軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

鳴動、叫びは歓喜を帯びて

「うおっ!」

「何何何!?」

「メジェ…っ」

失礼な、俺はサードレマの都市伝説白布お化けだ。

サードレマの家屋、その屋根を飛び跳ねるように走っていると下の方からガヤガヤとそんな声が聞こえてくる。だが生憎立ち止まってファンサービスしている暇はない。

とういのも、あの公女サマ意外と速い! 嘘だろ仮にも非戦闘NPCがもう追いついてくるなんて事あるか? 流石に加速スキルは使ってないがそれでも結構本気で走ってるぞ!?

むしろ公女サマを追うオルスロット君達が置いていかれそうなんだが、今公女サマに捕捉されても困る。サードレマの城に続く大通りに誘導はできたが城の直前まではまだ距離がある……だがこれ以上距離を離すとオルスロット君達を見失う。

「なんで逃げる側が追う側を見失う心配してるんだか……」

エムルは上手くやったか? MP回復アイテムを持たせたし途中で 解ける(・・・) 事はないと信じたいが……多分そろそろ到着してもおかしくはないはず。

だったらもういっそここら辺で追い込むか?

サードレマは大公の住まう城郭エリア、上級階層が住む上層エリア、そして庶民の住む下層エリアの三層がホールケーキのように重なった構造になっている。

当初の計画では城郭エリア、あるいは上層まで誘導する手筈だったが改めて考えてみればバリバリ敵陣営なオルスロット君達が上層に上がれるとは考えづらい。

「となれば決戦の場は下層と上層を繋ぐ大門前……!!」

ほーら、俺はここだぞ空中3回転半捻りーっ!!

……

…………

………………

サードレマ南大門、上層に上がれるのはサードレマ大公からの許可証を持つプレイヤーだけだ。つまり許可証を持たない、あるいは持つつもりのないプレイヤーにとってサードレマの大門はランドマーク以上の意味を持たない。

街の喧騒と比べると奇妙な空白にも思えるまばらな人しかいない大門の前に空から白い布を被った何かが落ちてくる。まぁ俺だ。

「さて……」

「まぁ、まぁまぁまぁ! 白布お化けさんはやはり実在しましたのねぇ!! そういう妖精さんなのでしょうか? 言葉は分かりますか〜?」

「ワカルヨ、シロヌノサン、コトバシャベレル(裏声)」

「まぁ!!」

「デモダメダヨ、キョウノシロヌノサンハ、オシゴト。ダカラ……センシュコウタイ(裏声)」

夢は夢のままであった方がいい、はいインベントリアとアイテムオブジェクトの性質を駆使した 消失マジック(・・・・・・) !!

祭衣・打倒(フェスタ・メ) 者の長頭巾(ジェ・カフィエ) を頭から外した上でオブジェクトとしてその場に置き、インベントリアで格納空間に転移すればその場に白布だけが残るように見えるはず。

そして改めて装備を整えて……

「はい推参」

「あら〜? 白布さんが別の方になってしまいました」

「白布さんの魔法で場所を入れ替えたんだ。白布さんは都市伝説的神秘存在だからな」

「よく分からないですけど成る程ー」

よく分からないなら成るも程も無いだろ……まぁいいや、本命は公女じゃなくて……

「よっ」

「お前は……サンラク!!」

「現王政の手先が慰安旅行か? それにしたってサードレマが旅行先ってのは無用心が過ぎるぜ」

「どこで嗅ぎつけやがった……! それともあいつの指示か……!?」

「あーいや、街で偶然見つけたから」

かくん、とオルスロット君の身体から一瞬力が抜けるが、そもそも頭の上にデカデカと名前が表示される世界でスパイ活動とかできるわけないだろっていう……

「だがお前達の目的は分かっている、それは……」

「───そう、それは公女殿下の誘拐に他ならない! なんてふてぇ野郎だ、我が弟ながら情けないぞー??」

……この声は。

「案の定上層前の門で引っ掛かったねぇサンラク君、エムルちゃんから話を聞いた時点でそんな気はしてたけど……なにその露出狂ポンパドール」

「時代の最先端だぞ」

「そんな時代が来るなら私が未来を破壊するって……さぁーて? 阿修羅会の残党様が雁首揃えてなんの用かなぁ〜?」

ギゴゴ……と大門が開き、人間一人なら余裕で通れる程の隙間から現れたのは心なしか最後に会った時よりも装備が豪華になっている気がする一人の女。

そう、奴こそは札付きのバウンティからその政治的手腕と「聖女ちゃんと知り合いみたいなもんだから罪の告解は終わらせている!!」と自信満々に顔を見た程度でしかない聖女ちゃんの威光でサードレマの相談役にまで上り詰めた稀代の怪物アーサー・ペンシルゴン!!

いや俺と友好関係があるから実質聖女ちゃんともマブダチ、って理論でなんでNPCを納得させられるんだお前は。

「姉貴……!!」

「言っとくけどあんたらの情報が来た時点でアレックス派の工作員をとっ捕まえに人員派遣してるから」

初手王手やめろ、もうこの時点でオルスロット君の選択肢はここで死ぬか逃げて死ぬかの二択じゃねーか。絶対あのRPAとかいう高レベルプレイヤー工作員がサードレマにも潜伏してるんだろ、あまりにも怖いわ。

「くっ、また邪魔をするのか……!!」

「人聞き悪いなー。私はサードレマ陣営、あんたは現王政陣営、別に所属に口は出さないけど乗り込んでくるなら叩くわよ」

ひゅひゅん! と空を斬る聖槍の穂先がオルスロット君へと突きつけられ、オルスロット君達は咄嗟に剣を抜いて構える。

「三対二だぜ、勝てるのかよ?」

「サンラク君レベルは?」

「148、でもちょっとスキル鍛えてる最中だからガチ構築ではないけど……ヤるなら殺るぜ? PKになりたくないから半殺しで許そう」

「開戦前だけど殺したらPK判定つくのか試したいんだけどなー」

「自分でやれや」

オルスロット君さぁ、どうやってやったのかレベルキャップは解放してるようだが、レベル110はちょっとナメすぎてないか? 装備もなんというかエンドコンテンツ特有の雰囲気を感じられないし。

装備? 装備……んー? なんでまた記憶の中の何かに引っかかるんだ? オルスロット君関連で何か忘れてることなんてないはずだが。

「さぁどうする愚弟、尻尾巻いて逃げるなら刺客を差し向けるだけで許してやろう! 姉としてのせめての慈悲だーっ!」

「ノリノリじゃん、俺も剣ペロペロした方がいい?」

「私の格が下がるからやめなさい、ていうか今時そんなこってこてのシリアルキラーのRPとかあると思う?」

あるかもしれないだろ、キヒヒとか笑う感じの殺人鬼とか……殺人鬼、シリアルキラー……装備……あ、そうだ。

「あーっ! 思い出した」

「なにさサンラク君」

「いやオルスロット君に渡したいものがあってさ」

「俺に?」

いやーそうそう、俺はクリーンなプレイスタイルだから使い道もないし、処分しようにもビィラックには拒否られるしでインベントリアの肥やしになってたんだ。

容量無限だから放っておいてもいいかなとは思ってたがあの剣、多分勇者武器とかレイ氏の大剣みたいなタイプの武器だしどうせならここで返してしまおう。元々の持ち主はオルスロット君だしな。

「はい、 これ(・・) 返すよ」

「は?」

「ちょっ!!!?!?」

なにをそんな驚くんだ、お前は身内に外道ムーブかまし過ぎなんだよ。俺も妹がいる身だからな、弟と妹ではまた接し方も変わるのだろうがあのペンシルゴンの弟というだけで俺は優しくしたいのだ。人生大変そうだしな……

メニュー欄を操作して所有権を放棄、地面に捨てる代わりにオルスロット君へとそれ…… 殺戮者の魔剣(スローターブリンガー) を放り投げる。

「ちょ、待っ、サンラク君あれ手に入れたの いつ頃(・・・) !?」

「は? ウェザエモン戦直後だよ」

「三ヶ月以上……!?」

何の話を……うん? なにか剣が蠢いて……おや、肉塊から手が生えたね、脚も。ワオ、なんてマッシブな腹筋……いや、

「何あれ」

「殺戮者の魔剣のペナルティ! あの剣でPKしてないほど強くなる 殺戮の魔人(デモン・スローター) !! なんでそんななるまで放っておいたの!!?」

「知るか! そういう大事な事はテキストに書け!!」

明らかに何かイベントに入ったスローモーションの中で、額から剣の部分を角のように生やした赤黒い肉の魔人と化した魔剣が勢いそのままにオルスロット君へと突っ込む。

そして激突するその瞬間、ぐばぁと大きく開かれたのは……え、あれもしかして肋骨? 貪る大赤依式捕食?

「待っ」

「あ、弟が喰われた」

「喰われるとどうなる?」

「いや人型になった状態とか見た事ないから分からないって!!」

オルスロット君を音で表現するなら「ぐぼっ」とか「ごぶりゅ」みたいな感じで胴体に取り込んだ魔剣の魔人がその異形の口を開く。

「Slaaaaaaaaaaaaaaaughteeeeeeeeeeeeeeeeerrrrr!!!」

おぉ……随分と自己主張が激しい。