軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

サラブレッド・ダッシュ!!

「いやでも違うじゃん? ほら銃って基本的に完成した時点で完全体なわけだからこの世界の常識に当てはめても一つの武器からさらに発展形が出る、ってのがそもそも僕としては慣れない概念であってそういう観点からすると隠し要素で特務用とか出されても僕としては対応できません、っていうかいや対応はするけど初見で気付くのはちょっと無茶というか」

「ヤシロバード」

「はい」

「特務ライセンス取り行くからそこどいてくれ」

「ずるいだろそういうのーーーーー!!」

「俺がズルいんじゃなくてお前がトロいんだろ」

しっしっ、さっさと市民用銃器担いで戦ってこいよ。

特務ライセンスを獲得せんと「勇魚」案内の元進む俺に、未練がましくついてくるヤシロバードを華麗なステップ(30フレーム刻み、要するにタップダンス)であしらうもこの哀れな男は自分の知らない銃を自分が知らないうちに獲得されるのがとてもお気に召さないらしい。

仮にも大の男の姿をしたアバターとそう大して見た目と年齢に差がないだろうプレイヤーが動物病院の前で最後の抵抗を試みる小型犬のような姿を見せているのは、他人事だというのに何故だか無性に情けない気分になる。

当人の主張としては特務ライセンスは一旦置いといて僕と一緒になんか適当に大冒険して特務規定を達成。それが終わったらちょっと休憩してもろて、その間に僕が特務用執行機装作るから……ということらしい。それ要するに一番最初に特務用獲得するのは僕だからすっこんでろ、ってことですよね? ハハハ、すっこんでろ。

「くっ…………!!」

すっ(マーニの詰まった袋を差し出すヤシロバード)

「サバイバアルといいなんで金出せばなんとかなる、みたいな共通認識あるの?」

「いやほら、孤島でサバイバルしてるとリアルで金の力が身に染みるというか……経験則?」

「後遺症って言うんだぜそういうの………しゃあねぇなぁ」

段々この情けない生物を放置する事が情けなく感じてきた、可哀想だからとかじゃなくて……なんというか……

「道路に落ちてる生ゴミを放置できない感じになってきた」

「銃のためなら生ゴミにもなるさ」

そこにいたのは、欲望の為にプライドと人権を捨てた成人男性一人分の重さの生ゴミだった……粗大ゴミでは?

「で? 特務規定をクリアするようなスーパーエリートエージェントになる為には具体的にどの程度の敵を倒せばいいんだ? ユニークモンスターか?」

「サンラク、想定ジークヴルムは流石に無理ゲーだよ」

『厳密なラインを説明することは出来ませんが、特務ライセンスは一人……あるいは二人での戦略を判定するのですから。現地環境における頂点捕食者の討伐などでしょうか?』

……成る程?

「頂点捕食者か……(首が三つある恐竜の姿を想起する)」

「頂点捕食者ね……(三つ首を持つ恐竜の姿を想起する)」

エクゾーディナリー個体やなんかよく分からないレア個体を除いても、新大陸樹海部分に置いて覇たる君臨者といえばやはり三つの首と化け物タフネスを誇るドラクルス・ディノサーベラスの他にはいないだろう。

個人的にあの三つ首ティラノ、エネミーMobとしての完成度が恐ろしく高い。絶妙に避けやすく絶妙に被弾する大振りながらシンプルな質量。そして「一番 強い(ウザい) 奴」を狙うAI……うーむ、周回作業中に遭遇すると心の底から嫌すぎる強Mobとしての完成度よ。

「サーベラスかぁ……あいつ、通常個体でも皮が銃弾通さないから苦手なんだよね。体内に叩き込めばなんとかなるけど」

「銃弾の経口摂取かよ」

「通常個体はそれで何とかなるけど" 死闘の傷(スカーデッド) "や" 緋色の傷(スカーレッド) "はダメだね、マジであいつらは強すぎる」

「"緋色の傷"は知ってるけどエクゾーディナリーの方もそんなになのか?」

「あいつ、ダメージ受けるとその部位に耐性がつくんだよ。しかも特定の攻撃とかじゃなくて斬撃とか打撃とかめちゃくちゃアバウトに」

「クソモンスターかよ」

それは厄介が過ぎる……ただでさえタフなのに攻撃を当てれば当てるほどダメージ効率が下がり続け、なおかつ複数の攻撃手段をアタッカーに要求するわけで。いやでもしかし……んん?

「なぁヤシロバード」

「なんだい?」

「"緋色の傷"はシンプルにVITがガンガン上がるからどうしようもないけどさ……その"死闘の傷"の方ってさ」

「うん」

「 回復して傷を消したら(・・・・・・・・・・) リセットされるんじゃね?」

聞いた限りじゃ「傷口」が耐性を獲得するんだろ? つまり傷ついてない部分の耐性は初期値なわけで。エクゾーディナリーに限らず大抵のモンスターは明確な弱点、というより攻略のための突破口がある。

中には「クソ極悪」から「極悪」に変わる程度でしかない事もあるが、それでもやはり突破口はある。そんな考えから何の気なしに言った推測に、しかしヤシロバードは口元に手を当てて考え込む。

「……………それあり得るかも」

「いやでも堂々巡りの可能性も……」

「確か【SF-Zoo】が検証していた中にモンスターに対して回復魔法を使用した際の外傷と内部数値の差異みたいなのがあったはず。プレイヤーに対して割合で回復する魔法をモンスターに使っても同じ割合にはならない、でも外見上の傷は癒える……動物園の連中は撮影の時に便利とかすっとんきょうな事言ってたけどこういう時の条件をリセットする為だったとしたら……」

確かこいつ、【午後十字軍】のメンバーなんだったか。あそこって確かドラクルス・ディノサーベラスの特殊個体に痛い目見てるから因縁があるとかなんとか……

「いやぁすまないサンラク、ちょっと用事が」

「構わんよ、俺はゆっくりライセンス取ってるから」

「ふっぐ………ゆ、ゆっくりでいいよ……三日くらいかけて、サ……」

引きつった笑みを浮かべながら去っていった───恐らく自身のクランメンバーに今の推測を伝えに行ったのだろうヤシロバードを見送りながら俺は口を開く。

「……「勇魚」。」

『はいなんでしょう?』

「三時間でライセンス取るぞ」

『かしこまりました! それでは特務ライセンス取得試験を開始しましょうっ!!』

誰が待つかバカヤロー、牛歩するつもりはさらさらねぇ。いつだって俺はサラブレッドの如く駆けていくんだよ! ヒャッホウ新コンテンツーーーっ!!