軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

転生するスーパーノヴァ

俺と斎賀さんは言うなればパーティを結成していると言っていいだろう。つまり一人と一人ではなく、一つのペアとして見られることになる。

そして当然、リニアの席もワンペアとして割り振られるわけで……

「とりあえずブース全体としてはこういう感じらしい、入り口がここだから……斎賀さん?」

「はひゃいっ? そ、そうですね、こことかいいんじゃないでしょうかっ」

「……そこ、トイレだね」

「うぐぅ」

うぐぅ、て。

窓際の座席に座っている斎賀さんに携帯端末で表示したJGE会場のマップを見せながら相談していたが、斎賀さんの指差した場所はまぎれもなくトイレであった。

「い、いえそうではなくっ、ちょっと狙いがズレただけで指差したかったのはここで……」

「えーと? んー…………スーパーノヴァ?」

「知っているんです、か?」

見覚えは、ある。つまりなんらかのクソゲーを世に出してるってことだ。なんだっけな……幕末はロワイヤル社だし、フェアクソを生み出したオベロンゲームスは既に潰れてるし……あー、違うな宇宙関連のクソゲーだったはず。

ユニバースストームではないな、コスモバスター? あれ確か大元は海外だし、えー…………あ、思い出した。

「ギャラクシートラベラーか」

人生において多方面にゆとりのある富豪しか楽しめない虚無ゲーじゃん、このメーカーまだ生きてたのか。

「どんなゲーム…なんですか?」

「え? あー……」

クソゲーです、とは言いづらい。

リアルタイムと連動してるので何かイベントに参加しようにも結構な時間を削る虚無ゲーです、と詳しく説明するのも気が引ける。

実際このゲーム、好きな人はとことん好きなタイプのゲームなので厳密にはクソゲーと言えるかどうか微妙なラインだ。とはいえただひたすら漆黒の宇宙を宇宙海賊に敵対的生命体、常に不満タラタラのNPCクルーの相手をしながら彷徨い続ける虚無は面白いかつまらないかで言えば……まぁ後者だ。

VRシステムが買えるくらい高価な特典版に付いてくるプラネタリウムがあるとまぁまぁ楽しいという話だが、楽しさと値段が釣り合ってねぇ! とは誰の叫びだったか……俺だよ。

「ま、まぁそうだね、うん……何かこう、 哲学(フィソロフィー) に目覚める系のゲームかな」

「ふぃろそふぃー」

イエス、フィソロフィー。

有料の拡張コンテンツまであるのでとことんユーザーから金を搾り取りたいんだろうな、と一通りゲームをプレイした後に思ったものだし、この手のゲームは長生きしないだろうなとも思っていたが……調べてみるとどうやら今もサービスを続けている……ん?

「あれ? 超大型アップデートなんてあったんだ」

「超大型?」

「うわ、なんだこれシステムの根本から別物になってるし」

ギャラトラではプレイヤーは「艦長」固定だ、つまり原則的にNPCに指示を出すことで宇宙船を運営するシステムということだ。なのでプレイヤーはアホな動きで被害を増やすNPCにイライラし、戦術を教えても覚えが悪いNPCにイライラし、異星人に初手侮辱をかまして大戦争の引き金を引きまくるNPCにイライラし、挙句不満が爆発してクーデターを起こすNPCにイライラすることになる。

だが、調べてみると数ヶ月前にあったらしい超大型アップデートによりプレイヤーを艦長の席に固定する呪いの如き制限が無くなっていた。具体的に言うとプレイヤー自身が戦闘に参加できるようになっているし、交渉人としてプレイヤーが矢面に立つことも可能になっている。

「え、これ………普通に面白いのでは?」

「あ、あの……」

うーわ、異星産の艤装パーツ解禁されたの!? こっちがヘナチョコレーザーで戦ってるのにビット衛星を使って極太レーザーを反射直撃させてくるあのクソチート兵器も!? どうしたスーパーノヴァ、お前そんなユーザーの要望を無料で聞き届けるような素直な性根してたっけ?

「うわー……マジか……」

「あ、あのっ! 楽郎君っ!!」

「はっ!?」

しまった、ガン無視してギャラトラの思い出に浸ってしまっていた!

「あ、ごめん斎賀さん! 思考飛んでた」

「あ、いえ、私もちょっと大声を出しちゃって………その、ここが気になるんです、か?」

「あーうん、ちょっと……いやかなり気になってる」

クソゲーのまま朽ち果てたクソゲーは数多くプレイしているが、客観的に見たクソ要素を全て解決したクソゲーというのはなかなか見たことがない。吹っ切れてクソ要素を楽しめるクソ要素に昇華したゲームは経験があるけどな。

「じゃあ、ここに行ってみましょう……か」

「あー、お気遣いどうも………ん?」

「どうか、しましたか?」

……………あれ? いやでも………うーん、無意識?

「あの、 楽郎(・・) ……君?」

「いや、なんでもないよ 玲さん(・・・) 」

「くきゅっ」

何今の蛇口を閉めたみたいな音。

「いや、いつの間にか名前呼びになってたから俺も……と、思ったん、だけど………迷惑だった?」

「…………(にっこり)」

「えぇと、その笑みはどういう意味で……」

「…………(にっこり)」

AI搭載してないNPCか何かかな?

微笑みを浮かべたまま完全にフリーズした斎賀さんであったが、段々と顔が赤くなって……いやそれすら通り越して青くなって……

「息してる?」

「ぶはっ!!!」

息が詰まるってこういうことじゃないと思うのだが、事実息が詰まっていたらしい斎賀さんはこちらから顔を背けて息を吸いつつ俺の方へと手のひらを出して「問題ない」とゼスチャーを示した。

「あー……名前呼び、ダメだった?」

「いえ、大丈夫です、問題はないです、一切! 問題はないです」

「そ、そっすか」

「よ、呼びやすいですものねっ、他意はないですっ、ねっ!」

「お、おう」

シュパパパパッ! と見えない壁でもあるかのように手のひらを見せまくる斎賀さん……もとい、玲さんに若干ホラー的なものを感じつつも、リニアは進んでいく。

何故だろう、玲さん越しに見える外は雲も少ない晴れ模様なのに嵐が来る予感がする。