軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20.使い魔との密談(ルシアンサイドのお話)

その数日前のこと。

王城の自室で、ルシアンは黒猫の姿をしたクロードと真剣に話し合い……ではなく悶えていた。話題は当然、エステルのことである。

「……エステルがかわいくて死ぬ……」

「お前やべえよ。ほんとおもしれーのな、死ぬ」

「死ね」

「お前使い魔に冷たすぎるとか思わないの? 泣いちゃうにゃ」

ルシアンはぶりっこのクロードを睨みつける。

ルシアンが禁呪によって死に戻ったことを知っているのはクロードひとり。

エステルの運命を変えるための相談相手も彼しかいないのだが、ルシアンの身を襲った『呪い返し』の話題も加わるせいで会話が残念なことになってしまう。

一日の報告のため一時的に自分の元に戻っているクロードを前に、ルシアンは声を震わせる。

「死に戻ったら幸せなことがありすぎるんだが? 用もないのに会いに行っていいとかどんな夢だ?」

「夢じゃなくて現実で責任だろ。勝手に死に戻ったんだから」

「三ヶ月後のお茶の約束を待たなくていいってどういうことだ」

「ついこの前までリアルにスケジュール帳に印つけてたもんな。ほんと笑える」

「会いにいくたびに手料理を振る舞ってくれるなんてどんなご褒美だ」

「手料理じゃなくあれ試作品」

「少し前までは俺に全然興味ないって顔してたのに、最近は頬を染めてるのがかわいすぎないか?」

「それお前のせいだから。恥ずかしい本音聞かせすぎ」

「あーーー」

クロードとの応酬で現実に引き戻されたルシアンは頭を抱えた。

「正直なところ、彼女が好きすぎる」

「知ってる。むしろあの闇聖女も気の毒すぎるほどによーく知ってるから。逆に、何でついこの間までカッコつけてたんだよ」

あまりに正論すぎる問いである。ルシアンは言葉を詰まらせるしかない。

「……兄上も周囲の友人たちも婚約者とはそんな付き合いだろう。大体にして、彼女もしっかり『政略結婚を嫌々受け入れてます』な雰囲気を醸し出していた」

「確かに後半に関してはそうだにゃ」

「黙れ傷つく」

「やめて! 闇魔法! ご主人様の闇魔法には絶対逆らえないからオレ!」

部屋に漂った黒いもやを避けるため、クロードが人間の姿になって扉に手をかけたところで。ルシアンは急に真剣な表情に戻る。

「しかし、エステルがシャルリエ伯爵家から出たことで少し残念なことになった」

「何だよ」

「今から数ヶ月後に兄上の誕生日パーティーがある。例年は婚約者の同行は必要なかったが、今年からは俺も成人扱いでエステルを連れて参加することになる」

「へーそんで?」

「死に戻り前は当然のようにエステルと一緒に参加できたが、今回は……」

「あー。婚約解消の手続きはまだだけど、闇聖女は断るね無理ざんねん」

クロードを睨みつけたものの、ルシアンの予想もその通りだった。

ルシアンにとって何よりも重要なことはエステルが傷つきも殺されもせずに生き延びることである。

無事にシャルリエ伯爵家を出て義妹や家族と距離を置き、夢だったらしいカフェを始めて楽しそうにしていることは何よりの喜びだった。

――しかし。

(俺にとってあの夜会は大切な思い出だったんだが。まぁ、彼女のためには消えても仕方がない、か……)