軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

鏡面に響け、摩天より吼えろ 其の二

「つまり「母性」ってのは心の在り方であり……母と子の双方が向かい合って初めて成立するんだ」

「うん」

「ただ子がオギャればいいってもんじゃねぇ、ただ母が愛を押し付ければいいってもんでもねぇ。子に対して母が真摯に向き合うように、子もまた母に対して真摯な対応をする……それがオギャるってことだ。そうだろうツチノコさん!!」

「そっすね」

「あんたの素振りからは女アバターで動き慣れてる感が伺える」

なんで分かるのぉ………?

「ネカマって感じじゃあなさそうだが……俺はネカマ相手でも向こうが真摯にバブみを見せるならオギャるに不足ないと考えている」

「そっかぁ……」

何故俺はゴツい赤ちゃんの人生哲学を聞かされているのだろう。何故俺だけが、と言う疑問に対しては考察厨二人が調べ物に夢中なので俺がエターナルゼロ……エタゼロの話し相手になったから、と答えることができるが。そもそも何故エタゼロは嬉々として自分の性癖を語っているんだ……そういえば鯖癌の時も性癖を聞かされてた気がするしスペクリの時は大体性癖と殴り合いしてたな………

「実際のところエタゼロはオギャれるなら相手の年齢とかは関係ないのかよ?」

「貴賎と優劣はねえが上下はある。女教師にオギャりてぇ……ガキの頃からそう思ってた」

「あっ、そういう………」

何故エタゼロがこんなに大ハッスルしていたのか理解してしまったが、これは是非考察厨共にも教えてやるべきだろう。オラっ! 未知が解明されたぞっ!! 赤ちゃんから逃げんな!!

……と叫べれば苦労はないのだが、生憎俺は心優しいのでせめてもの情けとしてここで食い止める事にしよう。

「おーい、なんか分かったのかよー」

「ああ、全容とは言い難いが概ねは」

マジか、俺はなんだこのモンスター喧嘩売ってんのかくらいにしか思ってなかった。当然の如く見たことないタイプのモンスターばかりだが、刻傷の効果は問題なく適用されているらしく、雑談に興じてこそいたがこれでも俺とエタゼロはさっきから結構戦っている。

「残り四十分、長くても十分で考察を頼む」

「五分とかからないよ、この第九階層はこれまでの階層で得られた知識の全てを利用して挑む。そういう仕組みをしている」

「と、言うと?」

「何体か見覚えのあるモンスターがいてね、恐らく九層以前の資料の中に記述のあったものだ」

……それはそれは。控えめに言ってもクソ厄介だな? あのクソほど積み上げられた設定の山……ライブラリの大半を情報量で階層に縫い付けたあそこから適切な情報を集めろと?

「そこで活用されるのがこれだ」

「………何それ」

「ブーケ・パズル 第三段階(ランクスリー) で購入可能になる端末をアップデートすることでベヒーモス内部に限って他階層の情報にアクセスできる。恐らく完全制覇で船外での使用が許可されると見ている」

ブーケ・パズル…………えー、あっ! あれか! あー思い出した。ベヒーモス版アンバージャックパスね、はいはいはい。リヴァイアサンと違って半分ただのダンジョンみたいな感じで攻略してたからさっぱり忘れてた!! どちらかというと猿へ天井に吊るしたバナナを見せて経過観察するようなリヴァイアサンと違ってこっちは単純にテストっぽいので船内通貨はマジでただの買い物にしか使わない。だがこういう使い方もあるってのは納得だ。

「で、 図鑑(カンペ) を見ながら調べた結論は?」

「さっぱり分からん」

「おいコラ」

「ははは、だが見えてくるものはある。この階層の環境は奇妙なほどに整いすぎている」

「一応人工だからじゃねーのか?」

「エターナルゼロ君の言う通りここは人工の自然環境だ、だが……なんというかな、モンスターの強さが意図的に序列つけられていると言うべきか」

意図的な強さの序列付け………人工的な自然環境…………

「つまり?」

「推測としては三つ。モンスターの全滅、生態系の変更、いずれかのモンスターが秘匿するクリアアイテムの取得………一つ目の可能性は低いと思うが、否定もしきれないね」

「んー……」

確かにモンスターの全滅はなさそうだ、一時間で終わるとも思えない。となれば三つ目とかか? 例えば……鳥型モンスターが温める卵の中に紛れ込んだクリアアイテムとか。いや、その場合下の層の情報が役に立たない。となれば……

「……二番目、か?」

「僕も同意見だよサンラク君、恐らくだけど……一番強いモンスターを倒して生態系の頂点に立つ、とかじゃないかな?」

思ってたこと全部言われたわ。おのれと流石の両方の感情が混ざったマーブルな視線を磐斎氏に向けておく。

「根拠を聞かせてもらえるかな?」

「やはり明確に序列の定められた環境ですね。仮に強さのランク付けをした場合、あまりにも綺麗な階段構造になっていますから……同じ強さのモンスターがいないと言うのはやはりそう定められたものだからでしょう」

ご丁寧に下階層で調べられるモンスターの情報は危険度別に分けられているらしく、先程俺とエタゼロが必死こいて倒した六本足のサイみたいなやつが上から三番目くらいに危険なモンスターらしい。その割にはすぐ倒れたけどなぁ。

「一時間以内に倒せるよう体力調整がされたモンスターの中から最も危険度の高いモンスターを見つけ出し、打倒する……成る程、最終試験としては妥当と言えるね。となると他の階層での行動も影響するのか……」

「考察中悪いが五分だ、要するに一番強そうなのを見つけ出せばいいんだろう?」

「その通り、加えて言えばこのベヒーモスで最も危険度の高いモンスター群にはある特徴がある」

「特徴?」

……

…………

………………

ベヒーモス最大の特徴、それはやはり生命の創造だ。

二号人類のみならず、端数を切っても3000年の間続けられた実験によって生み出されたモンスターの数々はもはやベヒーモスそのものが一つの環境を形成するに至っている。

基本的に人工で繁殖させて成体はインベントリア技術を応用したコールドスリープで保存されてるらしいが。控えめに言っても完全にスペースオペラ・ディストピアである。

まぁそこはこの際どうでもいい、「象牙」がマッドサイエンティストでもオギャる事はできるとエタゼロが自信満々に言ってたので大丈夫なんだろう。

問題は「象牙」作、ベヒーモス産モンスターの中でも「 危険度(レベル) 10」に指定されたモンスター達だ。

そいつらはあるモンスター達の性質を後天的に再現する為に行われた実験の産物にして、「彼ら」の性質を複合するというイカレポンチなコンセプトの中で産み落とされた 失敗作(・・・) 。

「曰く、無尽のゴルドゥニーネの増殖性質と夜襲のリュカオーンの複製性質を兼ね備えた無限畜産生物として生み出されたそうだ」

「頭おかしいよあの割烹着フェアリー……」

「それでもそこに母性があると俺は信じてるぜ」

泡沫と消しとけそんな期待、奴に甘えて次に目が覚めたら化け物に改造されてても知らんぞ俺は。

「失敗作ナンバー1、「無尽臓マザー・グース」だそうだ」

「腹を捌いたらあっさり死ぬかな」

「金のガチョウか、中々洒落たギャグだねサンラク君」

ウィンプとリュカオーンをどう合体事故させたらケツから大当たりしたパチンコみたいに卵がボロボロ出てくるガチョウになるんだよクソがーーーっ!!!