軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

手練手管を断ち、咀嚼は瞬いて

何が面白いって殺戮の魔人本体はのっぺらぼうに顔の横まで広がる牙の生えた口がある造形なんだけど、その口をそのまんまに人間で言うなら鼻から上に人の顔を浮かべるから上顎の動きで人の顔がカックンカックン動くことなんだよな。

「ちょっ、もうさぁ! 緊張感が抜けてくじゃんもぉーっ!!」

「喰われたらお前もあれの仲間入りだぞ!!」

「いやいや、私のパーフェクトフェイスはこのパーフェクトボディあってのものだから」

「魔人も恵体ではあるが」

「モストマスキュラーする系じゃん! はいそこ成仏しなさい!!」

「ヌグォォオァァァァァァ……」

弟の顔が浮かんでる状態でも遠慮容赦無く、いやむしろ弟の顔が浮かんでる時だけ遠慮容赦が無くなっているペンシルゴンの三段突きにオルスロットフェイスの魔人が怯みを見せる。

だが今の魔人は更に一人喰って腕を六本にしたアシュラナイト状態だ。近距離だと喰われる前に斬り刻まれるので殆どのプレイヤーは遠距離攻撃で様子見……といったところか。

近距離で戦っているのは俺やペンシルゴン、そして異変を察知してやってきたRPAの高レベルプレイヤー達だ。

「同志! これ負けイベとかじゃないよね!?」

「ここで負けたらこれまでの努力がサードレマごと全部パァだぞーっ! 踏ん張れ頑張れーっ!!」

実際殺戮の魔人は強敵だ、タフネスというのもあるが何よりスーパーアーマーを搭載しているのが厄介なのだ。六本腕の手数がロクに怯まないのだ、油断が死に直結している。

「サンラクサン! 攻撃するですわ!!」

「射撃:退避を勧告します」

いいね、下手なプレイヤーより優秀だよシャンフロのAIってやつは。

【ウツロウミカガミ】で 囮(ヘイト) を設置し、魔人がそれに引っかかったところでエムルの魔法とサイナの射撃が炸裂する。ロボ娘たるサイナと兎オブ兎なエムルの一挙一動に観客と化したプレイヤー達(主に遠距離手段を持たない近接職ルーキー達)は大盛り上がりだ。

「Slaughteeeeeeeeeeeeeeeeer!!!」

お、魔人本体が叫んだ。効いてるのか? いや、体幹は揺らいでねぇ……どうする? ハイリスク行っとくか?

「さっきから刺しまくってるけどこれあれだな、壊毒属性以外はレジストされてるな」

「麻痺も毒も火傷も凍傷もレジストとは肉のくせに生意気な……! ヘイそこらの近接職! 壊毒属性の武器を持ってれば今ならなんと戦闘に貢献できるよーっ!!」

返答は無し、中には「壊毒って毒属性と何が違うの?」という声まで聞こえてくる。くっ、その初々しさが今は憎い……!!

「分かったぞ同志! 多分腕だけ状態異常が通るんだこれ!! 右真ん中の腕が麻痺った!!!」

「そーゆーのってもっとデカいボスでやる攻略法じゃないのォ!? 全員状態異常武器を担げーっ!! 胴体へのアタックは私達でやる!!」

「あれ俺もかよ」

「火力持ちなんだから逃がさないよサンラクくぅーん!!」

上等、こっちもスキル鍛える為にも前線を張れるなら突っ張っていくぜ。

連結スキルこそないが、代わりに連結を解除した事で素材にした大量のスキルが手元にある!!

鞍馬天秘伝、ヘルメスブート、その他諸々連続起動!!

「臨界まで走らなくても小回りという武器があるのさ……!!」

あえてアクセサリーでの速度補強は使わない、六本腕の乱舞を避ける為には大雑把な動きでは対応しきれないからだ。

両手に握った 惨毒蜂双針(ヴェノ・スティンガー) で狙うはその六本腕、どれだけ異形になったとしても素体が人間型だから可動域という絶対的限界がある。

「阿修羅的エネミーなんざ腐るほど戦ってきたんだよ……! そして知ってんだよ、その攻略法もなぁ!!」

攻撃タイミングは相手の攻撃に合わせる、多腕のボスは調整をミスると無限俺のターンをかましてくるクソボスになりかねない……そして俺はそんなクソ調整の多腕ボスと数多く戦ってきた。

だから分かる、この魔人も同じ手合いだ。それも神ゲー補正で針の穴みたいなチャンスだけがあるタイプ……だが逆にこう言ってやろう、針の穴でもチャンスがあるとかヌルゲーか? となぁ!!

奴の攻撃は吸収したプレイヤーの性質を引き継ぐ、喰われたのは騎士のオルスロット君、なんちゃって魔法剣士君、ナイフ使いちゃん、大剣使い君、刀使いちゃん、そして最後に喰われた刀使い君だ……いや被ってるし。

だが結果として今殺戮の魔人はナイフ、大剣、長剣、魔力ブレード、そして日本刀二刀流で暴れまわっている。そして当然それらをスイングする速度、攻撃範囲には違いが出てくる……!!

位置取りと、タイミング。誘い出せ、振るわせろ、追い詰められながら追い詰めろ。狙うは大剣からナイフorナイフから大剣の二連続攻撃……!!

「今の俺はいつも以上に硬い! いわばディフェンスフォルム……!!」

黒曜纏の石外套をつけてるお陰でカスダメに対して強気に出る事ができる、他プレイヤーの攻撃を盾にして攻撃を加えつつ稼いだヘイトで他プレイヤーに攻撃チャンスを提供……来た、大剣攻撃!

真上から若干斜めに俺を両断せんとする攻撃を身体を捻って回避、そして地面に叩きつけられた骨の大剣を踏みつけ動きを封じれば……ほら来た、ポン刀を振るには近すぎるからナイフで迎撃するしかないよなぁ? 百閃の剣(ヘカトン・スラッシュ) 起動、これが禁断の蓄積系状態異常攻撃と多段ヒット化のコンビネーション……っ!!

「獲ったァ!!」

壊毒は破壊属性を付与する蓄積系の毒状態、そして破壊属性とはシャンフロにおいて唯一物質の崩壊を可能とする力だ。

そして、状態異常の集中攻撃と少なくない回数の破壊属性を受け続ければ……貰ったぞナイフ腕、まずは一本!!

「アッ、ジョウブツスル……」

「笑わせてくるのやめろォ!!」

「イヤコレマジデリスポーンスルカンジ……オホォ」

ど、どうやら腕を切り落とすことで喰われたプレイヤーが解放されると見て良いのだろうか……ダメだ、喰われた連中が暇だからってこっちを笑わせる方針に切り替えてるのが予想外に強敵だ。モルドなら八回くらい死んでいただろう。

それに高レベルプレイヤー達の集中攻撃を受け続けた事で殺戮の魔人そのものが消耗しているように見える……如何に強敵とはいえ無敵ではない、このまま押し込んで詰めていけば勝てる!!

だが、四本目の腕を破壊して四人目の成仏が終わった時……殺戮の魔人は動いた。

ぎょろり、と目玉が俺を見ていた。だがそれは浮かび上がった何者かの顔の視線ではなく……魔人の口、その奥……喉から迫り上がるようにして現れた「目玉」が俺を見ているのだ。

「何か……地雷踏んだ?」

【殺害宣言を受けました!】

「ああ……成る程」

お前は絶対殺す、と。