軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12月15日:アンデッド・ブリッツvsアンデッド・ディフェンス

電撃戦。

実際の人類史においても数えるほどにしか成功したことのない「相手が対応する前に火力を叩き込んで敵の弱点を突く」という速攻戦術である。

配信連合(ライブライン) が取った戦術は単純明快、本陣であるサーティードに迫るレイドモンスター「嬲る縁大緑」が率いる緑一色の軍勢を強行突破してそのまま進軍する。元よりサーティードや王都ニーネスヒルは周辺モンスターの脅威から街を守るために防衛設備が充実しており、さらに言えば此度の戦争において直接対決するのは 開拓者(プレイヤー) に限られるものの、レイドモンスターへの対処に関してはその限りではない。

「いけいけいけーっ! 目指せ敵陣サードレマ! 開幕速攻でアドバンテージを取るぞーっ!!」

「「「「「おおーっ!!!」」」」」

ハーメルンの笛吹きが如く百人以上のプレイヤーを引き連れて走る先導者、「配信戦線」の実質的なまとめ役であり開幕先陣という大いに目立つ立ち位置を全力で楽しむぱやガルちゃんねるの片割れ、ぱやぶさはテンションを上げながら緑に染まった魔法職と思しき眷族体……既にプレイヤー達の間ではそのいかにもなトロ臭い動きから緑ゾンビと呼ばれ始めた敵を剣で薙ぎ払って前へ前へと突き進む。

「どうせ使い捨て装備なんですからこっちもゾンビアタックでいきましょーっ! 走るゾンビは強い! これハリウッドの常識ね!!」

電撃戦。

その最大の強みは火力の一点集中による突破力である。百人以上の精鋭プレイヤー達が振るう武具や魔法、あるいは素手の暴力は大した耐久力を持たない緑ゾンビの軍勢を面白いくらいに薙ぎ倒しながら矢じりの如く緑の勢力をかき分け貫いていく。

今回のイベントでは都市間の 転移(ワープ) にとある制限が課されている。戦争フェーズが開始された時点で全てのプレイヤーは各街に訪れたという”履歴”がいったん削除される。再び街を訪れることで初めて転移魔法での移動が可能となる。

両陣営がまず最初に行ったのは、転移魔法を習得しているプレイヤーを含めた自身らの”履歴”に各街の情報を記憶させ直すことだった。

「とりあえず最前線かその一個前の街で全員セーブして、そしたらサードレマに突撃しますよーっ! みんな準備は……あっ、突撃してるんだからできてるかぁ! だったらあとは覚悟だけだね! 覚悟はいいかーっ!」

「「「「「おおおおおおお!!!!」」」」」

動画配信者という立場で一廉の人物であるぱやぶさが今目の前にいてそして自分たちを鼓舞している。日常では味わいづらい非日常的なシチュエーションに新王側プレイヤー達のテンションは上昇し、そして緑ゾンビの軍勢をいくらかの犠牲はだしつつも突破した、という興奮がさらにテンションを上昇させる。

人を鼓舞する簡単な手段は達成感を与え、その次を提示することだ。サードレマ先制突撃という目標めがけて、プレイヤー達は進軍する。

◇◇

「おばかさんだねぇ! これから来ますって分かってる電撃戦なんて玉砕と同義なのにさぁ!!」

ぱやぶさ、進撃。その報せを現実からのリークで知ったペンシルゴンは配信者らしい楽しさと見栄えの良さを優先した行動を愚かと笑いつつも、頭の中では苦い顔をする。

(いやー、上手い事やってくれたねぱやぶさ……レイドモンスターにある程度の被害を与えて、街巡りもして、そしてサードレマにジャブも叩き込む………電撃戦じゃなくて速攻策としては例えこの場で負けてもメリットが多い)

相手が本当に配信映えだけを狙っているとはペンシルゴンも考えてはいない。そもそも配信者としての”映え”を考えたならば一日や二日で決着がついてしまう方が困るだろう。

(サードレマはこっちの本陣、事前準備も含めれば三日四日は楽勝で耐えられる。つまりどうやったって膠着状態になるわけで……)

ひたすら攻城戦をするだけの配信はつまらない、それは配信というコンテンツを見る側の者達も分かっている。

であればぱやぶさが別の街で攻撃とは別の行動をすることを咎める意見は少ないだろうし、配信者が目の前で何かをしていればついていくプレイヤーは必ずいる。配信者が移動するだけである程度の人員が移動する、言い換えれば遊撃要員としてこれ以上なく優秀ということだ。

(どうせお抱えの転移要員がいるから配信者は実質どこでも人を集められるし、ちょっと協力を頼めば承諾するプレイヤーなんて濡れ手で粟)

そんな配信者が複数人いる。配信チャンネルの数だけ遊撃要員が各地に現れることを考えると、明確にプレイヤー全体を統括できないサードレマに対してこれは中々に強敵と言えるだろう。そして何より、同じ条件に見えて新王陣営と前王陣営にはある違いがある。

「こっちのレイドモンスター、砲台型なんだよねぇ」

嬲る縁大緑は常に侵攻を続ける軍団型のレイドモンスターだ。常に気が抜けない代わりに、最終防衛ラインにNPCを積極的に採用できるという強みがある。

対してサードレマにド派手な砲撃をぶちかました焠がる大赤翅は死火山の頂上から動かない砲台型レイドモンスター。時間経過で超火力を叩き込んでくるので一度砲撃が来た後はある程度気を抜く時間があるが………NPCを防衛に回しづらいという欠点がある。

(あんな即死超火力を連射はしないだろうけど……あれを撃たれたらこっちは防御手段がない。どうしても戦力を割かないといけない………)

正直に言えば、サードレマのNPC戦力は新王側の騎士団と比較して若干劣っている。最たる理由はネームドNPCが新王側と比較して少ないという点だ。そこそこの戦力を向かわせたところで逆にプレイヤーが焠がる大赤翅を攻略する邪魔にしかならず、そして焠がる大赤翅の攻撃に対してNPCの殆どは役に立たない。なにせ個人が行使する防御魔法とは比較にならない都市クラスの防御結界がトイレットペーパー以下の防御力扱いなのだ。

( 0(レイ) ちゃんもレイドモンスター対処に向かわせるべきだったかな……うーん、でもねぇ………)

サイガ-0には替えの利かない役目があり、そして何より事前に対応できるとはいえ百人規模のプレイヤーは決して無視できる戦力ではない。

「ボスキャラは周囲の取り巻きから倒すってのが定石よね」

レイドモンスターの襲来で当初の作戦は使い物にならず、なんとかリペアしてもその脅威は後々にまで響く。それはどちらの陣営にも共通した問題だ。であれば戦争の勝利というメインオーダーを達成するためにすべきサブオーダーは。

「どれだけレイドモンスターを早く処理できるか……!」