軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

龍よ、龍よ! 其の十六

「ようしサイナ! エムル! プランBだ!!」

「プランBってなにさ」

「プラン B(ブラッド) 、俺が死ぬまで戦う」

「それ作戦というか玉砕……」

「ぶっちゃけリスポンできるプレイヤー的には自爆も玉砕も視野に入る選択肢だろ」

「ペンシルゴンなら人間爆弾までならやると思うんだけど、サンラクはどう思う?」

「……いや、まず自分が派手に自爆する手段を整えるだろ。鉛筆王朝の終焉と共に王城を吹き飛ばした女だぞ」

木材すらも略奪対象になるから今現在も城が完成してないらしい世紀末円卓マジ世紀末。幕末とはまた違った方向で明日を捨ててる世界だ……

「プランBの発令を確認。再確認します 契約者(マスター) 、我々 征服人形(コンキスタ・ドール) は契約者の再構成と連動して契約者の付近に転移します」

「聞いた聞いた、エムルはどうする? レイ氏と……あー、ディアレと一緒にここに残るか? それとも先にセーブポイント……転移したところに戻るか?」

「ここに残るですわ! それに今のアタシはひと味もふた味も違う、ですわ……!」

「……、……? ………っ!!?!?」

おっと、ディアレが何かに気づいた様子で顔芸を披露しているが……うん、まぁそう言うことなんだ。エムルはNPCに課せられた壁……二桁から三桁に至る壁を乗り越えてしまった。そう、ウィンプの鬼レベリングと俺の周回掘り作業に付き合っている内にな……

今のエムルはLv.101、100になるまでが異様に長いだけで101には結構簡単に上がった。そりゃトレイノルとフォルトレスの決戦に何度も首を突っ込んでりゃ上がるわな。

あーその、なんだ、ディアレ氏につきましてはご愁傷様としか言いようがなく……

「くぅぅぅう………ころへぇ……」

まぁ、心中はお察しする。実質的な元凶俺だけど。

というかいつまでも駄弁ってる訳にもいかない、合図の花火が上がった時点でルスト計画もほぼ完遂されたも同義だ。プランBの最終段階は派手に自爆することで完遂されるのでどちらにせよ死ぬっちゃ死ぬが、こう……高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変な感じで……

「心の獣を解放するのだ……」

「ルスト来る前に死なないでよ?」

「五分以内に来てくれるかな?」

「さぁ……」

まぁいいさ、どちらにせよジークヴルム討伐にあたり色竜を減らすのは計画内だ。それに蠍と違ってこいつらはお手軽にキルスコアを稼げる。まさに俺のためにあるかのような戦場だ……

カポッと赤い頭蓋を被り、六つある眼窩の一つから前を見据えて一歩前へと踏み出す。

「あ、 相当派手に(・・・・・) やるからできれば離れていた方がいい」

「周囲に被害が出るのか?」

「忠告はしたぜ」

さて………五分、五分か。ノルマの方はそこまで気にすることはないが……五分、全力出し切って戦いきれるかな?

まぁ大丈夫だろう、なにせ……

「英語表記クァンタムを接種済みだからな……!!」

「ヤク漬けじゃん」

「合法です! ……「 血解(ブラッドハート) 」!!!」

その言葉を。喉を震わせ放った音が頭蓋を震わせた瞬間、まるでスペックの足りないPCがでかい作業を始めようとした時に一瞬フリーズするかのような。有り体に言えば「空気が凍りついた」かのような感覚。

喪服装備越しとは言え、直接頭に被っているからこそ分かる。赤い異形の頭蓋、それが確かに今…… 鼓動(・・) した。

「え、ちょ、なにそれ」

「血……?」

赤い頭蓋、赤い骨、赤い それ(・・) 。実際カルシウムでできているのかは分からないが、少なくとも個体であるはずの頭骨からドロドロと赤い液体が染み出して来る。

それは当然装着者たる俺の身体を這いずるように、染み込むように溢れ出ては纏わり付いて。

ガクガクと痙攣する俺の身体、当人からするとシステム的なモーションなので別に苦痛とかは一切ないのだが全身を硬直させて痙攣する姿は外面が最悪すぎることは周囲の反応を見れば一目瞭然だ。

そしていつしか溢れ出した赤い液体が滴り落ちるのではなく明確に新たな形を作り上げていく。

顔の輪郭を伝う雫が集まり下顎となり、肩から腕へと滴る赤色が人間の貧弱な手指を獣のそれへと変える。

背中から、肩から、触れるものを害する事のみを考えた棘のような突起が生え、腰の後ろからずるりと伸びたそれは紛れもなく尻尾。

そして最後に、赤い液体……ナニモノかの血に包まれた頭骨の、六つの眼窩を覆う瞼が開かれ、その下から現れたギョロリと六つの眼球が戦場を睨みつける。

「ふぅうuuuuu……」

「えーと、あの……サンラク? 正気保ってる?」

「………」

無言でオイカッツォへと一歩近づく。オイカッツォは俺から一歩後ずさる。

「マヌケヅラaaaaa……」

「ダメだ、理性がないようだし介錯してあげよう」

「いや、それは……」

性転換しても顔面据え置きの受け野郎に構ってる暇はない。第二形態……もといR.I.P.と違って第三形態もとい 暴血赤依骸冠(ブロード=クロゥネ) は無制限ってわけじゃない。

「 鏖殺祭り(ハーヴェスト) だaaaaaAAA!!」

エフェクトのかかった声を上げながら駆け出す。近くにいた人型小竜の首を掴み、ゴキッと力を込める。

麩菓子でもへし折ったような感覚と共に小竜が砕け散り、死亡エフェクトが獣と化した頭部へと吸い込まれていく。

「っしゃaaaaa!!」

バックステップを入れて元の場所に戻りつつ地面に突き立てていた二剣を引き抜き、本格的に戦場へと飛び込む。

「どけどけeee!!」

「モンスター!?」

「あ、危っ……!」

悪いねプレイヤー諸君!! この形態だと物理的にタッパがでかくなるからさぁ!! 悪いが手を止め足を動かし退いててくれよなァ!!

ぶん投げた 別離れなく死を憶ふ(メメント・モリ) が巨人小竜の胴体を貫き、そのまま柄尻に飛び蹴りを叩き込んだことで完全に貫通した特大剣が地面に突き刺さる。

「いい加減本体も削ってかないとなaA!!」

プレイヤー達による包囲殲滅の陣形に対して内側から外側へと戦力を生産し続けるブライレイニェゴは、当然ながら本体へと近づく程に密度が上がっていく。

だが全身に攻撃判定が付与される今の俺は尻尾を振り回すだけでもダメージソースになり得る。

「ふははHaHaHaHaHa……!! ギアを上げてくぞコラaA!!」

赤色警報だ。外出は控えたほうがいいぜ白色ども、現在外に出ている白竜系列のエネミーは根こそぎ叩き潰してやるよ。

別離れなく死を憶ふ(メメント・モリ) の軽量化効果は戦闘終了もしくはインベントリに戻すと消失する。

つまり逆に言えば、そこら辺にぶっ刺しておけば軽量化効果を残しておくことができる。その上で別の武器を握ることも可能!!

武器をその場に出しっぱなしにして戦うテクニックはシャンフロじゃ割とありふれたテクのようだが、この戦法はプレイヤーが死ぬとその時点で手に持っていない武器がその場に残ってしまうという欠点がある。

PK以外じゃ所有権云々は移らない筈だが、それを抜きにしても取りに戻る必要はあるし最悪インベントリアに入れられないだけで誰かが持っていく可能性もある。

まぁ、要するに死ななきゃいいだけの話だしパクろうとする不届き者は半殺しにすればいい、それに……そんな時間すら与えねーさ。

「フルスロットルrrrrr!!」

この声にかかるエフェクトなんかだんだん笑えて来るのがいかんな、わーれーわーれーはーうーちゅーうーじーんーだー