軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゴールデンロード・チャレンジ

門をくぐり、回廊を進む。数十メートル歩き改めて思う。やはりこれ屋敷とか城ではなく神殿とかそういう系の場所なのでは、と。

「なんというか、メッセージ性の強い壁画がずらりと」

「これライブラリに売れそうじゃないです?」

「抽象的な壁画だが……いや、まぁ、明らかにそういう事だよな」

エジプト……じゃないな、若干のアジアっぽさもある壁画に描かれているのは極々シンプルな「物語」だ。

・逃げ惑う人々と獣

・強大な敵

・立ち向かう戦士達

・人と獣を問わず積み上がる屍と膝を屈する数人の人間

・大地を割って現れる光

・倒れていない数人の前に現れる剣、槍、弓、杖、槌

・敵を倒す五人の……そう、五人の「勇者」

「まぁ、要するに勇者武器の誕生プロセスみたいなもんだろコレ」

「その通りだ、 巨(おお) いなる槍を携えし者」

……む。

横を向けば、そこには随分と小柄な一人の青年が立っていた。恐らく 鉱人族(ドワーフ) なのだろう、だが男も女も全体的に髭や髪、あるいは眉などの毛の量が多いのに対して、この青年は髭を剃り、眉も薄く、髪に至っては完全に剃り上げたスキンヘッドだ。ハゲたホビットと言われた方が納得できるレベルだ。

だがそのつるっぱげの頭に載っている冠、そして冠と同じ輝きを放つ黄金の腕がキャラクター造形として一つの答えを導き出す。

「あんたが鉱人族の……」

「如何にも、僕は当代の「ミダス」だ。いや、ミダス28世と言った方がいいかな……失敬、僕の代では初めての他種族なんだ」

「ミダス……まんまだな」

「どういう事?」

「後で調べとけ」

後ろで火酒夏とイムロンが何やら話しているが、ミダスって確か触れたものを全部金にする王様だっけ? 何神話だったか忘れたけど。

「そしてそちらのお二人……その輝き、まさしく聖槌ムジョルニアと聖杖アスクレピオスとお見受けする」

「ああ」

「はい」

しばしの沈黙。何かを堪えるように唇を強く結んでいた禿頭の王は、暫くしてようやっと己の中から飛び出そうとしていた感情を飲み込んだのか、穏やかな声音でされど高らかに口を開いた。

「我ら守り人、赤き竜より隠し通せし黄金を第二十八代ミダスの名に於いて確かに勇者へ届けるものなり。 星を救う者(セイヴァースター) に成り得る勇者たちよ、どうか試練に挑まれ給え」

「おっ」

「わ、」

「どうした?」

「ユニークシナリオだ」

「勇者専用ユニークシナリオ「勇ましの試練」が進行しましたねー」

「鎧の器と共に灼熱を超えろ……か」

「「…………」」

うーん、俺とレイ氏がひたすらに蚊帳の外だ。かろうじてアラドヴァル関連でコメントのある俺と違ってレイ氏はひたすら蚊帳の外だ。

ラダー氏はとっくに赤竜系竜人族達のところに繋がるトンネルへと向かっているのでマジで「場違い」な空気が漂いつつある。

「どうするレイ氏、俺は一応あいつらと同じ場所に用があるけど……」

「それなんですけど……ちょっと、」

「ん? あー、ミダス殿」

「何かな?」

「少々壁画を見ていても?」

「構わない、他でもないアラドヴァルに選ばれた貴公であるならば。むしろあちらの壁画も見て欲しい」

新大陸の亜人種に対してアラドヴァルが特効すぎる、いやダメージ的な意味ではなく印籠的な意味で。とはいえ本当は密談のための方便なので若干の申し訳なさを感じつつも、俺とレイ氏は少し離れた場所で小声の会話を始める。

「……で、どうしたの?」

「その……多分、なんですけど。私、ここにいない方がいいと思うんです」

何故に? ガラテナを無用に怖がらせる、という理由から既に「渡り鳥」は外している。なので素顔(女)の怪訝な表情はレイ氏にも丸見えだ。

「……ここに入ってから、ウィンドウが出ました」

「ウィンドウ? 何かの通知って事?」

「はい………太極の剣関連です」

「あー…………それは、」

良い悪いで言えば、あまりよろしくない部類だろう。

勇者武器は諸々の情報を合わせて考えるに、この先のシナリオで人類側の象徴として振るわれる武器……つまり未来に役目のあるコンテンツだ。

それに対してレイ氏の武器は過去に遡って真実を知るもの、神代を超えて更に古き時代、始源の真実に至るための武器。

ぶっちゃけ相性的には善と悪の関係性に近い。プレイヤーが振るう以上は敵というわけではないだろうが、しかし勇者武器に関するシナリオの発生地に近づいて良い結果が出るとは考えづらい。

「ちなみに内容を聞いても?」

「……白き傷に浸せ、と」

なんたってシャンフロのシナリオはこうも案内がポエミーなんだ、雑菌福耳にでも聞いてみるか? いやダメだわあいつラブリーでエモーショナルなポエムしか適正ないし。それで食っていけそうなんだから凄いけど。

「なので、ちょっと火山の外で……手がかりを探してみよう、かと」

「中じゃなくて?」

「……始源関係、ですから。人里からは離れているのでは……と」

成る程、確か太極の剣……もとい神魔の剣があったのも人間が近づくような場所ではなかったと聞く。であればホルヴァルキンという人類の拠点からアクセスできるような場所ではないという判断か。

「そっか……じゃあ、俺も用件が済んだら手伝うよ」

「いいん、ですか?」

「全然大丈夫、それに始源関連もちょっと気になってはいたし」

とりあえずレイ氏とは一旦別行動、俺も俺で当初の目的を果たすとしよう。

黄金の王ミダス? 黄金のマグマ? 勇者専用? 知るかよ、金ピカじゃなきゃ通れないってんならこちとら皇金のバケツだ。

「星は救えなくてもマグマは掬えるってな」