軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12月15日:背筋が凍るほどに情熱

「おああああああ!!?」

なんだ今の衝撃波!? くっ、体勢のリカバリは……問題なし!!

「サイナ! 装備解除!」

「了解:」

ゴタゴタとした装備を一旦全て解除したサイナを空中で抱き抱えつつ着地、カローシスが付与してくれた魔法の効果がまだ生きていて助かった。

「全員生きとるかーっ!?」

「バイブだねぇ!!」

悔しいがこんなのでも戦闘中は貴重なダメージリソースだ、頭にチョップだけしておく。

「距離を取ってた三人は無事、サバイバアルとウル・イディム氏は……」

ええと? 位置的に吹っ飛ぶならあっち方面……お、いた。

どうもあの衝撃波に直撃したらしいサバイバルだったが、流石に俺より ヤワ(・・) って事はあるまい。飲み干した回復ポーションの空瓶を投げ捨てながら突っ込んでいくサバイバアルに合わせて支援射撃を行うヤシロバードを視界の端に捉えつつ、こちらもサボってはいられねぇと視線を動かす……あった!

「サイナ! アラドヴァルを回収! んで手渡しな!!」

「了解:」

参った、盤面リセット持ちは厄介だぞ。どうせ全身刃物だし突進技とかメインだろ、とか呑気してた。そりゃエンドコンテンツモンスターがそんなに生ぬるいはずがないのは分かっていたが……

「どこにしまい込んでやがったんだあの野郎……」

文字通り、風すら切り裂くような唸りを上げてトマホークの尻尾が高原を薙ぎ払う。サバイバアルの奴は器用にジャンプして回避していたが、逆に言えばサバイバアルでも防御はしたくないって事だ。

「サンラクさん、魔法職は当初のプランで行く。ヤシロバードさんには引き続き狙撃……サイナさんに陽動をやって貰いたい。どうです?」

「攻撃しなくていいんだろ? 聞いての通りだサイナ、全力で回避頼む。ありゃ絶対遠距離攻撃持ちだ、距離のアドバンテージを考慮しても活用しようとは考えるなよ」

「了承:しかしながら 当機(わたし) のインテリジェンスは 自動(オート) でアドバンテージの活用法を演算する可能性がありますが」

「油断して被弾しなけりゃなに妄想しても構やしねーよ!!」

サイナが回収してきたアラドヴァルを受け取って一気に前へと飛び出す!!

「ようトマホーク! ちょっとパンクが過ぎる尖り方だなテメー! どうせなら綺麗さっぱり丸めてやるよ!!」

アラドヴァルは現在、蒼炎に照らされ青色に輝きを放っている。 焔研(トルク) の段階は四つ、青は確か……二つ目。まだまだトロ火って事だろう、だったらもっともっと熱くしてやるよ……とりあえず松脂塗りますね。

「よっしゃあ!」

赤と青、混じって紫に揺らめき燃えるアラドヴァルを携えて空中ジャンプ。どうやらトマホーク側も俺の存在……否、アラドヴァルの存在に気づいたらしいが、生憎と危険度トップは俺じゃない。

「ヌゥア!!」

さしものドラゴン様も人型決戦兵器オークことウル・イディム氏に尻尾を掴まれては平常に迎撃、とはいかないらしい。

「オオオオオオオオッッッ!!!」

ビン!! と金属質な尻尾がまっすぐに伸びる。トマホークの鋭利な外殻を、同じく堅牢な己の外殻で無理矢理掴みながらウル・イディム氏は尻尾を引っ張るがトマホークも対抗する。

僅かな拮抗、しかしやはり根本的な重量差は覆し難いらしく尻尾の筋力だけで持ち上げられたウル・イディム氏が勢いよく宙に吹っ飛ばされる。だが一人が気を引けば残る面子が一歩進める。

「禿げ上がれバリカン!!」

スキル「 虹光の斬閃(スペクトル・スラッシュ) 」、「 百閃の剣(ヘカトン・スラッシュ) 」と比較してヒット数増加の上限が7と極端に低い代わりに、効果時間とダメージボーナスが追加された事で恐ろしい程のDPSを叩き出す攻撃強化スキルだ。

紫に揺らぐ刀身に虹の軌跡を乗せてトマホークへとアラドヴァルを振るう。だが刃の竜が繰り出した剛腕……厳密には腕から真横に突出して生えた特に太い腕刃がアラドヴァルを迎撃する。

「くっ」

" 俺(サンラク) "の……というか空中技の致命的な弱点、それは踏ん張りの弱さだ。基本的に空中歩行系の技は足裏に虚空を踏む判定が与えられる。つまり根本的に「踏ん張る」というモーションに向いていないのだ。

踏ん張る、という行動は地面があって初めて真価を発揮するもの……大地は大事。

要するに、巨大ドラゴンの剛腕と空中タップダンスの俺とでは根本的に力の拮抗というものは成立しない。それを成立させ得る数少ない可能性も手元には無い、つまり俺の身体は勢いよく吹っ飛ぶわけだが……

「悪いが、最初からヒットアンドアウェイ想定だ」

スキル「 相対的立体運動(ソリッド・マニューバー) 」で空中に物理的にあり得ない軌道の円を描いてトマホークの腕刃を回避、そのまま地上に着地してアラドヴァルで二度斬りつける。

元から長期戦上等でここに来てるんだ、じっくりコトコト限界留めなくなるまで煮込んでやるから覚悟しろ……!

「さぁ、やってみようか化学実験!」

俺、サバイバアル、ウル・イディム氏の役目は「叩き役」であり……「陽動」だ。直接殴って体力を削る叩き役は前衛の華だが、同時に陽動という脇役である以上、主役は後ろにいる……!!

「ハッハー! 樹海じゃ使えない武器だけどここなら思う存分ぶっ放せるのさ! ファイヤー!!」

「まだ序盤も序盤だ! あんまり使いすぎないでねヤシロバードさん! じゃあこっちも……【 着離れぬ炎外套(カース・ローブ・ヒート) 】!!」

一才の躊躇いも加減もなく最大の強火で放たれた火炎放射器の炎、さながら外套のように竜の身体を覆う呪われた炎の衣。

それらは材質の根本がなんであれ、 表面上は金属質である(・・・・・・・・・・) トマホークの身体を温める、という言葉が文字通り生ぬるい程に熱く加熱する。

そしてもう一人、

「……んふふ、ゾクゾクさせてあげるよバイブ君……出力八十倍【 心頭滅却の聖衣(インナード・クロス・フリージン) 】!」

本来は炎に包まれた己の身体を鎮火するのではなく対象の体表温度を下げる事で耐える、という使い所が限定的過ぎるが故にネタ魔法の烙印を押しつけられた耐熱強化魔法【クールダウン・スキン】。

だがそれも、実現杖ザ・デザイアーの力によって出力を八十倍にまで倍加させられたならば。それはもはや、体表温度を一瞬で0度以下まで冷やすことで体表の皮なり甲殻なりに包まれた体内を蝕む絶氷の死装束へと転用される。

「義務教育は済ませたかトマホーク君! これが 金属疲労(・・・・) だぜ!!」

強く熱し、強く冷やす。物質は相反する「熱」の極端を浴びせられるとその靭性を喪失する! 理系じゃないのでよく分からんが他の面々がなにも言わないなら多分合ってるんだろう!!

よーし、ぶちかませっ!!