軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

隠し弾を握るは

「きええぇぇぇぇぇあぁあぁあぁあぁぉぁぁぁぁぁ!!!」

金と、HPと、ついでに正気をかなぐり捨てた狂気のガトリングが船長室に穴を穿つ。蜂の巣の主人がガトリングで蜂の巣にせんと襲いかかってくる絵面は安全圏から見れば笑いもこみ上げるのかもしれないが、今の俺たちは敵であるディアホーンも含めて全員イライラポカポカギスギスがMAXまで蓄積している状態である。

もはや誰もこの狂乱の宴を止める者はいない、数日間ただひたすら模様替えを繰り返し続けたホーネッツネストの頂点ディアホーンの目から正気の光は失われており、ぐるぐると焦点が定かではない表情のまま替えの利く駒に配慮するつもりはねぇと操舵室のNPCもろとも俺たちを葬るべくガトリングをぶちまけている。

「きぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「カラスだってもう少しお淑やかに鳴くぜ……いい加減くたばれやぁぁぁ!!!」

だがこちらも負けてはいない、流石に真正面からガトリングを受け止めることはできないがそれでも全員あのガトリングばあちゃんに一発入れなければ気が晴れない連中だ。

各々がガトリングから逃れつつも反撃を繰り返しており、如何にディアホーンが特注の艦長スーツで攻撃を防いでいたとしても限界はやってきた。

「ちょいと失礼」

「な、いつの間に背後に───」

そりゃアンタ、途中から陽動に回ったライノばかり見てるんだから視線から外れたガゼルさんは動き放題よ。タイマンならともかく乱戦ならこの程度できなきゃ孤島じゃやっていけなかったもので……はいジャーマン!!

「ふんっ!!」

「ごふぅ!!?」

流石に実年齢通りのアバターではないのだろうが、それでも華奢で軽い女性アバターをぶん投げるくらい、近接偏重のステータスなら訳もない。ついでに頭に一発入れといて……

「はい捕獲」

「絵面な」

「人道的宇宙海賊だろどう見ても」

「宇宙海賊を将来設計に組み込むのやめとこ? ね?」

いいじゃん、金も帰る場所もないならデブリ以下の享楽に浸って朽ち果てようぜ?

「あー、愛板氏? ご要望通り捕獲しました」

『結構、あの乱射の中で的確に鎮圧するとは素晴らしい』

「一応ルチャからボクシングまで上っ面だけならパクれるんで、ちょちょいっと」

「え、ルチャできんの? なんか技見せてくれよ」

「カスティゴいっとくか、ほらライノ立て」

「拷問技はヤメロ!!」

じゃあフランケンシュタイナーとか? あれ受ける側の協力がないと難しいんだけど。まぁイアイフィストの補正ありなら便秘で出来るけどな、イアイフィストに足技がないなんて誰も言ってないのさ……

「……で? なんだって生かして捕まえるなんて回りくどい真似を?」

『いや、そりゃあ……ああパイソン君、デバイスをもう少し近づけて』

「え? こう?」

『そうそう、いい位置だ。おういディアホーン』

「………何さね」

『………私の勝ちぃ〜〜』

うわぁ。

まさか それ(・・) なのか、 それ(・・) を言いたいが為だけにわざわざ生け捕りにしたのか。もはや陰湿という言葉すら生温い、人は金と余裕が出来るとこうも壮大な煽りをぶちかませるのか。参考になる……いや参考として活用できる日が来るのかどうかは知らないが。

超資本主義ギャラクシー煽りが直撃したディアホーン氏の身体がちょっとヤバい感じに痙攣している、というかこれVRシステム側から緊急ログアウトされないか心配になってくる痙攣なんだが。

「アンタたちよくもまぁこんなクソ人間についたね!?」

「いやまぁ、金ですよ金」

「……金と義理で繋がるビジネスなもので」

義理で金は稼げないが金で義理を取り寄せることはできる、世知辛い一方通行だ。

「くっ、アプデ後の変化ってのはこういうことか愛板……まぁいい、次に活かすだけだとも………」

『ふむ………さて?』

………………。

なんだろう、ディアホーン氏と愛板氏との間に沈黙。いやこれはどちらかというとディアホーン氏が何かいうのを愛板氏が待っているような。

『私なら そう(・・) するがね』

「チッ、こいつと同じ思考ってのは癪だがアタシだって思うところはある。いいさね、乗ってやる」

分からない、だが沈黙の中でディアホーン氏は何かを決断し、愛板氏がそれを後押ししたのか。そしてディアホーン氏がなにを決意したのか……それは雇用主殿による捕虜の解放という突拍子も無い支持という形で実行された。

「いいのか?」

『心配は無用だ、 あの(・・) ディアホーンが完璧なものに水を差す筈がない』

「……フン、そこの家電王の言うとおりさ、ここまでストレートに首に刃を突きつけられた以上は無様は晒さない」

家電王? 何のことでしょうね? 国内最大手家電メーカー「サウダージ」のお偉いさんとこの知り合いを煽るためにン十万ぶち込む超弩級煽りカス愛板氏に関連があるわけないじゃないっスかハハハ……いやほんと、聞かなかった事にしておきましょう。俺に資本主義の暗黒空間で戦う力はないです。

「あんた達、明日……この戦争最終日の開始五分間だけホーネッツネストはあんた達に協力してやる。だから今日のうちに装備を補充しておきな、設備は貸してやる」

「えっ、マジで?」

「端金でもナメられたんなら相応の拳を握るのがロッカクの流儀さ……こいつの利になるのは癪だがどうせ死ぬなら意義のある死を迎える」

これがマナーゲーム最上位の交渉だと言うのか……会話の主軸が「察し」だけで進行している………だが、ここに到達するまでの脳筋強行軍によって装備が限界だったのも事実、いくらガトリング装備とはいえプレイヤー一人も制圧に手間取ったのは装備の質以前に押し切るだけの弾薬がなかったからに他ならない。

それが補充できるってんならありがたいが……数日間敵対していたからこそ疑念が拭えない。

『あー、要するにだね………どうせ死ぬならここで死ぬより自分の船を雷撃処分させたGカップムネ肉達に一発入れてから死にたい、ってことさ』

「あっ、成る程ォ!!」

「え゛、それで納得できるのガゼル……!?」

「善意で協力持ち込まれるより百倍納得できる」

「あんた商才があればこっちに来れるよ」

鉛筆が薄味に見える伏魔殿からのお誘いは、ちょっと……しかし、この戦争もついに最終日か。長いようで短いような……なんだかんだシャンフロからもそれなりに離れていたし、この戦いが終わったら俺シャンフロに戻って……いや、待て、これ死亡フラグだ! あっぶねぇ、人ってこんな自然な流れで死亡フラグ建てる生き物なのか。

だがどうする、建てた以上は折らねば死ぬ。何か別のフラグ、いや旗よりも隠し弾や切り札で補給しなければ………………そうだ。

サンラク:レイさん、レイさん

サンラク:折り入って相談が

サンラク:……あ、寝てるかもしれない可能性を忘れてた、申し訳ない

サイガ-0:起きます!!!!

サイガ-0:いえ

サイガ-0:ちが

サイガ-0:起きてます

サンラク:あ、起きてた……夜分遅くに申し訳ない

サイガ-0:は、はい

サンラク:明日会える?

「はうっっっく………!!?」

「玲、なにを生まれたての仔馬のように廊下で震えているのですか。尿意を我慢するにしても節度というものが……」

「違います!!!」