軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12月19日:機機相搏つ

GUN!GUN!傭兵団所属配信者エコー。彼らの動きを研究する中で、ルストの記憶に一番強く焼き付いているのはやはりこの人物だった。

如何なる銃であっても突撃しながら使いこなし、互いに目があった状態での撃ち合い……すなわちタイマンの勝率はルストが見た動画の中だけでも実に九割近い勝率を叩き出している。流石に三人以上から狙われた場合は普通にキルを取られている場合も多いが、その時ですら三人中二人をキルしていた、なんてことは珍しくない。

(……あのプレイヤーだけは別格。他がプレイヤースキル的に劣ってるわけじゃないけど………とにかく強い)

大砲が自分を狙っていようが、横から車が自分を踏みつぶすべく猛スピードで迫っていようが、狙った獲物から絶対に目を逸らさない。その恐るべき胆力が1v1における常人離れした勝率を実現している……などと、このイベントに参加する前のルストは推測していたが、実際に相対して分かった。

「……強い」

余計な理屈など無い、撃った弾丸が必ず相手に当たれば大抵の戦いに勝てる。それを素で実行できるタイプなのだろう。

一瞬見えたエクレアの機体。高速機動なんて全くできません、といったボールメンであるにしても妙に丸々とした戦術機であったが、シャンフロで誰よりも戦術機にかぶりつきで取り組んでいると自負しているルストは、その形状からある程度の性能を看破していた。

(…… 殲顎緋砕(センガクヒサイ) と同じ、限界までブースターの点火時間を絞る代わりに爆発的な加速力を搭載している)

戦術機を1からフルスクラッチで構築する場合、手を入れることが出来る要素は多岐にわたる。搭載する武装やカラーリングは当然の事ながら、基本装備である装甲を全て取り除いてフレームをむき出しにすることも可能であり、さらには推進器の性質や装甲の材質、果ては演算機器まで吟味することが出来る。

ゲームのいち要素にしては深すぎるコンテンツとしての大きさだ、ルストでさえその全てを理解しているわけではない……が、それが「強さ」を追い求めるものである以上、生態系がピラミッドの形状となるように上位になればなるほどその数は絞られ、先鋭化するというもの。

丸っこい装甲は「伐斬凱青」に用いた流し、弾くためのもの。特徴的なブースターは短距離走に特化したもの、カウボーイのような装飾は……多分趣味。内蔵型の武装はいくつかあり、だが殆どは外付けの銃火器ホルスターに火力依存。

(狙撃をアシストするような機能はついてない、OS側である程度アシストを入れているとしても………まさか、 腰撃ち(・・・) で狙撃した?)

スコープを覗かず、目視で狙いを定めて射撃する。あるいは戦術機と同期することで腰撃ちの状態でもスコープを覗き込んでいる状態と同様の条件を揃えることは出来る……が、やはり射撃体勢は狙撃には向いていない不安定なものだ………ただ。

(それが 出来る(・・・) なら……)

もしもを想像しつつも、恐らくそれは当たっているのだろうとルストは煙の中で細心の注意を払いながら展開した戦術機を纏っていく。

相手はきっとルストの位置を正確に把握している。それは音であったり、煙であったり、あるいは勘であるかもしれない。しかしその上で撃ってこない、考えられる可能性は………

(……こっちが出てくるのを待っている。決闘のつもり?)

いや、決闘のつもりなのだろう。なにせエクレアを抜いた他メンバーを翻弄した謎の戦術機使いだ、それとのタイマンとなれば大層な取れ高になるだろう。

(成程)

そしてそれは、ルストもまた望むところだ。力を誇示し、理解させること………それがルストが密かに目論んでいたもう一つの目的でもあるのだから。

「……いいよ、受けて立つ」

『お?』

「…… 1v1(タイマン) 、受けて立つと言った」

『………いいねぇ~、こういう時だからこそノってくれるとありがたいよね~。だってさ~!』

『そりゃありがたい、こっちはもうメンバー半壊してるからな………いやマジで、強すぎるんすよアナタ』

『ま、流石に後ろから刺してタイマンの邪魔はしないさ………遠慮なく本陣を攻めさせてもらうだけだ』

『……なんで俺まだ死んでないんだろうな、先にチョコの奴が死んだし』

ルストもちょっと驚くほどに生き延び続けている左腕の無い 戦術機(ドーナツ) を始めとして、残った三人のGUN!GUN!傭兵団のメンバーがルスト達から離れていく。どうやら本当に後ろから不意打ちをするつもりはないようだ。

『さ~て………よーいドンの合図はどうする~?』

「……背中合わせで五歩歩いてからとか?」

『いいねぇ~!』

本当にそのようになった。ただ単純に底抜けの能天気なのか、それともどんな条件だろうと勝つという傲慢か、あるいは…………勝ちも負けも、等しく楽しめるが故の寛容さなのか。

煙の中から”緋色”の戦術機を纏って現れたルストは、二丁拳銃をわざわざ腰に戻したエクレアの戦術機…… 電撃菓子(エクレア) 3号@GGMCと背中合わせに立つ。

それはエクレアが展開している隕鉄の鏡越しにその戦いを見る者達からすれば、随分と奇妙なものに見えるだろう。見ようによっては肥満体にすら見える青銅色のカウボーイと、あまりに巨大な”拳”を備えた緋色の拳闘士が背中合わせで早撃ち勝負をしようとしているのだから。

『い~ち』

一歩、進んだ。

「……2」

二歩、進んだ。

『3』

三歩、進んだ。ガゴン、と緋色の拳が機巧の音を響かせる。

「4」

四歩、進んだ。ギャリ、と青銅色の拍車がかかとで鳴った。

その一拍は、まるで一時間の静寂にも似て──────

『「5』」

次の瞬間、 振り向かずに(・・・・・・) 腰部の拳銃を抜き放った青銅色の電撃菓子3号@GGMCが真後ろへと発砲した。

「……ッ!!」

だが、全く同じタイミングで全身に搭載されたブースターを全力で右回転を成すよう噴射し、恐るべき加速力と遠心力から放たれた巨大な緋色の拳による裏拳が弾丸を横から 殴り飛ばした(・・・・・・) 。

『ひゅうッ! やるねぇ~!』

「……曲芸」

『隠し芸なんだな~これが!』

今度こそ振り向き、いつの間にかもう一方の手にも握った二丁拳銃を構えた電撃菓子3号@GGMC。

そして、異様な前傾姿勢によるファイティングポーズで拳を構えるRS:◇「 殲顎緋砕(センガクヒサイ) 」。

最強の侵略者と最強の防衛者。鋼と鋼の一騎打ちが今、射撃と打撃の音と共に始まった。