軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

英傑よ、今こそシンに迫る試練の時

「約束の品だ」

ごどん、とビィラックの前に黄金のマグマで満たされたバケツが置かれる。普通こんな風にしたらバケツが溶ける溶けない以前の問題としてマグマが冷えて固まりそうなものだが……インベントリから取り出した黄金のマグマはその熱と輝きを未だに色褪せさせる事なく維持し続けていた。

「……ワリャに任せりゃ月の石でも持ってきそうじゃな」

「この手の届く場所までのものしか用立てられねーよ」

まだ月には届かないから流石に月の石を要求されたなら、空を見上げて月が突如爆発して隕石としてカケラが落ちて来る乱数を期待するしかない。

「これで作れるんだろう?」

エクゾーディナリーモンスター金晶独蠍"皇金世代"の素材を使用した武器、より優れた高みを目指すためにビィラックが求めたもの……それこそがこの黄金のマグマだ。

あの勇者武器にも関わりを持つ不思議素材だが、俺からすればレア度と採取難易度の高い単なる素材でしかない。

「……あぁ。わちの目に狂いはない。水晶の蠍は大地の赤子、そんなら大地の血潮こそが幼年期に終わりを告げる最後の鍵じゃけぇ」

あれが赤子? 最近どんどん賢くなってるけど成長期なのかな? 知恵熱でスリップダメージ発生してくんねーかな。

そんな益体もない事を考えていた俺だったが、黄金のマグマを前にしてなんのアクションも起こさないビィラックの姿に疑問符が浮かぶ。

「なんだよ、黄金のマグマをおかずにしたいなら白米持ってこようか?」

「違うわい! 全く………なぁ、サンラク。折入ってワリャに頼みがある」

「頼み? 買い物の追加注文ってわけじゃあなさそうだが」

ビィラックは何も言わない。目を瞑り、腕を組んでただ静かに……あーいや、よくよく耳を澄ませると喉が鳴ってる。唸り声的な?

「……こりゃあ、わちの頼みじゃ。ワリャは受けるも断るも自由じゃけぇ」

「周りくどいな、内容を言え内容を」

「 神匠(・・) になる機会を得た」

「あ、マジ?」

やったぜビィラック、バリバリ戦闘ジョブの俺は生産がからっきしなので目をかけてた生産職の躍進はパトロンとして鼻が高いぜ。

だがどうにも様子がおかしい、最上位職業……それも隠し職業も兼ねた最高最大最強の鍛治ジョブへの道が開けた、と本人が言っているのになぜそんな難しい顔をするのか。考えられる可能性は……

「まさか本当に月の石が必要とか」

「あるんなら嬉しいが違う。必要なもんはただ一つ……そう、ただ一つなんじゃ」

やはり回りくどい、だが俺は数多の「今はまだ知る時ではない……」を乗り越えて世界を救ってきた男。いやそれ最初に言ってれば犠牲半分以下になるやんけ! という怒りを飲み込む胸の広さがダンディズムに繋がるのだと武田氏も言っていた……まぁ、FPSで脳味噌溶けてたけどあの人。

「 神匠(しんしょう) ……否、「 神匠(ザ・ブラックスミス) の 腕(かいな) は 現在(いま) より 未来(さき) へ進める者……偉業を称え、形とする者……」

「ビィラック? もしもし?」

「 アラドヴァル(・・・・・・) 」

「何?」

アラドヴァル? はい持ってますがアラドヴァル。一発芸「チーズみたいに溶ける壁」やっとく? 前にお前の前で床バージョンを披露したら危うく殺されかけたけど。

「ええかサンラク、神匠は英傑武器を 神化(・・) させられる唯一の存在じゃき。逆に言えば神匠とはそれが出来なければ神匠足り得ん」

「お、おう?」

「五色の竜? 否、天覇の龍? 否! アラドヴァルは 満たされとらん(・・・・・・・) ! そう、そうじゃ。竜殺しの槍はしかし竜を一度も殺しとらん!」

バグったか? それともキョージュか磐斎氏呼ぶ? ミレィは「何もわからん」ってシンプルな結論を5分くらいはぐらかしそうなので却下。

「サンラク、竜じゃ。竜を狩れ!」

「は?ドラゴン? ユザーパードラゴンでも狩るか?」

「そげん木端に用は無い!!」

おいおいちょっと待てよ、ユザーパードラゴンと言えばドラ姫、最大火力、最大速度の三人を翻弄し大苦戦させた超強敵だぞ? まぁ次会った時は俺の方から空に乗り込んでしばき落とすつもりだが……

「サンラク、聞けサンラク。真なる竜を討て!」

「真……なんて?」

「空想より産み落とされた真に 竜(ドラゴン) たる翼持つ牙! 五色の竜を焼くアラドヴァルの炎は歪められた伝説に過ぎん! 聞け、聞けやサンラク! アラドヴァルとは、 輝槍仮説(ブリューナク) とは───!!」

「ほうら壁がチーズのようにとろーり」

「おどりゃ何しとぉーーーーーっ!!?」

「落ち着けボケナスがぁ! 句点を穿て! 読点を刻め! 早口過ぎて「ブリューナク」と「アラドヴァル」しか記憶に残ってねーーんだよ!!」

「壁を溶かして削っていい理由にはならんじゃろがーーっ!!」

殺意剥き出しでぶん投げられたハンマーをスキルフル動員でキャッチ、こちらもキレ返しながら状況のクールダウンを待つ。むしろヒートアップしてる気がしなくもないが。

……

…………

五分後。

とりあえず落ち着いたビィラックの話を総括するとこういう事らしい。

・この度、神匠に転職できるチャンスを得ました!

・転職条件は「英傑武器をリビルド(もしくはリバース)からさらに先の段階に進化ならぬ神化させること!

・つまりサンラク君に協力してもらう場合はアラドヴァルを使うことになるね!

・でも大変!ただそのままリビルド(あるいはリバース)を進化させようとしても高確率で失敗するよ! 失敗したら当然その武器は砕け散るよ!

・そうならないためには、その英傑武器の本質を昇華させる必要があるよ! アラドヴァルの場合は竜を殺す槍、という本質だね!

・否、否。竜の がらんどう(・・・・・) など竜にあらず。祖なる龍の手本もまた竜にあらじ。我望むは竜、真なる竜種。

・我、輝ける槍の真理に至らんとするもの。焔に眠り、がらんどうを灼けど満たされぬ渇き。

・主人よ、巨槍の骸より剣を見出せし狼の影を追う者よ、真なる竜を討て。真説に至らぬ我が身なれど、真説に相応しきは我を於いて他に無し。

・竜を討て、真なる竜を討て。既に空想の怪物は密やかに現れたり……

・わち今何言ってた? なんぞ気が遠くなってたが……

うん、病院行こうビィラック!!