作品タイトル不明
12月20日:竜を屠る者、竜を屠った物
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真なる竜種 V(ファイブ) ガリバー……否、真なる名は「 闇よりの出立(ガリバー) 」。
参姿翠冥(さんしすいめい) の地底迷宮、その深層に潜んでいた真なる竜種の一体。暗く狭い洞窟の中で四つの姿を使い分ける恐るべき竜。
先端がとがったバルーンアート、あるいは針金で作ったドラゴンの体型を模した骨子、とでも言うべきか。おおよそメジャーなドラゴンからはかけ離れた姿をしていたその竜とガル之瀬の遭遇は、本当に偶然だったのだ。
地下迷宮というからには、出口以外にも色々とあるんじゃないか。参姿翠冥の地底迷宮に挑むプレイヤーであれば誰しもが思う疑問を同じく抱いたガル之瀬は、配信ではないプライベートな仲間たちと共に迷宮の出口ではなく下、深部を目指して探索をしたことがある。
結論から言えば、”遭遇”以外ではあまり目ぼしい発見は無かったのだが………”遭遇”だけでお釣りどころかボーナスと宝くじの一等まで出たようなものだ。
ガル之瀬がガリバーの討伐に成功したのは、運が良かったと言うほかない。
子猫サイズで暗所に隠れていたガリバーをたまたまガル之瀬が 踏んづけて(・・・・・) 戦闘が始まったこと。
身内パーティのメンバーの中に新大陸帰りの高レベルプレイヤーがいたこと。
暗く狭い洞窟という劣悪な戦闘フィールドであったからこそ"平原が戦闘フィールドだった全身金属の同種"と比較して体力が低めに設定されていたこと。
ガル之瀬自身、決してMVPと言えるような活躍が出来たわけではないが、それでも多大な貢献と激闘を経て、五番目の真なる竜種を撃破するに至ったのだ。
そうして得たものこそが、 真竜討滅者(ドラゴンバスター) の称号、あるいは 真竜討滅者(ドラゴンバスター) のジョブであった。
(こん……っな大振り、当たるわけない……っが!)
サイズが大きくなれば、当然重さも相応に。さらに言えばほぼ丸太と言っていいサイズのグリップを、それこそ丸太を抱えるが如く腕全体で支えながら、しかしガル之瀬はそんな弱音を表情……ではなく、身振り手振りの動きに出さないように巨大化したメイスを振り回していた。
真竜討滅者(ドラゴンバスター) は非常に特殊なジョブだ。
真なる竜種討伐の特典として、討伐時に使用していた武器が進化した「 竜滅装備(バスターアームド) 」と、「討伐時の防具」を使うことに特化したジョブとでも言うべきものであり、竜滅装備が失われた時点でジョブそのものも ただの称号(かこのえいこう) に戻ってしまう。
ただし、竜滅装備を 繰(く) る真竜討滅者の実力は尋常のものではない。竜を弑せし勇士と竜を弑せし武器が共にある時、それは偉業そのものの顕現と言ってもいいのだから。
「 踏み覇する竜蹄(ガリヴァストンプ) 」はガリバー討伐の際に用いていたメイス「 踏み潰す牛蹄(ブルストンプ) 」が竜滅装備化したものである。
さらにはもう一つの……当時、同様にガリバー戦で幾度となくガル之瀬の命を救ったタワーシールド「錬鉄のタワーシールド」の竜滅装備化した「 奇譚為す竜の盾(ガリヴァンズ・テイル) 」と、ある種一組の武装として竜を屠る栄光を得た。
踏み覇する竜蹄(ガリヴァストンプ) の能力はメイスそのものを巨大化させる【 小人の尺度(ブロブディンナグ) 】と、その逆に縮小化する【 巨人の尺度(リリパット) 】。
MPを消費することでサイズを可変のものとするこの魔法は、真竜討滅者のジョブと組み合わせることで身の丈をも遥かに超える大きさへと変えることができる。
ただし、大きくすればするほどに重量も増加する。今のサイズともなれば、体感の重さでいうならば丸太の先に臼をくっつけているようなものだ。
それを振り回し、あまつさえ武装として……「攻撃」として扱えるのはSTRに補正をかけるスキルの多重使用、 防具(・・) の補正、何より「綺憶像失」のデメリットでそれらが使用不可にならなかった幸運によるものだ。
(当たるとは思っていない……だが、無視もできまい)
このような大振りに振った攻撃が当たるならば、ガル之瀬はここまで苦労していない。だが、突然のスケールアップに加えてその 巨大化速度(・・・・・) を見たならば、必ずサンラクはインファイトを選ぶ。選ばざるを得ない。
(ほら来た!)
「ンなびっくりドッキリはもっと温存すべきだったな!」
金属を 吸う(・・) 針を持つ黄金の剣、その一撃がガル之瀬のHPを一撃で半減させうる威力であることをサンラクは加害者として、ガル之瀬は被害者として体感している。
あの一撃を当てさえすればサンラクはガル之瀬に対して有利に立ち回ることができる。仮にそれをブラフにするとしても、「囮」としてあの剣は戦略の軸であることに変わりはない。
(───今)
念じる先は、「 踏み覇する竜蹄(メイス) 」ではなく……「 奇譚為す竜の盾(タワーシールド) 」。
真なる竜種「ガリバー」の名は、同じ名を持つ主人公の奇妙な 旅の記録(ものがたり) に由来する。
その能力が彼の訪れた国と対応している以上───
「……【 励磁の摂理(ラピュータ) 】!」
その盾にもまた、力が宿っている。
「………は!?」
ガギン!! と 皇金剣(アンティアレス) が 奇譚為す竜の盾(ガリヴァンズ・テイル) とぶつかる金属音が響く。だがそれはサンラクが盾に攻撃したから……ではない。
サンラクの手からもぎ取られるように皇金剣そのものが奇譚為す竜の盾にくっついたのだ。
「賭けは俺の───」
勝ちだ。ガル之瀬は勝利を口にするよりも先に踏み覇する竜蹄を振り抜く。
奇譚為す竜の盾(ガリヴァンズ・テイル) の【 励磁の摂理(ラピュータ) 】の力、それは言ってしまえば 陳腐(シンプル) 過ぎる………強力な磁力によって金属を引き寄せる、あるいは反発させる魔法である。
反発ではなく接着を選んだのはサンラクの左腕から伸びる「武器を掴むビーム」を警戒してのこと。
ただ一点、あの剣は磁力に反応するのかという点のみがガル之瀬の 賭け(・・) であったが……サンラクが用いた 混剛の合金(アダマス・インゴット) はサンラク自身の手持ちの素材の中で「とりあえず強そうなものを」と、やたらめったらに使用したことがサンラクからすれば仇になったのだ。
踏み覇する竜蹄がサンラクの側頭部を狙う。気になるのは不気味な仮面だが、しかし一撃で最大のダメージを狙うのであるならばそこしかないとガル之瀬は判断した。
(斬首凶技は持続している、このまま───!?)
瞬間、ガル之瀬の視界が黄金に染まる。
先程の「光の剣」か。あるいは初手の「火炎放射」か。あるいは、
瞬間的な判断、自身のスペックを感覚的に記憶して「大体この程度なら耐えられる」という目算。この距離ならば、そしてサンラクの剣が盾に囚われている状況ならば何をされても耐え切れる。あるいは相打ちには持ち込める。
そう確信したガル之瀬は、次の瞬間には───
「……一秒くらいしか持続しないの、ワンアクション分は性能保証するだけ有情なのか?」
凄まじい衝撃を胸部に受け、ダメージが鎧を砕くよりも先に 中身が砕けた(・・・・・・) 事で二度目の死を迎えていた。