軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12月20日:鶏の首を落とすように

「新王君さぁ…………断固たる意志でクーデター起こしたならどーんと鎮座すればいいのにねぇ………」

にまぁ……と、月照らす夜空の下に、笑う影。

「玉将が「座りが悪い」からって無駄にサーティードとニーネスヒルを行き来してるなんてマヌケな情報、素っ破抜かれた時点で歴史書に罵倒込みで記録されても文句言えないよ」

何処かで(・・・・) 、 誰かが(・・・) 戦っている頃、その一団は既にニーネスヒルへと音もなく忍び込んでいた。

「同志、各部隊準備完了だって」

「よしよし、久々の団体行動だけど上々だね」

夜風に長髪を流しながら、アーサー・ペンシルゴンは視線を向けた先……ニーネスヒルの中心に立つ、エインヴルス王城を見据える。

「しかしなんだって一番の重要人物がサーティードで大人しくしてないであっちこっちを行き来してるの?」

「んー……? ああ、それなら結構分かりやすい理由じゃない?」

「え?」

新王陣営総大将が、自らの利を捨ててまで動いている理由。その「何故」を問うたプレイヤーに対して、ペンシルゴンはなんだそんなことか、とばかりに答える。

「クーデターに必要なのは根拠と説得力。ましてや された側(・・・・) がお前は間違ってる、って対立してるこの状況……頭に 象徴(かんむり) 載せてるだけじゃ不安なんだよ」

一国一城、それが王の大前提。

由緒ある王冠を被り、豪奢な服を着たところで道端に突っ立っているだけでは単なるコスプレイヤーでしかない。王は王たるために城と玉座があってこそ。 簒奪(クーデター) という不安定な足場だからこそ……立っていられない。例えそれが、前王陣営とは無関係の「緑」の軍勢に攻め落とされそうな最前線であったとしても。

「今回の陣取りルールで本陣の後ろに街一個置いたってメリットは薄い。さらに言えばニーネスヒルは今とんでもない激戦区なのに行ったり来たりしてる……頭じゃサーティードに陣を張るのが正解だと分かっていても座りたくて仕方ないんだよ、”王様の椅子”ってやつに」

まったくもって、素晴らしいAIである。人間の懊悩をこうも再現されてしまっては人間という存在の単価が下がるような気分をペンシルゴンは覚えていた。

とはいえ、ゲーム内におけるプレイヤーの命の単価など単発ガチャよりも価値がない。

「あとはフィフティシアは背後に置きたくなかった、とかかなぁ」

ペンシルゴンもエインヴルス王国の歴史を熟知しているわけではないが、この王国の始まりは初代サードレマと初代フィフティシアが王を擁立することで生まれた。そして今、その片割れが新王に否を叩きつけているのだ………中立気取りの港町が、いつコウモリの本性を剥き出しにするか。

そしてもう一つ、フィフティシアは「港町」なのだ。即ち、海路のスタート地点であり……ゴール地点。

「新大陸から前王派が背中を刺してくる、とか思ってるんじゃない?」

「なるほど……実際それって出来なかったの?」

「船がねー……」

さしものペンシルゴンも、自分の一存で新大陸調査船を動かすことはできない。前王と新王が殴り合っているため、新大陸にいる調査船はどちらに許可を求めればいいかわからず、また同時にどちらからの要請にも応えられない……指揮系統が唐竹割に真っ二つになっているのだから。

「ねぇ同志~、こっち襲ってるレイドモンスターこの時間帯にまだピンピンしてるのやばくない? ニーネスヒル更地にならない?」

「ギャルニーソン、一個勘違いしてるよ」

「え?」

「私は王城以外は全部更地になっても「無傷」と断じるよ」

「たまんないねぇ同志ィ~」

用があるのは王城の地下だけだからね、と口には出さずともペンシルゴンはファンタジー世界に似つかわしくない金属製のそれを口元に近づける。

「と、言うわけで………レッド・ペンシル・エージェンシー! イベントにつられて経験者顔で寄ってきた配信者も! 新大陸攻略にいらん茶々入れてきた新王アレックスも! ついでに我々のブルジョワ身分の為にも!!」

リヴァイアサン製の通信機器を通して、空に、地下に、地上に……アーサー・ペンシルゴンの意思が伝播する。その意思に応える悪意たちが笑みを浮かべて動き出す。

「───作戦開始」

『こちら 空骨(クウコツ) 、いつでも行けましてよ~』

ニーネスヒル………上空。夜空と雲に紛れるように滞空する、真っ黒に塗装された戦術機の影。

『こちら 地奔(ジバシリ) 、いつでもよろしくてよ~』

ニーネスヒル……城下。普段はアウトローがたむろするような、王都の暗い陰に潜む影。

『こちら 発条(ゼンマイ) 、準備完了ですわよ~』

ニーネスヒル……地下水道。知られてはならないはずの、秘密の抜け道……そこに足を踏み入れる影。

各所に潜む国盗りの悪意が、たった一つの号令を今か今かと待ちわびる。それはさながら、サンタクロースの来訪を待ちわびる、無垢な子供のようでもあり。

ジジッ、と通信機器にノイズが走る。それは彼らが待ちわびた、赤い号令。悪意を、凶行を肯定してくれる頼れる同志の、よーいドンの合図。

『───作戦開始』

『『『 突入(GO) !!!』』』

RPAによる「 兄妹妹妹妹喧嘩(シスターーーーーズ) 」作戦……開始。