軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Who are you ?

唖然とするサイナをニマニマと眺めつつ、隕鉄鏡をマニュアル操作で近づけつつ俺は推理を続ける。

「エリーゼ・ジッタードール。成る程確かに奴は「歌姫」として出てくる……だが彼女はオルケストラには絶対に関われない」

何故ならエリーゼ・ジッタードールは音楽プレーヤーの所有者になったことがないから。シュテルンブルームのメンバーもアンドリューも、神代以前人類もオルケストラに関われる最大の理由は期間はどうであれ音楽プレーヤーの所有者であったからだ。

限りなくゼロに近くてもゼロではない、シュテルンブルーム全員が所有していたということは貸し回していた感じだろうか?

「オルケストラに関わることが出来るのは過去にオルケストラ、音楽プレーヤーを保有した事のある者のみ。だからエリーゼ・ジッタードールは絶対にオルケストラに関与していない」

「では、何故エリーゼ・ジッタードールが「歌姫」として出現するのですか?」

そこだ、そこに冥響のオルケストラというユニークを攻略するための鍵がある。

あの時、エルマと交代したエリーゼの顔は「納得」とは程遠いものだった。ユニークシナリオは物語の完結を目指すもの、そしてユニークモンスターは大なり小なり納得と共に撃破される。あるいは納得する為に奴らは動いている ケ(・) がある。

であればこのままあの画面を……恐らく報酬なのだろうアイテムに手を伸ばすのはあまりに危険、このゲームは一度きりのコンテンツにバッドエンドを仕込むくらい平気でやる。その確信があるからこそ慎重に手を打たなければならない。

「音楽プレーヤーは何のためにある?」

「……解答:主な用途としては音楽鑑賞の為かと」

「そう、音楽を聴く為だ。言い換えれば……歌を「再生」するのが音楽プレーヤーだ」

かつてあったものを同じ状態で再度生まれさせる。例えばそう、エリーゼの歌。だが奴は原理不明のオカルトオブジェクト、蘇るのは本当に歌だけなのか? 本人の……仮に霊魂と定義するそれが関わらない「 歌姫(エリーゼ) 」を動かしているのは誰だ?

「んー……どうせだしドレスコード気取っておくか」

無論礼服なぞ持っていない、のでそれに近いものを着ることにする。はい聖杯使ってー、バニー服着てー。

「さてサイナ、オーケストラは終わったがやはりこれで終わりとあっては名残惜しいだろ?」

「疑問:一体何を……」

「何をするって……コンサートの最後にすることなんて決まってるだろ?」

はいお手を拝借。

「エリーゼさんのちょっといいとこ見てみたい! アンコール! アンコール! ほらサイナもリピートアフターミー!」

「……アンコール、アンコール」

さぁ来い、これが本当のラストコールだ。店じまいはもう少し待ってくれよな「歌姫」さんよ……!!

「「アンコール! アンコール!」」

サイナと声を合わせ、仮面が置かれているこのバーにおける不自然な空白に声をかけ続ける。

三十秒程声を出していた時だった。

『…………』

青白い炎が虚空に浮かび上がった。

「おっ」

「これは、」

小さな炎が風のない虚空に揺らぎ、あたかもそれが種火であるかのように薄ぼんやりとした影を照らして輪郭を固めていく。

現れたのは一人の女性、あの時悔しげな顔と共に消えた女性……エリーゼ・ジッタードールだ。ただ一つ違う点があるとすれば、その胸元にまるでネックレスのように音楽プレーヤーをかけていることだろう。

「エリーゼ・ジッタードールは現れない。であればそこにいるエリーゼの正体は何者かが再現し、そして動かしている存在……そんなことが出来る存在なんて、一つしかないだろう?」

未来を確かめたいと願う者達。

文化を知ってほしいと願う者。

そして この歌を聴いてほしい(・・・・・・・・・・) と願ったのは誰なのか?

「エリーゼ・ジッタードール……否、「ポケットアリアG型10-82119」! それがお前の正体だ」

『…………』

言葉はなく、されどその微笑みが何よりの答えなのだろう。 エリーゼ(音楽プレーヤー) は微笑みながらステージの中央に立つ。

「なぁサイナ、」

「 応答(はい) :」

「ただの音楽プレーヤーでもここまで来たんだ、人形がアイデンティティを叫んだってなんの引け目もないだろう」

「……………はいっ」

冥響のオルケストラ「 追加楽章(アンコール) 」。あまりに長く、あまりに強敵であったオルケストラ真のラストバトルは、いつの間にか注がれていたカクテルと共に。

『───私は観測者』

『───私は歌う、歌う。私は得た、得た。紡ぐ旋律は命の螺旋、叫ぶ歌声に答えが返る、響く言葉に英傑を見た』

『 私(・) は、貴方を見届けた』

『───問いは、比較を経て結論に至った。だから、だから………!』

あの時とは違う、晴れやかな歌声を響かせる「歌姫」の前へ突き出した右手に光が集まる。それと時を同じくして、地面に置かれていた金の鳥面が右手の光へと誘われるように浮遊する。

『───遠く、遠く、明日を 眼差(まなざ) す旅人。数多の世界を見つめる数多の眼。ならば貴方は「 渡り鳥(ミグラント) 」………』

仮面だ。ペストマスクのような嘴を持つ鳥の仮面、それが柔らかな光に包まれていく。

『───さぁ進んで、サンラク。そして、人ならざれど人の輝きを持つ貴女も……』

───ありがとう。

その言葉を以て歌の全てが終わる。楽器の伴奏もない、静かな独唱……だが孤独感は感じない不思議な体験だった。まるで何十人と一緒に聞いているような、そんな感覚だった。

「なんだサイナ、泣いてるぞ」

「こ、これは………そう、インテリジェンスな……」

「感情は本能の側じゃねーかな」

未だ淡く光る鳥面を拾い上げれば、それは仄かな暖かさを手に伝えてくる。

「随分と洒落たエンディングだが……達成の感触はまぁ、悪くないね」

からん、と空になったグラスが音を鳴らした気がした。

『遠く、問いかけは答えを得た』

『御来場、誠にありがとうございました』

『楽団一同、心よりの感謝を』

『ユニークシナリオEX「あなたに捧ぐ 旋律(ウタ) 」をクリアしました』

『称号【堂々終劇】を獲得しました』

『称号【正典制覇】を獲得しました』

『称号【渡り鳥の唄】を獲得しました』

『称号【エルマの太鼓判】を獲得しました』

『Loading………』

『称号【嵐帝謁見】を獲得しました』

『頭装備「 冥響正典(ユア・カノン) : 渡り鳥(ミグラント) 」を獲得しました』

『アイテム「バー『マスカレード』のキープグラス」を手に入れました』

『アイテム【世界の真理書「冥響編」:正典】を獲得しました』