軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あなたの為のオーケストラ 其の十七

「金ならいくらでもあるっ! やれい! エルクっ!!」

「あはぁー! まぁいどありぃー!!」

生きていく上で大事な力は三つ。筋力、権力、財力だ。

コミュ力は骨組みじゃなくてインテリアなので除外、なくても極論困らないけどあった方が楽しいという絶妙なポジションなのが憎いね。

それはそれとして現在、エルクにビリオンダラー・マテリアルボンバー(金に物言わせるアタックとも言う)を喰らわせることでスキルの大改造を行っている。

いや、確かに 臨界速(ブラディオン) は凄い。俺が持ちうる全てを解放したフルバーストで使えば最大速度を掻っ攫うだけではなくジークヴルムの角を二本へし折るくらいにはポテンシャルの塊だ。

だが、いかんせん日常生活と対人戦では持て余してしまう。さらに言えば小回りが利かないのと連結したスキルそれぞれの長所を少しずつ削っているという欠点もある。

だからしばらく臨界速はお蔵入り、元のスキルを取り戻しつつ他の連結を試す……そう、言うなればスキルダイエット……!!

「うふうふふぅ、マーニがいっぱいでニマニマしちゃうわぁ〜」

「今のダジャレ?」

浮き足立つ、を通り越して耳で空を飛びそうなくらいはしゃぐエルクの姿はやはりエムルの姉なんだなぁ、と感じるが……大丈夫だよね? 連結失敗とかないよね?

レベルが130を超えているとレベルアップするにも一苦労だ、そしてあのままの編成で完成しているところがあったので今の今まで面倒臭がって特にいじっていなかったが……久しぶりに確認してみるとこれまた結構な変化が多いこと多いこと。

まずUIが若干改善されていた。いやこれ割と重要だぞ、流派や特定カテゴリで分類されているしステータスポイントの内訳だったり……劇的な変化ではないが痒いところに手が届いた印象だ。やるじゃん天地 律、UIの改善は良作の第一歩だ。

次に新しいスキルの習得。どうやら三桁スキルってやつは単純にスキル進化の新しい領域というだけではなく、三桁レベルだからこそ初めて習得可能…みたいなものもあるようだ。だって名前からして序盤に覚えるスキルのそれじゃないもの、なんだよ 星幽界導線(アストラルライン) ってカッコいいなオイ。あと地味に晴天流も新しいスキルを習得していた、浮雲……入道雲関連だろうか。

そして最後に……エルクによるスキル連結「 同調連結(ハイコネクション) 」を経て。

「久しぶりに所持金一桁になったな……ゾクゾクしてきた」

「兎の懐はホクホクしてるのだわぁ〜」

そりゃ所持金全部お前に支払ってますからねぇ!! オラどうした金づる様だぞ、茶を出せ茶を。

「あ、おまんじゅう食べるぅ?」

「食べる」

「食べるですわっ!」

「エムルは300マーニねぇ」

「ですわ!?」

身内にも割引しない銭ゲバの鑑かよ。

ここからは巻きで行こう。

「エフュール! 頼んでたやつどうなった!?」

「できとるよぉ、はいお人形」

キャッツェリアとのパイプが補強されたことで地味に恩恵がデカかったのは 鍛治師(ビィラック) 関連よりもむしろ 装飾品(エフュール) 関連かもしれない。宝石匠は宝石系アイテムをどういう原理か糸……そして布へと加工することができる。つまり人形制作に鉱石をメインとして組み込むことができるということだ。

あのシャバ造兎ヤローとごたついたものの、キャッツェリアは俺を相手に下手に出ざるを得ない弱みがあることに変わりはない。快く承諾してくれたキャッツェリアの………あの……ダル、ダルメシアンじゃなくて……ダルニャーナ? だったかが加工した宝石織の素材はエフュールの許へと届けられ、今こうして二つのアクセサリーとして加工されたのだ。

地味にこれ、「プレイヤーが所有できない形態のアイテムでもNPC間なら融通が利くのでは」説が浮上しているのだが……いや、こういう考察はライブラリにでも任せておけばいいか。

以前エフュールによって拡張されたアクセサリースロットに早速二つの人形をセット。見飽きるほどに見覚えのある特徴的フォルムは実際に「本物」の素材も用いられており、デフォルメされた姿であるというのにLv.10くらいのプレイヤーなら威圧感だけでキルしてしまいそうなオーラを漂わせている。

その名を 水晶蠍人形(クリスタル・スコーピオンドール) 、そして 烈砲百足人形(トレイノル・センチピードドール) と言う……え、蜘蛛の人形はどうしたって? よ、妖怪いち足りないめ……

「サンキュー!」

「なんや、随分とせわしないなぁ……」

「ふぁーふぇーへふふぁ!!」

「エムル、お行儀悪おす。ちゃんと飲み込んでから話しや」

こいつ俺に出された分も食ってるからな。はい次!!

◆◆

「おどれタダで槌振らせようたぁええ度胸じゃのう、ドタマかち割られたいんか?」

はい寄り道ぃ!!

◆◆◆

「ピーツぅ!」

「げぇ! サンラクはん!!」

「 売りに来ました(金を出せ) !!」

「法に触れないだけでやってることほぼ強盗ですやんこんなんーっ!」

安心しろ、金の流れはラビッツでほぼ完結してるぞ………エルクのところでせき止められてるけど。

はいリターン!

「なんなんやあん人………金を巻き上げる竜巻か何かちゃうんか……」

◆◆

「ビィラック武器直し………」

「あ、そこわた俺が置いた椅子が……」

「本能が危険を知らせてるですわっ!!!」

椅子に、足を、とられて、転んで、頭から、炉…………もっと熱くなれと?

「おぼあああああああ!!?」

「サンラクサンんんんん!!?」

……………………

………………

…………

……

「頭冷えたですわ?」

「今さっき黒焦げになるまでヒートアップしてたけどな……」

「なぁにをそんな急いどるんじゃ……」

いや、なんかこう……なんかこう、な? 別に明確なタムリミットがあるわけじゃないけどやることが多すぎて気が 逸(はや) っていたというか……別に急ぐ必要ないのに勝手に切羽詰まっていたというか。

頭から炉に突っ込んでサンラクの兜焼きになった、というであまり体験したことのない死に方をしたせいか形容しがたい焦燥感はいつの間にか沈静化していた。

「んで、イムロンは古匠への道は拓けたのか?」

「いきなり話振ってきたわね……じゃない、振ってきたな……とりあえず 勇魚(イサナ) を問い詰めて魔力運用ユニットがリヴァイアサンに存在しているってのはわかってる」

「マーリョークウンヨーン(小声)」

「なんて?」

「おどりゃっ! ドタマかち割られたいんかっ!!」

ジョークだよジョーク、他者をおちょくれる程度には余裕が戻ってきたか。ただでさえごわごわした黒毛を逆立たせたビィラックを宥めつつ、第二殻層に到達したところで中断しているリヴァイアサン事情についてさらに聞いてみることにする。

「そういや最前線は何層まで行ってるんだ?」

「第二はもうクリアされてる、俺も第三までは行ったが……第三から一気に難易度が上がる」

「むっ」

いや、仕方ないことはわかっている。中途半端なところで寄り道しまくってる俺よりも先に進んだプレイヤーが能われるのは当たり前のことだ。常に一位を取り続けられるゲームなんてオフラインにしか存在しない、オンラインでゲームしている以上は訪れてしかるべき状況だが………あーやばい、戻りかけていた余裕がまた遠くに。あー、今すぐリヴァイアサン攻略に乱入してぇ………

くそう、オルケストラに頼んだら「俺」をちょっと貸し出してくれたりしねーかな……俺オルケストラ攻略するから「俺」はリヴァイアサン代わりに攻略してきてくれねーかな。