軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

黒幕との再会③

そこには、厳しい表情を浮かべ、グレンダが出した手紙を握り潰し、全く違う方向で怒り狂っているルシアンがいる。

「ルシアン様……!」

「エステル、無事か」

声をかけられ、立ちあがろうとしたところでグレンダに腕を掴まれる。

気絶させるのに使われた薬が抜けきっていないのもあり、グレンダを振り解いてルシアンのもとに行きたいのに体がいうことを聞かなかった。

ルシアンがやってきてしまったことを知ったグレンダが、不満そうに顔を歪めた。

「私はあの第五王子を呼び出したはずなんだけど? 聖女リーナ様のお気に入りの完璧な王子様はちゃんと婚約者のことも助けてくれるのねえ」

「お前たちと会話をする気はない」

ルシアンがそう言いながら手を前へとかざすと、パチパチと音を立てて氷の粒が床を伝い神殿内全体へと広がっていく。すると、周辺のものがあっという間に凍ってしまった。

それだけではない。まるで意思を持ったかのように、グレンダの足元までも凍らせていく。エステルの足を除いて、この神殿の中にあるもの全てが凍る勢いだ。

バチバチバチバチバチ。

これには、余裕ぶっていた彼女も慌てたようだった。

「神殿全部を凍らせて動きを封じようって言うの⁉︎ 何なのよコレは!」

慌てて火属性魔法の呪文を使い、大きな炎を出して氷を溶かそうとしているが、全くうまくいっていない様子だった。けれど、ルシアンは容赦がない。

「お前と会話するつもりはない。エステルは返してもらう、それだけだ」

その瞬間、パキンと音がして、グレンダの足元の氷にヒビが入った。そのまま、エステルの腕を掴んでいたグレンダの足が氷ごと床から切り離され、遠く離れた壁まで吹き飛んでいく。一瞬のことだった。

ドシンという神殿全体を揺らすような衝撃の後、グレンダは床に落ちる。

「ギャァ!」

「教祖様!」

あわてて信者の二人が助けに向かおうとするが、彼らの足も凍って床と一体化していた。動くことなどできない。

ルシアンはそれも同じように吹き飛ばす。

「うっ!」

「うわっ」

あまりの衝撃に壁に跳ね返った男二人は、そのまま床に落ちてぺしゃんこになってしまった。

ルシアンはエステルのところまで来ると、肩を抱く。

「ルシアン様……」

「怖い思いをさせてすまない。俺の思慮が足りなかった」

「そんな……ただ私が勝手に風にあたりに出てこの人たちに捕まってしまっただけで」

ぎゅっと抱きしめられて、安堵する。けれど、まだルシアンの攻撃の手は止まない。

神殿内に漂う黒いモヤはさらに濃くなっていき、床に落ちていた男たちは宙に浮く。さすがに、グレンダもルシアンが闇魔法を使って攻撃していることに気がついたらしい。

「あなた、こんな……何者なの? ただの、聖女リーナのお気に入りなんじゃなかったの……?」

ルシアンは鼻で笑った。

「リーナのお気に入り? 冗談じゃない。俺が愛するのはエステルただ一人だ」

「は」

戦闘の最中、突然恋人について紹介し始めたルシアンに三人が驚いた気配がするが、その愛するエステルを攫われたルシアンの怒りは全然収まらない。

黒いモヤが縄のようになって三人の手足を拘束する。三人をまとめて縛り上げると、彼らは気を失ってしまった。

「ルシアン様、あの」

空中に浮いたまま黒いモヤに縛られ、失神して手足をだらりと垂らしているグレンダたちの姿に不安を感じたエステルだったが、ルシアンは彼らに見向きもしない。

「ここがいくら獣人の国で、身体能力に優れた者がたくさんいたとしても、俺は闇属性の攻撃魔法使いだ。かつて俺はここで魔法を覚えた。いつか、エステルを守るためだ」

そう言いながら、より一層強く抱きしめられる。いつでも魔法を使えるようにするため、片手でのはずなのに力がとんでもなく強い。

(ルシアン様に、この力の分だけ心配させてしまったんだわ……)

「心配をかけて、ごめんなさい」

謝罪を口にすれば、ルシアンはグレンダたちに向けていた表情や怒りは一体どうしたのだと聞きたくなるほどに穏やかな視線を向けてくる。

「今日、エステルのことを助けられた。俺が子どもの頃に必死で攻撃魔法を学んだのは、いざというときにエステルの前でカッコつけたかったからだ。犬よりも犬すぎる、あのポンコツな子狼を守るためじゃない」

「ルシアン様……」

「今、やっと十三歳の俺が報われた気がするな」

心底うれしそうにそう告げられてしまえば、エステルは本音を話すしかない。

「……私もその頃からルシアン様と一緒にいたかったです。リーナ様とスレヴィのように」