軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

強食同源

ぶっちゃけ回復してもらっても即死にかける体力しかない俺はともかく、火力とそこそこのVITで前線を支えられるレイ氏が最強のヒーラーによる援護を受けている時点で大抵の敵には負けないわけで。

全ての脚を叩き割られ、最後にスレッジハンマーで眉間を粉砕された蟹が倒れ伏す。蟹君はよく頑張ったよ、ただこっちの前衛が破壊兵器レイ氏と甲殻系多脚生物得意マン俺だったことが不幸だったな。針のついた尻尾を生やしてから出直してこい。

「あー、経験値入らないのか」

レベル99の時はエクステンドに蓄積されるから経験値自体は入っていた。だが蟹が消えても経験値は+0だ、勿体無いお化けに祟られそうだぜ。

「しかしその 聖(せい) …… 杖(じょう) ? 完全ヒーラー特化なの?」

「そですよー。聖杖アスクレピオス、この杖を使って発動した魔法は攻撃だろうが防御だろうが強化だろうが弱体だろうが全て「ブレイバーヒール」に変換されるんですよ」

「マジか」

回復魔法しか使えない、ではなく全部回復魔法にする、と来たか。これで聖弓以外の勇者武器の詳細を知れたな。

聖剣が例の高確率食いしばり。

聖槍が防御の完全貫通。

聖槌が鍛治生産時の補正と使い捨て武器の生成。

そして聖杖の回復魔法変換。

こうなってくると聖弓の能力も気になってくるが、下手に斎賀姉に聞くと「じゃあ教える代わりにリュカオーン倒しに行こうな!」とか言われて廃人マラソンに付き合わされそうな感じがある。そもそもリュカオーンがどこにいるのかも分かってないのに不毛過ぎるわ。

「あ、そうだレイ氏」

「はい、なんですか?」

「聖弓ってどんな武器なの?」

いたわ、元黒狼で幹部級の立場にいた人。

というわけでレイ氏に聞いたところ、聖弓は魔法弓と物理弓の二つを一つの弓で実行可能な武器であるらしい。使い分けるだけではなく物理矢に魔力を内包させて炸裂させたり、逆に魔力で物理矢を覆うことで威力と速度を上げたり……なんというか器用な能力だな。

沼地というエリア故に出てくるモンスターも全体的に らしい(・・・) モンスターばかりだ。その中でもあの蟹は刻傷にも怯む事なく襲いかかってきたので上位の存在らしく、今俺と目線が合った脚の生えたドジョウが一目散に逃げていったのを見るに忌まわしきリュカオーンの呪い(強化済み)は今日も元気に強者誘引をパッシブで発動しているらしい。

ていうかあの足付きドジョウもしかして 泥堀り(マッドディグ) の親戚か? あっちは脚の生えたナマズサメだが。

「しかしアレだな、ノワルリンドが拠点にしてたって割には竜化モンスターはそんなに多くないんだな」

「ノワルリンド、よく狩りをする。黒いモンスター、狩る」

成る程? 元を正せば竜化は色竜の細菌だか細胞だかに感染する事で発生する現象な訳だし、逆に言えば竜化モンスターを狩れば色竜ウィルス? を回収できる……って感じなのか? ソース皆無の推測だけど 本人(ノワルリンド) に聞けば解決か。

「どうする? 蜥蜴人族や竜人族の集落跡で一旦休憩する?」

「私は……その、このまま進んだ方がいいかな、と」

「火山にある 鉱人族(ドワーフ) の集落で休憩すれば良くない?」

「無限インベントリ持ちが三人いますからねぇ、MPアイテム恵んでくれたら満腹度とMP以外は完全回復させますよー」

そう、地味にリヴァイアサンで魔力運用ユニットを手に入れるべく奮闘していたイムロンは、目当てのもの以外にも大量の買い物を行なっていたらしい。

そしてその購入項目の中には格納鍵インベントリアもあったのだ。聞けばリヴァイアサン内の「工房」で作った物品との交換リストの中にあったらしい。あの手この手で隠してるな「勇魚」の奴……

「いや本当便利ねこれ、下手したら「工房」を持ち歩けるわよ」

「私も欲しいなぁ……ツチノコさん一個くださいよ」

「これ装備欄潰す上に一度つけたら外れないんだよなぁ」

どちらにせよ渡せるものじゃないし、イムロンのケースを見るに頑張れば個数限定で手に入る代物のようだし頑張れとしか言いようがない。それにようやっとインベントリ、インベントリア二つによる3ウィンドウ操作に慣れてきたんだ、そうなると手放すのがちょっと惜しくなるのが人の常……

そんなわけで火山ツアーは止まらない。一族全員でノワルリンドについて来たが故に完全に放棄された蜥蜴人族達の集落を完全スルーしてラダー氏の案内のもと、俺達は火山へと突き進む。

「わ、なんだろう今の緑の光」

「 帝晶双蠍(アレクサンド・スコーピオン) のビームだろ、上に射出したって事は鳥でも叩き落としたんじゃね?」

「アレク……なんて?」

夜になるとシグモニアの水晶冠は本当に目立つ。場所が見えなくても夜空を赤く照らす光は遠くからでもぼんやりと見えるし、今のように冠に住む蠍共が迎撃ビームを放てば流れ星のように輝く光のラインを見ることができる。

幻想的? だったらもっと近くへ見に行けばいいと思うよ、特等席であの光を浴びることができるだろうしな!!

「……そういや、戦術機で大陸最西端まで行くとか言ってた奴がいたような」

「「「…………」」」

そういえば光が空に昇って行く 最中(さなか) 、変な光が一瞬見えたような。いや、きっと気のせいだろう。

なんやかんや物理投擲しかしない水晶群蠍と違って帝晶双蠍は対空対地に優れた飛び道具持ちだ、戦術機があっても空中戦は危険なんだよなアレ……うーむ南無阿弥陀仏。

「鳥の人、魚を捕まえた。鳥の人、これは美味い」

「へぇ」

居住してる場所がそもそも沼地だから軒先で餌が取れるのか……あの家、どういう理屈で立ってるんだろうか。

それにしても魚か、ちょっとデカめのドジョウみたいだな。脚は……生えてない。では実食。

「お、踊り食い……! これがツチノコさんの強さの秘訣……!?」

「そうだよ、掲示板で拡散していいよ」

「……え、マジですか?」

ホントだよ、ツチノコさん嘘つかない。でも俺はツチノコさんなんて名前ではないからその限りではない……