軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

巨鯨に呑まれど疾れ白波

サイガ-0:本当に、本当にごめんなさい!

サンラク:いや気にしないで本当、元々夜からの誘いだったし今日はちょっとイレギュラーすぎた

サイガ-0:姉を、どうしても説得できなくて……夜から、夜からなら必ず参加します!!

サンラク:それは構わないけど、もしかしたら結構先に進んでるかもしれないし

サイガ-0:追いつきます

サンラク:え?

サイガ-0:追いつきます

サンラク:あ、はい

お前がどれだけ先に行こうと後発スタートで追いついて見せよう。そんな恐るべき廃人宣言を聞いた事実に震えつつも、この震えが畏怖なのか畏敬なのか分からないままに俺とサバイバアルは第二殻層へと立っていた。

『お久しぶりです! 随分と長い通学路でしたね?』

「通学路に落ちてた音楽プレーヤーにボッコボコにされてな」

『音楽プレーヤー……?』

「それを調べに来たんだ、覚悟しとけ勇魚。明日の朝日が昇る頃にはこのリヴァイアサンは完全攻略されている」

その言葉に、リヴァイアサンの全権を握る鯨の女は高速通信を自慢としているキャラとしては信じられないほど長い時間、沈黙し……そして、

『───それはそれは、とても楽しみですね』

愛想や喜びではない、嘲りと驚きと期待……AIキャラが浮かべるとは到底思えないような感情のこもった笑みを浮かべた。

だがその笑顔も一瞬でいつもの愛想笑いに戻ると、勇魚はこのエリアの解説を始めた。一応おさらいとしてそれを聞いていると、肩をちょんちょんと指でつつかれる。

「あんだよ」

「オメーどういう手品を使ったんだよ?勇魚の好感度バチくそ高けぇじゃねーか」

「いや今思いっきり馬鹿にされたんだが?」

「ギャルゲー畑の連中がありとあらゆる手段で好感度を変動させようとしても崩れなかった鉄の愛想笑いが変わったって時点でやべぇよ」

「さぁ? 一番最初の入場者だからとかじゃねーの?」

『聞いてます?』

「もうばっちり」

第二殻層「教道」は元々宇宙を漂流していた時代に神代人がタンパク質を得るために作った上から下までオール人工の畜産設備を勇魚が殻層となるまで拡張したものだ。

どうにも緻密なことだが神代の頃は牛やら豚やらをクローンで増やすと色々と問題があったらしく、ここに登場するモンスターは遺伝子培養で家畜としての性能に特化した人工生命体……否、AIによって統括された 脳(あたま) と生殖器、個性を持たない骨と筋繊維と臓器の塊、通称「お肉」だ。

「エグない?」

『当時の倫理と、リヴァイアサン全体の食文化への熱意をすり合わせた結果がこれなんですよ? ベヒーモスなんかじゃ三食味気ない人工ペーストだったと当時のデータベースに恨み節の籠もったデータが残っています』

「ちなみにAI制御ってことは実質お前との直接対決か?」

『んー……あくまでも私が統括する内の一部所、という構成ですので厳密に私が操作していると言っていいものか……人間的に言うなら臓器の運動に近いので』

いちいち意識して動かしてねぇよ、ってことかい。なら……早速「ズル」をさせて貰おうか。

「サバイバアル、まずはさっさと50000スコア貯めよう」

「おうよ」

『おや? もう既にご存知?』

「人間の強みは星の果てにも声が届く通信技術だぜ? 先達の声はちゃんと届いてるのさ」

『ふふ、素晴らしい』

流石に第一殻層よりはひと回り小さい第二殻層ではあるがそれでも広大だ。第一殻層では修復ゴーレムに乗ることで大幅な距離短縮ができたように、ここにも「足」が存在する。とりあえずはその為にお肉退治だ。

『ビーフオマージュ・レッドボディですね、収穫したお肉は安全地帯で調理可能ですよ』

「サバイバアル、美食舌の称号は?」

「無論持ってるぜぇ!」

そうか、ならゲーム内で焼肉だっっ!!!

脳みそがない、をマジで頭がないと定義したのか首無しの真っ赤な牛の胴体が肩から生えた角をギラリと輝かせてこちらへと突進してくる。家畜お肉に角いります!? 無関係なフリしておもっくそ殺意実装済みじょねーか!!

真っ赤な異形の生物というとどうしても アレ(・・) を思い出すがこっちは単なる赤身肉の塊なので比べるまでもない。赤身だけで動いてるのめちゃくちゃ怖いんだが。

「っしゃ! 来いやァ!!」

轟、と女性の見た目からは掛け離れたドスの効いた大声を上げたサバイバアルが振りかぶったのは……ハルバード、じゃないなあれは……

「方天戟だっけか」

「カテゴリは槍だけどなぁ!!」

ちなみにハルバードはカテゴリ:斧槍である。ややこしいな、だがハルバードが「突ける斧」であるならあちらは「叩き斬る槍」だ。そしてサバイバアルのステータスは……タフネスと火力にポイントを注ぎ込んだ最前線アタッカーだ。

さらに言えば対人に比重が置かれているとはいえ、逆に言えば対人で勝ち続ける程にステータスを鍛えているわけで。スキル、装備、そしてなによりプレイヤースキルによって研ぎ澄まされたバトルセンスが目の前の光景を実現させた。

「頭蓋が無ぇなら刺しやすいんだよなぁ!!」

方天戟の穂先が赤身肉の首部分に突き刺さり、そして複数のエフェクトを纏った女がテコの原理を利用した串刺し一本背負いによって牛サイズの巨体が宙を舞った。

「戦王すごくね?」

「メインで使ってる武器の習熟度は常にMAXにしてっからな、補正が入んだよ」

戦士系派生最上位職業「戦王」はいちカテゴリのみであればそれに特化した最上位職業に劣るが、前衛武器に関する圧倒的な武器適性の数々と習熟の度合いによって多くの特典を得ることが出来る職業だ。

本来であれば「 武威解放(ウェポンドライブ) 」という特殊なスキルを使えるらしいのだが、生憎こいつは仇討人のジョブが判明した瞬間に速攻で戦王をサブに移動させた男だ……ガワは女だけどな。

それ故に今の武器一本背負いは半分くらい本人の技巧ということになる……こいつめ、普通に武器使っても強いじゃねーか。

「おうサンラク! なんかぶよぶよしたの来た! きめぇ!!」

「はぁ? 喩えが曖昧すぎんだうわきめぇ!!」

なんだあのぶよぶよした奴! ぶ、豚か? 素体は豚なのか? 勇魚ァ!!

『あちら、ポークオマージュ・ファッティボディですね』

ファッティボディ……いやあれ全部脂身かい!!

チッ、脂身の塊とか これ(・・) の初披露の相手としちゃ最悪すぎるぞ……だがまぁ選り好みする程悠長にもなれねぇ、やるか!!

「初陣だ、派手に頼むぜ一ノ太刀……!!」

ビィラックが半ギレしながら突貫で作ってくれたカテゴリ:刀…… 銕刀(てっとう) 【 廻渦白波(うねりしらなみ) 】、性能検証だ。