軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

龍よ、龍よ! 其の三十

「クッ……やはりユニークモンスター、クターニッドも大概タフネスとは聞いていたがそれ以上だな……!!」

ジークヴルム対ノワルリンドに数多のプレイヤーが絡んだ大混戦。大多数はジークヴルムを狙っているとはいえ、無尽蔵とすら思えるジークヴルムの様子にカローシスUQは思わずと言った様子で舌打ちをした。

ジークヴルムとてゲームのエネミー、倒せないという事はあるまい。しかして既にプレイヤー達が攻撃を開始して結構な時間が経過しているにも拘わらず、僅かに怯ませる以上のダメージを与えられているとは思えなかった。

「通じていない……訳ではない、実際ノワルリンドの攻撃は効果を見せている……となるとやはり、単純にタフいのか?」

『そうだとも、この身はかつて始源へと抗する為に作られたもの……貴様らの輝きとて我が身を討ち斃すには生半可な牙は届かぬと知れ』

「おっと、まさか答えてくれるとは」

しかし、とカローシスUQは思考する。

実際のところジークヴルムを倒すにあたって、ノワルリンドの存在は非常に大きい。ジークヴルムに匹敵する体躯を持っていることもあるが、その息吹に対してジークヴルムが「 輝ける龍王(トゥーパック・アマル) 」を高確率で使用する為、相手の行動を絞ることが出来る。

だが、ノワルリンドは完全に味方という訳ではない。そしてスカルアヅチの城主及びその麾下……前線拠点の構築に大きく関わる生産職達から敵視されている為に共闘しつつも狙われる立場にある。

『ぬぅう! どういうことだ秋津茜! この我に楯突く虫がおるぞ!!』

「日頃の行いですよノワルリンドさん! ほら、前にいっぱい酷いことしたらしいですし!」

『ふん、くだらぬ怨恨か……だがこの程度の痛痒、通じるものか!』

「ジークヴルムさんと張り合ってる感じですね! 頑張りましょうっ!」

どうもレイドモンスターは別に存在するようだが、少なくともこのEXシナリオにおいてはレイドモンスター相当の色竜と共闘している【旅狼】の少女が一体何者なのか、と気になることは尽きないものの、少なくともノワルリンドのヘイトをジークヴルムに固定してくれているのは有難い。

「後から来た者で指揮下に入る者はリソースが尽きた者と交代してくれっ! ジークヴルムはスキル無効と魔法無効を使い分けるっ! スキル無効の結界は発動中のスキルも対象になるから注意!!」

何度目とも分からぬ指示を出しつつ、カローシスUQは大きく息を吐き出す。

「流石にこの規模でソロ指揮官はつらい……」

「そうか、なら遅ばせながら手伝おう。元メンバー……あぁいや、姉妹クランの相手に手間取ってな」

「ぬっ」

ある点に於いては忌々しさすら覚える声が投げかけられ、四振りの剣が担い手なき抜き身のままに宙を舞う。

『何奴!!』

「クラン【黒剣】 団長(リーダー) 、サイガ-100だ。お前を倒しに来た」

『良かろう、ならば来るがいい!!』

「【 五重奏(クインテット) 】!!」

名剣魔剣が宙を舞う、単なる飛翔武器として飛び回る剣の数々はしかして指揮剣の元、まるで見えない何者かが握り振るうかのような振る舞いを見せてジークヴルムへと斬りかかる。

それはリアルでは絶対に見ることができないであろう現象(もしかしたらそんな技術が既に実現しているかもしれないが)。プレイヤー達の間から歓声が上がり、ありったけの時間と素材……注ぎ込めるだけのリソースによって成り立つ最高峰の従剣劇にジークヴルムすらもが僅かに動きを止めざるを得ない。

『なんたる剣嵐怒涛……! おお、なんたる、素晴らしい……!!』

「お褒めに与り光栄だ……! 進めっ! 並ぶな固まるな! 奴を包囲して全方向から攻撃を叩き込め!!」

応、とプレイヤー達の声が夜空へと高らかに響く。【黒剣】の主力メンバーが合流したこともあり、再びプレイヤーの大多数がジークヴルムへと立ち向かう。それは指揮官としての有能無能という話ではなく、圧倒的な視覚的インパクトによる意識の統一。

「………はぁぁー」

「どうしたカローシス、まだ気を抜くには早いぞ」

「……………」

じ………とサイガ-100を、厳密にはサイガ-100が 従剣劇(ソーヴァント) を操作するために振るう聖剣を半目で眺めながらカローシスUQは「ヘッ」と唾でも吐き棄てるかのように片頬を吊り上げる。

「いやーパイセンさすがっすわー、 神秘の剣(レーツェル) は所詮剣聖の引き立て役ってことっすね、ははは」

「お前確かIT関連の企業勤めだったか、先輩も何も私と関係性皆無じゃないか……というか前々から言っているが別に下位互換でもなんでもないだろう。魔法面の汎用性が違う」

「なんとなく運営に聞いたことがあるんだけどさあ……今、魔法剣士と剣豪の就職率比較すると1:4くらい差があるらしいよ」

「………………ノーコメントということで構わないな、来るぞ!!」

「おっと」

『フハハハハハハ!! 良い! 良いぞ! 我が血潮の滾りを! 我が身魂の極限を! 貴様らは引き出せるかァ!!』

『今この場にて死ねぇぇえええええ!!』

大質量と大質量が激突する。その 性質(キャラクター) 上、より取り見取りのプレイヤー達に目を奪われ続けるジークヴルムはノワルリンドの攻撃をほぼ直撃で喰らい続けている。にも拘わらずその体躯の芯は揺らぐこと無く、鬱陶し気にノワルリンドの頭をつかんで投げ飛ばす。

当然人が密集すれば巨大な者達の争いに巻き込まれる確率も上がる。投げ飛ばされたノワルリンドの墜落地点にいたプレイヤー達が蜘蛛の子を散らすように逃げ出し、幸運にも誰一人潰される者はいなかったとはいえノワルリンドが地面に叩きつけられた衝撃で少なからず戦列が乱れる。

「凄まじいな、ボスクラス同士のガチMvMというやつは」

「これプラスプレイヤー総出で殴ってるのに未だに倒せる気がしないんだけどね……」

「となると別方面からの攻略が必要になる可能性は?」

「クターニッドが実質耐久ゲーなんだったっけ? いや流石にあそこまでボスキャラじみた振る舞いしてそれは無くないかな?」

「いや、だがクターニッドとて多少はこう……怯んだ。ここまでタフだと何かしらのギミックがあってもおかしくはないぞ」

ちら、とスカルアヅチを見上げながらサイガ-100はジークヴルムに何かしらのシステム的な仕掛けがあるのではないかと推測する。

時間が経過するほどに、ジークヴルム討伐は困難になると言ってもいい。何せもう一つの クリア条件(ノワルリンド) はジークヴルムの反撃を喰らい続けて既に消耗した様子を見せている。気まぐれか実験か、ノワルリンドに時折回復魔法が飛んで行ったりもしているのだが、焼け石に水だろう。

ジークヴルムが倒せないとなれば、次善のクリア条件を満たそうとするプレイヤーは出てくるだろう。正直に、そう正直に言ってしまえばサイガ-100やカローシスUQはノワルリンドの最終的な生存にそこまで執着しているわけではない。ライブラリの推測が正しければどちらのクリア条件を満たしたとて得られる結果にそこまで劇的な変化はないのでは、とも思う。

だが、ここまで長い時間を戦い続けて奇しくも二人は同様の感情を抱きつつあった。

「だが、ああも英傑英傑と挑発されては、倒せませんでしたでは悔しさが残るだろう」

「否定はしない、というか君ん所とライブラリが第二陣を埋めたせいで僕らこれが初ユニークモンスター討伐になるかもしれないからね?」

であれば手は抜けない。サイガ-100は展開する 従剣劇(ソーヴァント) をより攻撃的なものへと変え、カローシスUQは新たな魔法を儀霊剣へとセットする。

「ジークヴルムは何かしらのギミックモンスターの可能性がある! 何か気づいたことがあったら遠慮無く試してみてくれ!!」

「B.I.G.に引っかからない自信があるなら死んでリスポンしてもいいが、無理せず後続と交代してくれ! 調査船で補給ができる!!」

彼らはいちプレイヤーであり、大手クランを率いる者でもある。振るう剣が示すものはなにも、敵を害するだけではない。