軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

龍よ、龍よ! 其の七

「流石は筋肉マダム……タンクにボディガードされたらそりゃ手がつけられなくなるってねぇ」

「あらペンシル、おはよう」

「頭噛まれてますよアージェンアウルちゃんさん?」

「あぁ、このくらいへっちゃらよ。力こそ正義!!」

ぐしゃり、と握力のみで引き剥がされた小竜が地面に叩きつけられ、踏み潰される。アージェンアウルの頭部からは割とシャレにならない量のダメージエフェクトが出ていたが、それもすぐにリジェネの回復で消えていく。

その様子を引いた目で見ていたペンシルゴンであったが、気を取り直して背後の騎士達へとハンドサインで指示を出す。

「で? さっきから気になってたけど後ろのは何? プレイヤーって感じしないけど」

「ふふふ……よくぞ聞いてくれたね、まぁ今からドカンと面白いものを見せてあげるよ……!」

にまり、と笑みを浮かべたペンシルゴンはくるりと振り返ると、鋭い口調で騎士達へと言い放つ。

「マンディーズ重装歩兵団、全員武器構えっ!!」

「「「「イェァアアアアアア!!!」」」」

「わっ」

これまで沈黙を貫き通していた騎士達が突如、随分とご機嫌な叫びを上げる。

それが合図であったかのように兜で隠されていた茎と葉の部分がぴょこんと飛び出し、十四人の騎士……イムロン印の武器防具で武装したパワー型ヒューマンドラゴラが一斉に武器を構える。

「おーいいねー、こーゆーの嫌いじゃないぜ。マンディーズ弓兵団! 弓構えろーい!!」

「あ、俺もやる感じ? あー、マンディーズ工作兵団、全員準備しろ!」

さらに超農民の合図で弓と矢を装備した比較的細身のヒューマンドラゴラが、ゼニス・ゲバラの合図で比較的小柄なヒューマンドラゴラが一斉に動き出す。

「なにこれ?」

「ふふふ、銭ゲバ農民ブランドがこの秋お送りするヒューマンドラゴラシリーズ! 所謂デモンストレーションってやつかなぁ!!」

ヒューマンドラゴラは 征服人形(コンキスタ・ドール) 同様にプレイヤーが好き勝手にカスタマイズ可能なシステムだ。だが一人につき一体しか契約できない征服人形とは異なり、ヒューマンドラゴラにはその制限がない。

故に、一人のプレイヤーが結成可能なパーティの上限数十五人になるまでヒューマンドラゴラを連れ回す、なんて事も可能なのだ。

とはいえ、無論デメリットも存在する。

基本的にヒューマンドラゴラの寿命は七日である。七日間経過した時点でヒューマンドラゴラは「(命名)の休眠球根」というアイテムになってしまい、キャラクターとしての記憶などは受け継がれるがそれまでのレベル、ステータス、経験値がリセットされてしまう。

そして再びヒューマンドラゴラ状態にするには職業「農民」系列のスキルが必要となるのだ。

「今回はそこの超農民君に無理言って大盤振る舞いしてもらったのさ」

「私が作りました、あへぇ」

アヘ顔ダブルピースでアピールする超農民を華麗にスルーし、ペンシルゴンは続ける。

「レベリングが死ぬ程だるかったけど、作業を乗り越え全員レベル99! さぁ今こそ君達の力を見せるのだーっ!!」

「「「「イェァアアアアアア!!!」」」」

次の瞬間、ブロッケントリードが地を割り物理的に投げ飛ばした土塊がヒューマンドラゴラを数体吹っ飛ばした。

「マ、マンディー六号! 十一号ぅぅう! おのれ、全員突撃ーっ! 狙うはブロッケントリードの茨だよ!!」

「頭じゃないの?」

「いやいや、どう見てもあの触手がエネルギー供給の要じゃん? 端から再生しそうだけど注意は逸らせるだろうからね。ほらそこっ! 君らも攻撃参加する! 銭ゲバ君あれだよあれ、三段撃ち行っとこう!」

「ホント人使い荒いなこいつ……つーか弓兵隊はあっちだろーが!」

「吶喊!!」

わぁわぁぎゃあぎゃあイェアイェアと突っ込んでいった一団を見送りつつ、アージェンアウルはふぅとため息ひとつ。

「私を差し置いてフィーバーするのはちょーっと違うんじゃないかしら!!」

そしてどう猛な笑みを浮かべると、自分もまたブロッケントリードへと駆け出すのだった。

『ぬぐぅおお! 鬱陶しい!!』

ゾウガメのようにも見えるブロッケントリードは見た目通り高いタフネスと鈍いが重い鈍重な攻撃力を備えたドラゴンだ。

故に堅牢、しかして……無防備。

茨触手という近接迎撃手段こそ備えてはいるが、本来の運用用途は地面に突き刺しての「吸い上げ」「吐き出し」であって虫払いではない。

『ぬぅぅ、うおぁあ!!』

「ハァイ古臭いお爺さん?」

『貴様、は……っ!』

ブロッケントリードは執念深い性格だ、一度受けた傷は決して忘れないしその死を見て笑うという 悪い(・・) 趣味も持ち合わせている。

だからこそ、つい先程己の顎を殴り飛ばした「虫」は記憶に新しい、一瞬だが眼前に現れたアージェンアウルに注意力が全て向けられる。

「三号! 肩貸して(・・・・) !!」

「イェア!!」

頻繁に壁のシミになる変態を比較とするのが間違いなだけで、冷静に考えて公式戦で八割をキープするプロゲーマーと比較するのが間違いなだけで、アーサー・ペンシルゴンというプレイヤーは別に操作が下手というわけではない。

元より槍使い、ステータスビルドは機動力に多く振られている。ヒューマンドラゴラの一体、その背中を踏み台にしてペンシルゴンの身体がブロッケントリードの背中へと跳び上がる。

「ほっ、と」

ブロッケントリードの動きは鈍重だ、だがその「背中」へと登って戦う者は驚くほど少ない。何せその背中には 竜化(・・) 植物とでも言うべきモンスターが群生しており、何をしようにもそれらが襲いかかってくるからだ。

だが竜化植物には一つ、致命的とすら言っていいだろう弱点が存在した。

「わはは、装甲完全無視は最高だぜぇ!!」

ひゅん、と槍の穂先がハエトリソウを凶悪化したような植物の茎をいとも容易く断ち切る。

植物型モンスターは部位破壊が実質的に全身に適用されている。故に茎から切り離して仕舞えば容易に無効化が可能であり、多少硬い茎であろうと聖槍カレドヴルッフがパッシブで備える装甲完全無視効果の前では豆腐と大差ない。

「ふふふ、あーっはっはっはっ! 楽しい畑荒しの時間だァーっ!!」

「そこは 収穫(ハーヴェスト) と言いましょうよ」

「おやアージェンアウルちゃん、思いっきり頭噛まれてるけど大丈夫?」

「この程度で止められると思ったら……大間違いよ!!」

ぐわし、と頭を噛まれながらも茎を掴んでブロッケントリードの背中から無理やり引き抜く様子をドン引きで眺めていたペンシルゴンであったが、やることはやらねばと手早くインベントリアを操作する。

「ててーん! 超農民印のハゼランマーカー! あそーれ!!」

本来は土に植えるアイテムではあるが、竜化しているとはいえ植物を群生させるブロッケントリードの背中であれば条件は満たせると睨んだペンシルゴンの考えは外れてはいなかったようだ。

「ほらほら離脱するよー!」

「何々? 何をするつもりかしら?」

「工作兵ーっ! ハゼランボムよーい!!」

マーカー、ボム。単語からでも分かる事はある、 数秒後に訪れるだろう未来に目を剥いたアージェンアウルもまた緑竜の背中から飛び降り、直後背中へと投げ込まれたソフトボールサイズの「蕾」が一斉に起爆した。

『なんだぁぁぁ!!?』

「っし背中一掃! 者共、奴の背中へレッツクライミングじゃー!!」

「「「イェアアアア!!」」」

ヒューマンドラゴラの鳴き声に混ざってプレイヤー達も歓声をあげる。

目の色を変えて殺到する 虫(プレイヤー) の姿にブロッケントリードは思わず呻き声をあげるのだった。