軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

糸は千々に解けて

実はウチの高校、学食がある。購買の方が安く済むので俺含めて大体のやつはそっちで済ませるしなんなら学校外に出てラーメン屋に行く 勇者(アホ) もいるのだが、学食が使われないわけではない。ちなみに学校近所のラーメン屋は高確率で教師がいるので勇者は大抵ラーメン食いながら教師に叱られることになる。

まぁそれはそれ、重要なのは今俺が置かれている状況だろう。学食を訪れた生徒はその一角に主に二年生によって構成された人だかりがあることに気づく、そしてその中心には…………俺と玲さんがいるわけで。どうやら向こうも向こうで尋問からは逃れられなかったらしい。

「えと、ら……………………その、陽務君も、ですか?」

「あー……そっすね、はい」

逃げたい、逃げたいが逃げられない。クソが、県大会出場級の柔道部を俺の隣に立たせるんじゃないよ。下手に逃げたら締め上げるってことかよ、条約はどうした。

「それでは皆の意見を代表して俺が進行を務めさせていただく」

「おい雑ピ、「小さな妖精さんと迷子の天使」の続報はどうした」

「ん゛っ………………二週間後に公開するから楽しみにしとけ」

バカな、通じないだと!?

「残念だったな楽郎、もう周知の事実だからノーダメージだ」

「自分で挿絵も描いてたらしいぜ」

「え、マジ? 今度から画伯って呼ばないと」

「ノーダメージだからって死体を蹴っていい理由にはならねえよ!?」

俺を囲む男子生徒が見せてきた暁ハート先生渾身の挿絵はなんというか随分と………その、柔らかいタッチというか。

「可愛い絵柄してんじゃん」

「やかましいっ!! 尋問を始めるっ!! つーかもういい加減認めろよ! お前ら付き合ってんでしょ!?」

「つっっっっっっっ!!!!?!?!」

「いやだから付き合ってないって………」

思春期さんどもめ、どうあっても俺と玲さんを付き合ってることにさせたいのか。だが男女問わずここに集まり俺達を包囲している連中はそれが聞きたいようで、好奇と疑念の視線がビシビシと俺と玲さんに突き刺さる。

「じゃあこれはどういうことだよ? これ東京で撮られた奴だぞ?」

「偶然会ったなんて言わないよね?」

「それがなんと偶然なんですよ、いや本当偶然。確率論って怖いですね」

しれーっ、と言い訳してみたが、疑念の視線がその密度を増しただけだった。というか仮に そう(・・) だとしてもこんな囲んで問い詰めるもんじゃないだろ………

「偶然カップルに見間違えられたと?」

「トンネル効果よりはあり得る確率じゃね?」

沈黙。何か都合のいい言質を取ろうとしても無駄だと言わんばかりに黙秘していた俺に対して有効打を思いつかなかったのか、尋問のターゲットは玲さんへと変更されたようだ。確か………得間、そう 得間(えま) 頼花(らいか) だ。一年の時同じクラスだったっけか。

「で、どうなの玲? 本当に付き合ってないの?」

「つ、付き合うだなんてそんな…………いえ、そんな、あはは………」

「東京で互いに偶然会ってナンパから庇ってもらったと?」

「どっちかと言うと庇ってもらってたの陽務の方じゃね?」

「いやアレは別枠だろ」

「そ、その………できれば動画を連続再生するのは勘弁していただけると……」

「そうだそうだー」

便乗したら無言でヘッドホンを装着させられた。目を逸らさせろ! 非人道的拷問はやめろ!!

「………っ! ………っ!!」

「イキリメモリーの無限再生はつらかろう」

「黙らせました」

「ら、陽務君………」

「陽務君がいつだったか言ってたけど、共通の趣味ってので仲良くなったのはもう知ってるの………で、それを踏まえて本当に付き合ってないの? 別れさせようとかじゃなくてハッキリさせたいのよ」

「リピートはやめろ………うごごご………ち、ちなみにオッズは?」

「付き合ってる六割、付き合ってない四割」

接戦かよ。何一つ事実に基づいてないのが何より酷い。

「えと、と、とりあえず、この動画の、あのその、経緯に関しては………その、共通の友人からイベントのチケットをもらっていたの、で、その………折角なら? というか」

「被告人、発言を認めます」

「まぁ概ね事実、あー………もうこの際言っちゃっていい? 斎賀さんの趣味について」

「え? はぁ、その………別に構わない、ですけど……」

ん? あれ? あんまりバレたくない趣味とかじゃないの? まぁいいや、本人が良いって言うなら弁明のためにも言っちゃおう。

「シャンフロだよシャンフロ、ゲームのイベントに行ってたんだよその日は」

「JGE?」

「そうそれ、ゲーム友達なんだよ。まぁ、その…………斎賀さんは 結構やりこんでる人(リアルを削る廃人) だから、あんまり喧伝するもんじゃないかなって。そんだけ」

ゲーマーの社会的地位とかそういう話ではなく、あれほどのセーブデータを作り上げるにあたってリアルを無傷のままでいられるとは思えない。まぁ、その………風呂とか、食事とか、そういう削れるところから削ってそうだし。そういうのって自慢になるのは同じゲーマーに対してだけだ、普通は引かれるだろう。俺は土日とかだと時々削るよ、ペットボトルのお世話になったことはないけど。

「斎賀さんシャンフロやってたのか………」

「なんで隠す必要が?」

「話の種に絡まれるのを防ぎたかったんじゃない?」

「あー、一緒にやろう! 的な」

斎賀 玲ガチゲーマーのカミングアウトをしたことで好奇と疑念の視線の何割かに納得の色が混ざり始める。だが柔道部の山本は俺の背後に立っているし………あっ、こいついつの間にコーヒーなんか買ってきやがったんだ!!

「……いる?」

「いらねぇよ、飲みかけを渡すな」

「微糖だと思ったら間違えて無糖押してたんだよ、あんまり好きじゃねぇ」

「あー、半年くらい前から自販機の配列変わってるんだよな」

自販機の特定のボタンだけバグったから臨時で配置変えてからそのまんまらしいんだけど、その変わったのがよりにもよってコーヒーのコーナーだったからいつも通りに押して間違える奴が多いとは聞いている。

どうやら女子の方がガールズトークに移行しつつあるせいで男女がハッキリ分かれてきたためか、尋問の空気はいつしか薄らいでいき、単なる雑談に変わりつつあった。何人かは未だ話を蒸し返そうとしているが、もはや大勢の空気は決まりつつある。ようやっと終わったか………とりあえず件の動画は通報しとこ、この世に残してはいけない。

「…………ん?」

あれ、ええとあれじゃん。生徒会長の、あの蜂に刺されてパニクってたひと。随分と厳しい顔でこっち見てんな………まぁひとかたまりになってギャーギャー騒いでるのはあんまり褒められたもんじゃないか。それにしちゃあ随分と眉間にシワが寄ってるが………んん? まぁいいや、普通に学校生活送ってりゃ縁のない人物だろうし。

「おい取り調べってんならカツ丼出せよ」

「図々しすぎるだろ」

「せめてパシるにしても金くらい出せよ」

「おう買ってこいよ絵本作家、出版されたらサイン書いてくれ」

「ここぞとばかりに……!!」