軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

鏡面に響け、摩天より吼えろ 其の十六

「削れて擦り切れろオラァ!!」

一転攻勢なんて言葉もあるがそんなものでは間に合わない。常に攻勢、頭の先から足の爪先まで攻勢、一度でも別のものに転じてしまったら勝てない、それくらいの気合いを込めて「サンラク」への攻撃を一段と加速させていく。

斬る、突く、避ける、薙ぐ、撃つ、避ける、避ける、打つ、叩く、斬る、殴る、避ける、投げる。

ありとあらゆる攻撃手段を以って俺の似姿を叩きのめす。先手を取って動き、されど先にスキルを使わせて、後手で詰める。イニシアチブはテニスのラリーよりも激しく俺と「俺」の間を飛び交い続ける。何より厄介なのは飛び交うのは主導権だけじゃないってことか。

忖度ガードは向こうの動きも止まるが、こちらも絶対に崩さないガードに全力攻撃を叩きつけるようなものだ。斬るや撃つならまだマシだが、突きを弾かれるとこちらも決して短くないノックバックを受ける。これが厄介なのだ、撃つならまだいい……忖度ガードを突いてノックバックを受けると向こうのほうが先に復帰するのだ。

「だが!」

先手を取られる危険性を受け入れてでも攻める。何度だって攻めて攻めて攻める、目の前の「サンラク」は未だ健在なれどこれまでの猛攻は決して無駄なんかじゃない。

「───手を伸ばして、手を伸ばして、手を伸ばして。この手が届かぬ空の星も、天を擦る楼閣の上ならば……!!」

密度の高い俺と「俺」の戦闘も、もっと広い視野で見つめればあまりにも小さい。

高速道路と摩天楼の正面衝突。アスファルトの道路がコンクリートのビルを締め上げて砕き、鉄筋コンクリートのビルがハイウェイを支える柱を下から突き上げて砕く。

崩壊したオブジェクトが消失する仕様でなければとっくの昔に瓦礫で世界が埋まっていたかもしれないとすら思えてしまうほどの破壊と再生。

果たして二人の「エルマ」による歌合戦は、摩天楼領域が全体の七割を占拠するに至った。戦況優勢、忖度の数だけお前たちは追い詰められていく……!!

冥王の鏡盾を展開しつつ即収納。ウィンドウを操作し、アイテム収納が実行されるまでの間に攻撃を二度受け止め、逆の手に握る 海喰の剣(ブループレデター) で攻撃。忖度ガード、今度は何が飛んでくる? 標識か? 信号機か?

ブォォァァーーーーーン!!!

「デコトラぁ!!?」

いや待て待て待て! いかにシャンフロが地球に由来するSFだとしても時代が数百年、いや数千年くらいタイムスリップしてないか!? デコトラって、普通のトラックじゃなくて!? ていうか群れなんですけど! デコトラの大群なんですけど!!

よく見てみるとタイヤではなく何らかの力で 浮力(ホバー) 移動をしているらしく、見た目はどうであれ一応「エルマが夢見た光景」の一つであるらしい………デコトラが!?

「くぬァ!!」

ぼさっと立っているわけにもいかない。デコトラの大群に巻き込まれたならば俺の身体など容易に砕け散る。スキルを使って跳躍、四車線全てを埋める数十台のデコトラの一つ、その荷台に跳び上がった俺は同じく「サンラク」もまた荷台の上に飛んでくるのを視界に入れる………なるほど、ステージチェンジってわけかよ? やってくれるぜオルケストラ、 再現体(「サンラク」) はそのままでも本体は学習を反映させてくるってか。

これで俺は「回収者」を封じられた、幸いデコトラに踏み潰された武器はおそらく無いとは思うが……少なくとも遥か彼方に置いていかれた装備を回収するのは不可能だ。

「しかし、いよいよ追い詰められてきたようだな」

七割を占拠されども、逆に言えば三割を堅持していた「エルマ」側の領域が急速に縮小していく。サイナが追い詰めた? 違うね、奴は世界の展開方法を変えたんだ。より鋭く、一本の矢の如く。この四車線の道路とそれを支える柱、そしてその上を走る乗り物……たったこれだけにオルケストラという世界展開の力全てをつぎ込んでいる。その証拠に一匹の蛇と化した高速道路が凄まじい勢いでビルを粉砕しながらサーキットを作り上げていく。上に下にと進んでいくコースはもはや高速道路というよりジェットコースターだ、 無重律の恩寵(スペースチャージ) がなかったらとっくに落ちていた。

なんとなくオルケストラの「謎」は解けた、あとはどうやって答えに到達するかだが…………ハイウェイの構築に全てが注ぎ込まれた今、ここがクライマックスと考えていいのだろうか。いや、考えるのはやめよう……どんなゲームだって真理は一つ。

「来いよ、死ぬまで殴れば死ぬだろ」

『……………』

風が強い。電車の上でバトルって展開は映画でもゲームでもそう珍しいものではないが、それでもデコトラの群れを地面がわりに戦闘するのは初体験だ。ギラギラと輝くデコレーションは水晶巣崖を彷彿とさせるがあの土地にこんな突風は吹かねぇ。

互いに沈黙、人の脳と人工の 脳(AI) が互いに初手を決めようとする際に生じるわずかな静寂こそがこれだ。きっとここからそう長くは続かない、即ち短期決戦………そして俺と奴が使える手段は共通している。ここにきて自分自身とじゃんけんとはな。任せろ、グーパンチでパーとチョキを殴り倒すのは慣れている。

「いくぞオラァ!!」

『…………!!!!』

心の臓に結晶の短剣を突き立てる。紅い獣の頭蓋が被られる。すなわち最終決戦、灼骨砕身による刻傷無効化とそれに伴う防具解禁vs 暴血赤依骸冠(ブロード=クロゥネ) による暴走を是とした単純暴力!!

「サンラク」の全身を赤い粘性が覆いきるのと、俺がウィンドウ操作を完了したタイミングはほぼ同時、そして展開した武装は奇しくも同じ ハルバード(百足式8-0.5) ……!!

「【 超過機構(イクシードチャージ) 】!!」

賦活醒の効果により、互いの全身を巡る 百足の毒(ドーピング) 。総合スペックは奴が上………打ち合えば押し負ける。だがこの狭いフィールドで退き続ければ待っているのはミンチかシミか、だったらやるしかねぇだろ! 慣性に注意! 下手に飛び上がればそのまま落ちる!!