。

「?」

どうしたのだろう、とニナは思ったが、エミリに連れられてカウンターへと進む。

「ねえ、この子の冒険者ギルド登録をお願い」

「え? あ、は、はい……」

ギルド職員はエミリを見て驚き、次にニナを見て驚いた。

「あの……こちらの方はメイドさんでは」

「そう。メイド兼冒険者。ちゃんと登録費用は払うし、あたしといっしょに依頼をこなすから問題ないでしょ?」

「それは、はい」

するとそこへ、

「おいおいおい〜、誰かと思ったら『永久ルーキー』のエミリちゃんじゃねえか」

一昨日、ここでエミリに絡んでいた男冒険者がやってきた。

「なに? クレーの泉へ案内した お友だち(・・・・) を冒険者にすんの? えげつねぇ〜。いくら誰もパーティー組んでくれないからってそりゃあねえよ」

「…………」

「ああ、そうそう……聞いたか? なんでも昨日、お前によく似た魔法使いがフェーラルガルーダを討伐したとかいう話。みんな、あんまりよく似てるもんだからあれがお前だっていうわけよ。でもそんなことあるわけねえよなあ?」

「……あたしよ」

「あ?」

「あたしがやったのよ。今日ここに来たのは、あのデカい鳥がどうなったのかを確認するためでもあるの」

「はっ……おいおい、笑えねえ冗談だぞ」

「ほんとうの話だから笑う必要はないわ。それに、あんたに関係ないことだからあっち行ってて」

つい、と背中を向けてカウンターへと戻ったエミリに、

「ッ!? てめえ!!」

「キャアッ!?」

エミリの肩を力一杯つかむと彼女を引き倒した。

「エミリさん! あなた、か弱い女性に暴力を振るうなんて……!」

ニナが間に入り込んで立ちふさがった。

「ああ!?『永久ルーキー』風情がフカシこいてるからこうして教育してやってんだよ!」

「あの巨鳥を倒したのはエミリさんです。エミリさんは『第5位階』までの魔法を扱えるようになったんですから!」

「ぶっ! 第5位階だってよ! ぎゃはははははは! 聞いたかみんな、第1位階限定の『永久ルーキー』がなにも知らないメイドを騙してんぞ!」

男冒険者が声を掛けると、連れらしい数人は笑ったが、他の冒険者たちは様子見といった感じだった。

エミリによく似た魔法使いが巨鳥——フェーラルガルーダを倒したというウワサは広まっており、エミリに魔法の素質があることもまた皆知っているからだ。

それを、使えないだけで。

「いいの、ニナ……この手のバカはなにを言っても無駄。あたしたちはさっさと手続きして出ましょう」

「——おい、『永久ルーキー』。お前、マジで言ってんのか? 自分の実力を偽って仲間を作るのはギルドじゃ罰則もんだぞ」

「無視よ、無視」

「おーい、職員! こいつがギルドのルール破ってんぞ! ギルドライセンス剥奪してやれ!」

「…………」

「ついでにこんなチビの登録も受け付けんなよ! こんなチビを受け入れたら、ギルドの恥だぞ!」

職員にまで声を掛ける男に、立ち上がり、裾をはたいていたエミリはぎろりと視線を向けた。

「なっ……なんだよ、その目は。反抗的な目ぇしやがって! 図星なんだろ!」

「……職員さん」

どうしていいかわからずおろおろしているギルド職員に、エミリは言った。

「フェーラルガルーダ、討伐賞金出てましたよね?」

「えっ、あっ、はい、出ています……500万ゴールドです」

「あれを倒したのはあたしです。それを証明しますから——裏の訓練場を貸してください」

エミリから立ち上るのは怒り……そしてそれだけでなく、魔力の渦でもあった。

「……あたしだけならともかく、ニナまでバカにされたら許せないわ」