軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

爆ぜるようにランペイジ

ぬかった、体格を変えたんだから回避に必要な距離も増えるに決まっている。

竹熊の外殻は破壊されると破壊部位から竹槍を伸ばしてくる。正直あらゆる部位から竹が伸びたら身動き取れないんじゃないかと思ったが、ある程度伸びたところで腐るように根元から抜け落ちた竹を見て納得する。ああ……ム ダ毛(竹) 処理もばっちりと。

「サンラクさーん! 魚が! 魚が来てます!!」

「はやくねぇ?!!」

いや、さっきまで聞こえていた爆発音が聞こえなくなったってことはつまりそういうことなのか? 竹熊との戦闘音がうるさすぎてよく分からない、生きていると信じよう。

ただ問題は近づいてきたウナギトカゲだ、後衛が処理したとしても一匹も漏らさずってのは無理な話だろう。つまり前衛もいくらかは 爆泳魚(スウィマイン) を警戒しないといけないって事だ。

「露骨にタフネス上げてそうな見た目通りかよ……っと! 【 発射せよ(Firing-up) 】!!」

流石に二度は喰らわない、今度はケツから伸びた竹槍を回避しながら水晶弾を地面に撃ち込む。流石に下から持ち上げるのは無理だろうから……ここだ。

「【 成長せよ(growing-up) 】!!」

振動を受けた水晶弾が萌芽、水晶の柱へと急速成長して竹熊の後ろ足……まさしく突進のために前に進まんとするその瞬間に水晶柱がその右後脚に 引っかかる(・・・・・) 。

つまり四足歩行であってもなりふり構わない突進中に足を掬われれば当然すっ転ぶ、可哀想に……丁度無防備な頭をフルスイング直前のレイ氏に差し出すような形になっている。

「はぁあっ!!」

裂帛の気合と共に鉄鞭が竹熊の側頭部に叩きつけられる。多分 俺(サンラク) 三人分くらいなら一撃で粉砕できそうなダメージが兜のような外殻に覆われた頭部が弾け飛ばなかったのは熊という生物骨格、筋肉の発達が頑強な首を作り上げていたからだろう。

ミシミシと骨が軋みつつも首は耐えきった音と、ベキバキと頭部外殻が耐えきれずに割れる音が同時に響く。

竹熊の行動はもはや怒り以外の感情を見つける方が難しい、外殻が剥げてほとんどただの熊な部分が露出したドミネイト・グリズリーはその怒りと 憎悪(ヘイト) のままに俺とレイ氏を狙い続ける。

だが俺は奴の射程範囲に留まり続けるようなヘマはしていないし、レイ氏は男アバターとしての頑強さと体格を失った代わりに得たしなやかさで爪牙をいなし、弾き、時に受け止め切る。

「ていうか他の面子は!?」

「現着したよ」

「うわいた」

いつどこから現れたのか、バフを弾く俺ではなくレイ氏に強化支援をしているキョージュの姿に一瞬気圧されるものの、(仮にキョージュ班と呼ぶが)キョージュ班にいた前衛ジョブ二人が戦闘に参加したことで俺とレイ氏の負担が単純計算で半減する……いや違うな、【ライブラリ】だって普通に戦闘ジョブの奴もいるか。

後方から飛んできた炎の鏃が竹熊の肌に命中して弾けたのを見逃さず、ヒット箇所に更なる攻撃を叩き込んでいく。単純計算で十人パーティ(前衛四人)による袋叩きだ、倒すのも時間の問題だと思っていたのだが……

ぐむっ

「ぐむっ?」

おっと失礼、下にいたのねウナギトカゲ君。いや、いやいやいや、謝るからそんなカッとならなくても……あ、なりますねこれ。

「っぶねぇえ!!」

早速自爆した爆泳魚の爆発からなんとか逃れつつ、こちらにヘイトが向いていない事を確認して反射的に発動しそうになっていた【ウツロウミカガミ】をキャンセル。

炸裂グリンピース姉貴が狩り漏らしたのか? それとも最初からここにいたのか? あるいは…… 浮上してきたのか(・・・・・・・・) ?

「これ下から浮いてきてるんじゃないのか!?」

「前例とかないから断言もできないが否定もできないね! というか僕としてはドミネイト・グリズリーの「口」を見るに嫌な予感しかしない! 爆泳魚(スウィマイン) をグリズリーに近づけないようにしてくれ!!」

口? なるほど確かに竹熊の口腔は凶悪だ、何せ口の内側まで外殻と同質のもので覆われている。生物的にどうなんだそれと思わなくもないがこれまでの戦闘を見るにその動きはトラバサミ……完全獣型ロボットの口の動きに近いのだろう。まぁそもそもゲームだと言ったらそれまでだが。

はてそれの何が不味いのか……おっとウナギトカゲ。

「ふんっ」

「あっ」

「あっ」

あっ、横から飛び跳ねてきたのを蹴り飛ばしたら丁度いい感じに竹熊の方に……おお、ナイスキャッチ。そしてそのまま?

「私ああいうの見たことあるわよ、木彫りの熊で」

鮭ヘッドに頭装備変更。

「我々鮭の者と致しましては熊の主食がウナギというのは受け入れ難いものであり……」

「んぶふっ!!」

はい勝ち、一発ネタは鮮度と速度が命だ……と、まぁモルドはクソ雑魚過ぎて参考にならないので己のギャグセンスがまだまだ一線級である事を炸裂グリンピース姉貴で検証しつつ問題はウナギ(トカゲ)なんて上等なものを踊り食いしている竹熊だ。

トカゲウナギをガツガツ捕食し出した竹熊に対してプレイヤー達は距離をとって警戒する。こんな戦闘中……それも竹熊側が不利な今、反撃を放棄してまで飯を食い始めるのがただ単純に食い意地が張っているからとは考えづらい。

ゲーマーならこう考える、これは第二形態前のキャンセルできないタイプのモーションなのでは……と。

そしてその予測は爆泳魚の自爆すらをも咀嚼し嚥下したドミネイト・グリズリーが全身の外殻を「内側から」爆ぜるように砕いた竹の槍を 射出(・・) した事で確信へと変わった。

「何!? 体内で爆発を起こして遠距離攻撃化!!?」

「げぇーっ! やばい死ぬ死ぬ死ぬ!!」

「てか今一人死んだぞ!!」

「ツチノコさん戦犯案件では???」

「棒立ちしてる方がおかしいのではーー???」

「わ、悪びれねぇ! この人悪びれねぇ!!」

いや一応責任は感じてますよ、だからちょっと本気を出す。

取り出しましたは藍色の聖杯、指定パラメータはSTRとLUC! 幸運貯金はこういう時に引き落とすに限る、いざや参らんパワー型俺!!

「炸裂グリンピース姉貴代われっ! キル数を稼ぎたい!!」

「いいけど物理ジョブで対処できるの!?」

「こうするんだよ、【 超過機構(イクシードチャージ) 】!!」

起動し(起き) ろ 百足式(ムカデシキ) 8-0.5(タウゼント) 、十秒でキル数を稼ぎ切れ!!