軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12月15日:ヒートアップ・エッジ

「こなクソがぁ!!」

迫る再起動羽ミサイルを弾き飛ばしたのは、咆哮の如き叫びを上げながら動いたサバイバアルの回し蹴りだった。

咄嗟の動きとはいえ、ただ立ち尽くして刃の飛来を待つのと、一縷の希望に賭けて蹴りを放つのでは辿り着く結末には天と地程の違いがある。

果たしてサバイバアルの蹴りは奇跡的に羽ミサイルの"面"に炸裂し、殺人スピニングギロチンエッジは外部干渉による強制的な軌道変更によって大地を抉り裂きながら俺達のすぐ近くを逸れていった。

「助かった!」

「ぼさっとしてんな! トマホークは怯んですらいねーんだぞ!!」

くっ、そうは言っても俺は何故かまだ硬直が解けてねーんだよ。サバイバアルやウル・イディム氏は何故か動けているのに俺やヤシロバードが硬直続行なのはなんだ? 何か条件があるのか?

「……硬直が解けた!」

「あ、動くや」

「何ぃ?!」

バカな、ディプスロが四番手だと!? 純魔が紙とはいえ特化アタッカーよりも早く推定フィジカル参照な束縛から逃れる? マジで条件はなんなんだ。

「多分、通常の硬直と同時に別枠の硬直が重なってますね」

「何?」

硬直に別枠とかあんの? 最終的に一番ドベで硬直から回復した俺の怪訝な顔(おそらく現在装備的に、炎の中に浮かぶ沢山の目が全て半目になっている)に説明の必要を感じたのか、カローシスはトマホークの高周波硬直について解説してくれた。

「通常硬直、それも音響系はVITとの対抗判定なんだ。VITが高ければ高いほど硬直が解けるまでの時間は短くなる。でも硬直にはもう一つ種類がある……STM参照だ」

「スタミナ?」

「脱力状態、とでも言えばいいかな。瞬間的かつ強制的にSTMをゼロにして、それがフルゲージ回復するまで動けなくさせるタイプの硬直がある」

なるほどつまり?

「多分だけど……VIT参照する硬直とスタミナが全回復するまで脱力状態の硬直の二つが複合されてるんじゃないかな。ディプスロさんってヘイト集めてでも魔法使いまくる純魔でしょ? 一回分くらいは攻撃直撃しても死なないくらいのVITはあるんじゃない?」

「そうだよぉ」

なるほどね? つまりペラッペラの紙装甲だからVIT対抗にはほぼ確定で失敗するし、STMが長いから硬直解除までも時間がかかると………

「野郎絶対許さねぇ!! やすりで削って表面ツルツルにしてやらぁ!!」

「やすりが折れるよサンラク」

「 やすり(アラドヴァル) で削る!!」

「剣だよね? それ」

「いや槍」

「ん????」

槍だけど剣で、ディプスロ相手にはバットとして使うし、今からはやすりとして使うんだよ。

とはいえ話を戻すが、トマホークが披露したあの技は厄介としか言いようがない。硬直させてから強ホーミングの羽ミサイルで的確に仕留める……即死コンボと言っても過言ではないだろう。今回はサバイバアルがギリギリのところで運ゲーに勝ってくれたから助かったが……今後も使ってくるとなればなんらかの対策は必須だろう。

「あれ耳塞いで防げるかな」

「無理じゃないかなぁ、全身が震えるタイプでしょ」

「となるとやはりやすり……」

「いや、あの羽を破壊すればいいんじゃないの?」

ごもっともで。しかしトマホークの肉質はクソだ、アラドヴァルがあるから俺はある程度の有利を取ることができるが………

「別に破壊する必要はないと思いますよ、自分に策があります」

「………なるほど?」

「? 何か?」

「いや………」

この人、便利キャラすぎねぇ? 潤滑油とかそういうレベルじゃなくて十徳ナイフっていうか………本気出した神秘の剣って大体この性能なの? それともカローシスが引き出し多すぎなだけなのか?

俺の中で俄然便利キャラとしての地位にぐんぐん上り詰めて来たカローシスが取り出したのは何かの……苗?

「 仇護の檻苗(ミストルティン) っていうアイテムなんだけど……あー、説明は省きます。簡単に言うと結界アイテムなんですけど、これで刃翼を守って斬撃が当たらないようにします」

「オッケー、時間を稼げばいいんだな?」

「まぁそうなんですけど……これ、設置するのに一個五分かかるんですよ。手順が十工程くらいあって」

五分……長いな、運動部ならカップ麺作って完食するまでの時間だ。とはいえその効力は強力らしく、少なくとも普通の物理攻撃なら完全遮断するらしい。

「ただ、これ入手難易度が凄い高くて自分も三つしかもってません」

「十発のミサイルが七発になるなら上等だね。とはいえ十五分か……」

十五分間、トマホークが再起動斬撃を飛ばしてこないという保証はない。というかむしろ怪しい行動してる敵のところに優先して飛ばす可能性の方が高い以上、ヤシロバードが難しい顔をする通り実行難易度は高い。

「とりあえずカローシス以外フルアタックで足止めして……」

「いや、五分足止めするなら僕がやるよ」

会議に加わりつつ、前線を抑え込んでいるウル・イディム氏とサバイバアルの援護にグレネードランチャーを撃っていたヤシロバードの断言に、俺を含めた三人の視線がドヤ顔のサイバーカウボーイへと向けられる。

「さっきはいきなりの初見技で使い損ねたけど、多分五分くらいなら時間を稼げる」

「その心は」

「これさ」

………なにこのちっさい弁当箱。いや違うな、 弾倉(マガジン) か?

「これを当てられれば、多分それくらいなら足止めはできる」

「なるほどね、支援すればいいか?」

その弾倉がなんであれ、出来ると言った以上は出来るのだろう。であれば援護すればいいのかと問えば……ヤシロバードは不敵な笑みを浮かべてこうのたまいやがった。

「いいや? 射線に入らないようにしてくれればいいよ。相手がどれだけ暴れてようと、外さないから」

かつて孤島にて、狙撃から二丁拳銃までありとあらゆる銃撃手段を以て数多のサーバーに遠征侵略をしかけた男の、必中宣言だった。