軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

極めて自然に不自然な箱庭の命

「まず大前提として、僕らの目的はこの「カンムリタケノコ」を発見、確保する事だ……では何故このタケノコは「カンムリ」などと名付けられたのだろう?」

「え、そこからなの?」

「そうだよ炸裂グリンピースさん、こういうのは横着せずに端から考察した方が案外近道だったりするものだよ」

何故カンムリタケノコと名付けられたのか、か……。

一応振動で感知されるのでは、という懸念からストーンヘンジよろしく乱立していた岩の上に登って作戦会議という名の青空教室の中でティーチャー磐斎の指導の下、緊張感があるのかないのか分からない考察タイムが始まる。

「カンムリ、変な当て字とかではない限りは「王冠」を指していると考えていいはず、では冠ということは……」

「誰かが被っているって事ですか?」

「正解だ、秋津茜さん。多分キョージュも同じ結論に達したから画像を要求したんだろうね……ほらこれ、拡大されてるから分かりづらいけど背景と比べると明らかに妙なんだよ」

……あ、生え方が変なのか。黒光りするタケノコにフォーカスが合わせられてるから意識が逸らされている、よくよく見れば地面から生えてるわけじゃないぞこれ。 何か(・・) にタケノコが生えている向こうに地面が見えている。

「十中八九、これはモンスタードロップのアイテムだ。シャンフロのモンスターはどれだけ突飛なモンスターでも「根拠」がある、とウチの生物学系の人が言ってたから爆泳魚ではないだろうね……何かボスモンスターがいる可能性は高い」

「あのウナギトカゲ共は粘液で苔とか落ち葉を纏ってはいたけど生えてたわけじゃないしな……」

「人によってはブチ切れそうなベヒーモスだからね、意外なモンスターの変種って事もあり得そうだ」

この階層では「象牙」は呼んでも出てこない。恐らく最初に出現した場所までタケノコを持って来いという事だろう。「勇魚」なら呼んだら来そうな気配があるけど。

ではカンムリタケノコを持つモンスターを探すのかと言えばそうではないらしく、磐斎氏は実に【ライブラリ】らしく次なる考察を始めた。

「皆、時間的に不味いようならログアウトしても構わないからね?」

特に脱落者は無し、問題なしという事で「爆泳魚は何をトリガーとして向かってくるのか」という考察が始まる。

「普通に妨害のためじゃないの?」

「あーいや、そっちじゃなくてどうやって知覚してるのか、かな」

「それじゃあ試しに」

ファーストコンタクトが団体行動なので足音で気づいたのかと思ったが、現在結構な大声で話しているにも関わらず爆泳魚が俺達に気付く様子はない。

では声とかでは反応せず、あくまでも足音のみの反応なのか? と岩から地面に降りてタップダンスしてみたがなんと反応なし。流石に手が届くような距離まで近づいたのにスルーされるとは思わなかった。

「音ではなく、距離でもない……」

「刻傷で逃げたって可能性は? これは俺以下のレベルのモンスターが逃げる効果がある」

「いや違うと思うよ、それならそもそも近づかないし平常状態で泳がないからね。だとすると………いや、爆泳魚もそうだがベヒーモスのモンスターは人工の産物だ。あるいは……」

磐斎氏は何かに気づいたらしい、俺はあのウナギトカゲ共が分類的に魚類なのか爬虫類なのかが気になっているだけなので脳細胞の出来でマウントされている気分だ。

秋津茜は暇になのか(さっきの敵対条件検証で皆危険を感じて俺から離脱した)エムルを膝の上に乗せて何か話している。レイ氏は鋭い眼差しで俺を見ていたり、地面に視線を流している。流石だレイ氏、その目は一流のハンターが如く……このゲームに順応した廃人らしい眼差しだ。

「サンラク君、物は試したが君の持っている装備の中でも破壊力の高いものを装備してみてくれないか?」

「了解ッス」

こいつら多分一応魚類なんだろ? もしかして水棲判定残ってたりしないかな? というわけでこちら、 海喰の剣(ブループレデター) とてめーら全員蒲焼きにしてやるという決意を込めてアラドヴァル・リビルドを……

ガサガサガサガサガサガサ!!!

「おぉぉお!!?」

「サンラク君っ!!!」

「やっぱりか! 爆泳魚のヘイト条件は「対象の危険度」だ!!」

「解説は後で聞く! 大丈夫レイ氏、ヘイトが集まったならこっちのもんだ……!!」

致命秘奥【ウツロウミカガミ】起動! 虚影に食いつけウナギトカゲ!!

跳躍と同時、俺のいた場所に残った残像に爆泳魚達が一目散に飛び込む。だがそれは幻影に過ぎない、本体たる俺はヘイトを全て囮に押し付けた上で武器を収納しながら岩の上に退避しているので、奴らはそこにいる気がするのに何もない空間をうごうごと這いずり回ることしかできない。

暫くして、脅威が消え去ったと認識したのか爆泳魚達は一匹また一匹と土の中に潜り、泳ぎ去っていった……さて。

「じゃあ先生、解説をお願いします」

「家庭教師ならともかく壇上で教鞭を取れるほど立派な人間じゃないよ。気づいた理由としては三層のモンスター達を見ていたからだね」

曰く、SF-Zooというモンスターの生態に魅せられたクランが結成される程度にはリアリティ溢れるモンスターのAIであるが、三層で戦ったマクスウェルは異形であることを差し引いても「頭が良過ぎる」事が気になっていたらしい。

「なんというか、制限を課せられた人間が操作しているような違和感と言えば分かるかな」

「必死だったからそんなところまで気にしてなかったわよ」

「確かに、動きが単調だった……というより、距離を詰めるために移動する以外で殆ど動いてなかった、気がします……」

「ごめんなさい! 気にしてませんでした!!」

「いやいや、責めてないですよ」

俺の場合、マクスウェルとは殆ど戦ってないので分からない。だが代わりにニュートン君とは結構バチバチにやり合ったので思い起こす事は容易い。

そもそも生物というかパスタの集合体みたいな感じだったが、言われてみれば触手の使い方が妙だったな。毎回毎回律儀に触手を束ねて……てっきりそういう 習性(モーション) なのかと思っていたが。

「簡単に言うと、爆泳魚も含めてこのベヒーモスに出現するモンスターは思考ルーチンが人間に近い……というより、基準が人間に準拠しているのかな? だから武装していないサンラク君は脅威が無いあるいは無視して構わないものと処理したし、」

「武装した俺に対しては脅威の塊って事で襲いかかってきた、と」

辻褄は合っている。最初、十五人で固まっていた時に囲まれたのは歩いてるプレイヤーの殆どが武装していたからだ。少なくとも素手の十五人と刃物鈍器銃火器を装備した十五人じゃどちらがより危険かは言うまでもない。

まぁこれが十五人のイアイフィスト流使いであったならば話は変わってくるがマイナー流派なので十五人も集まる事はないだろう……

「つまり何も装備していなければ狙われないって事ですか?」

「逆だぞ秋津茜」

思ったよりも厄介な制限だ。

もしこの推測が正しいとしたら、プレイヤー達は素手でカンムリタケノコを入手するか……あるいはいつ襲ってくるかも分からない爆弾を警戒しながら武器を振るかのどちらかを選ばないといけない。