軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それはそれとして

玲さんと勉強会をする事になった。

如何にシャンフロでLv.150とイキったところでリアルじゃただの高校生、期末試験はレベル1でも150でも等しく同じ難易度だ。

我が人生の師、武田氏謹製の将来チャートに従って学業をこなしている俺だが勉強というものは厄介なもので、世の大半の学生からは厄介な魔王のようなものと思われているがその実態は地道なレベリング系統なのでちょっとでも攻略を怠ると後々響いてくる。

という話を玲さんにしたところ、勉強会をしませんかという流れになったわけだ。

よくよく考えなくても玲さんは頭が良いので勉強会の相手としては理想的ではないだろうか、少なくともどっかのポエム野郎みたいにいきなり英語でポエムを口ずさんだりはしないだろう……奴の「英文ポエムシリーズ」はまだ切り札として懐にしまってある。

楽郎と勉強会をする事になった。

既にこの時点で玲の意識は失神の二歩手前まで踏み込んでいたが、意地でもこのチャンスを逃すわけにはいかぬと、「恋心」の文字が刻まれた鎖がなんとか玲の意識をつなぎ止めていた。

(はっ……はっ………吐きそう………)

勉強会、つまり二人きり、即ちデートあるいはその類義語である。岩巻が聞けば半目でため息をつきそうな思考のぶっ飛び方をしているが中学生の頃から「勉強会とか開いて楽郎君から頼られたりして……」と妄想しながら勉学に努めていた玲である。こじれにこじれた数年分の感情が現在この瞬間に溢れ出すのも無理もない事だった。

(ばん、万全の……そう、万全の備えを……!!)

万が一にも無様な姿を見せるわけにはいかない、楽郎からの如何なる質問にも答えられるようにしなければ。

自分が楽郎に質問する、という可能性が頭からすっぽり抜け落ちたままに、難関大学を目指す高校生向けの電子参考書を衝動的に買いまくる玲。それを止める者はなく、さらに言えば見てくれだけは「大学受験に燃える優等生」なので尚更止める者がいない。

結果として。

「…………」

「…………」

直近の期末程度ならそこまで困っていない楽郎と、困ることすら無い質問待ちの玲によるひたすら無言の勉強会がそこには広がっていた。

そも、玲や楽郎の住む街の私立図書館は一年程前に大改修が行われ、国内屈指の最先端設備を備えるに至ったハイテク図書館である。

机の「面」であればどこに触れてもコンソールを操作できる全面タッチパネルシステムデスクを使えば席から立つ事なく最新の参考書を表示することができる。

つまり玲の衝動買いは将来的な有用さを差し引いても無駄な買い物だったわけだが、本人としては今の状況こそが値千金なので多少の 端金(はしたがね) 程度は気にも留めない。

「…………」

「…………」

何か違うのではないだろうか。

学力のパラメータが上がる反面、何か別のパラメータがゴリゴリ下がっている気配が背筋を震わせる。

そう、受け身なままでは本当に何も進展しないことを自分は何年も実体験として経験しているはずだ。ならばどうすればいいのか。

「………っ」

玲は岩巻に助けを求めた。

数秒してSNSに返事が来る、期待の眼差しで通知を見れば、

岩巻:告白

「…………」

それができたらこんな苦労はしていない。岩巻がこの場においてなんの助けにもならないと結論づけた例は世間一般の価値観で識別するなら「優等生」に部類される脳をフル回転させ、共通の話題を会話の切り口にする妙案を思いつく。

「……あの、」

「ん?」

流石私、と己を褒め称えながら玲は図書館という場所に考慮した小さめの音量で一言。

「例の、動画を見たんですけれど……」

「ぬ゜っ」

ずごん!!!!!!!

「ぴょっ!?」

楽郎が結構な勢いで額を机に叩きつけながら突っ伏した。

斎賀 玲、痛恨の地雷マスであった。

肝臓の辺りから出た変な汁が鼻の奥で炸裂したような不意打ちが俺を襲う。今まで生きてきて覚えてる限り一度も出した事のないような音が喉と鼻の中間辺りから出た気がする。

一瞬でバグった思考を額の痛みが再起動する、問題はないと周囲に頭を下げつつ俺は残った理性をかき集めて「何も問題はない」といった 体(てい) の外面を構築する。

「へ、へぇーえ? 見た感じでごずぇーますか?」

「な、何か……あの、ええと、その、ご、ごめんなさい?」

「問題ねっす、全く問題はねーっす」

「そ、そうですか………その、とても……カッ……か、こっ……す、 凄かった(・・・・) 、です」

「は、ははは……」

シンプルに称賛されるのが一番つらい。

アーカイブとして動画を残していない筈なのに 何故か(・・・) 最初から録画されたデータがミラーとして出回っているし……で、知らん奴が上げたその動画に広告がついて何万再生もされてるって事は広告収入が誰かの懐に入ってるのが強かというかなんというか……今朝見たら消されてたけど。んでそれぞれ別の投稿者による投稿で三つに増えてた。

「オルケストラは……あんな、感じなんですね」

「ルートが二つに分岐してるからね……あー、玲さんも挑むの?」

「い、いえっ、私はまだその、剣と鎧関連で色々と……」

あー、そういう。この人シャンフロでオンリーワン張ってるもんなぁ。

「その……楽郎君は、どうして動画を……?」

「…………本当はライブラリと検証するためにプライベート配信にするつもりだったんだけど、操作間違えてパブリック公開に」

「あ………それは、あの、それは………」

笑いたくば笑っていいぜ玲さん、外道共ならまぁ爆笑するだろうし。

ふと携帯端末で調べてみれば、三つあるミラーが全て10万再生していた、トータル何万行った? 世界君ちょっと俺に課す試練のレベル高すぎない?