軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

300リミット狂想曲、勝算を抱え逃げる者

範囲攻撃の密度が上がる。だが段階的に密度が上がるということは前段階の上位互換……即ち、範囲攻撃にいくらかの共通点があるということ。

「着弾数……プラス3! 発光からの着弾時間に変化無し! 余裕!」

回避スキルを使うまでもない、互いに重複しないよう必ず魔法一つ分の隙間を作る範囲攻撃など、安全地帯がそこら中にあるようなものだ。

ステータス画面を開く余裕さえある、俺を狙って降り注ぐ落雷を回避しきった俺は次の攻撃……ホーミング性能は飛び抜けて高いが当たり判定が小さいため回避も楽な鎖攻撃を避けながら 木乃伊椰子(ミイラヤシ) のすぐ側まで肉薄する。

「おいコラ死に損ないのミイラヤシが! 俺はここだぞ、その薪にも使えなさそうな腕で殴ってみろ!」

もしかして挑発って隠しパラメータで存在するのだろうか。マジョリティハウンドの時もそうだったが、やけに俺の挑発に対してモンスター側がノッてくる印象が強い。

枯れた身体を軋ませながら、椰子と例えるだけあって異様に長い胴体をしならせて木乃伊椰子が近接攻撃を行う。

「3…2……1…………ここだっ!」

若干の調整を加え、タイミングに合わせて全力のバク転。俺の頭が地面に最も近くなる瞬間……天地が逆転し、走高跳びのような体勢でその勢いのまま薙ぎ払われた木乃伊椰子の胴体を紙一重で避けて、 掴む(・・) 。

「はっはぁーっ! 消えかけのろうそく理論ってやつだな、冴えてるぜ俺の脳細胞!」

こちらからの攻撃が通じないのはともかく、向こうが物理攻撃をする以上その身体に触れる事自体は可能なはずだ。少なくとも木乃伊椰子はゴースト系のような非実体ではない実体を持つモンスターであり、俺の手は確かに木乃伊椰子が持つ 長杖(ロッド) を掴んでいた。

魔法職ガン有利はまだ分かるが、物理職完全ゴミ化はないだろうと試してみたが成る程、物理職は 杖(これ) を狙えってか

「モンスターのくせに杖なんて持ってるってことはさぁ……これ、無くなったらどうなるんだろうなぁ?」

「オ、ォオオ………!」

俺の意図をAIが理解したのか、木乃伊椰子の首を即興の足場にして杖を奪い取る俺に抵抗せんと、木乃伊椰子は両手で杖を握り締める。枯れかけのSTRなど、それも見るからに純魔術師なステータスと思しき奴のそれなど大したことはないとタカを括っていたが結構粘る。だがな……

「持っててよかったポイント貯金、ってな」

ステータス画面、ポイント割り振り、STR。

綱渡りじみた芸当であったが、木乃伊椰子が俺を振り払うのではなく杖を取られまいとしたのが運の尽き、空けた片手でステータスを弄り、両手で杖を奪い取る。

知ってるか、昨今のゲームの中には敵の武器を奪い取れるものもあってな……

「 武器奪い(ウェポンスティール) は世紀末の嗜みぃ!」

ユナイト・ラウンズユーザーアンケート「今後実装してほしい機能は何ですか」第一位、「手持ちの武器を奪い取られないためのロック機能」とまで言わしめたクソ要素で鍛え上げられた略奪テクをナメんなよ! コツは揺らして毟る!

木乃伊椰子の手から長杖を奪い取り、華麗に空中で一回転して体勢を整え着地……あっ落下ダメージ痛い!

それはともかく、ニヤリと木乃伊椰子に笑いかけてやれば、やはり 長杖(コレ) が弁慶の泣き所だったらしい。先程までの魔法地獄はどこへやら、悲鳴……そう間違いなく俺を格上とする格下の悲鳴を上げながら木乃伊椰子は身体を折り曲げ杖へと手を伸ばす。

「まぁ俺がいうのもアレだけどさ、もう少し身体を鍛えたほうがいいぜ」

MPとか俺の貧弱なそれと比べてトリプル、いやクワトロスコアくらい差がありそうなのに力比べで負けるって強Mobとしてどうよ? やつの敗因は透過するタイプの物理無効じゃなかったことだな。

まぁ、弱者は弱者らしく逃げ回ってやるよ。鬼さんこちら手の鳴る方へ……ってな。

角のないユニコーンは馬でしかない、翼のないペガサスも馬でしかない、首が生えたスリーピーホロウの馬はやっぱりただの馬……ならば魔法を失った 魔法職(木乃伊椰子) は? 名は体を表す、どんなバックストーリーがあるのかは知らないがルーザー……「敗者」とはまさにこのことだな。

どうやら魔法ではなく種族的能力だったようで土の槍程の凶悪さはないにせよ、根の槍を放ってきた時は冷や汗ものだったが、慣れてしまえばただの作業。

こちとら諸々削ってスピード特化、文字通り地に足ついて根っこまで張った奴に捕まるような速度はしてない。

「おう、五分だ」

「よっしゃあ!」

最後の足掻きと言わんばかりに四方向から襲い掛かってきた根の槍をジャンプで避けたところでヴァッシュの声が静かに響く。瞬間、スパリと木乃伊椰子……もとい、 妄執の樹魔(ルーザーズ・ウッズ) が 縦(・) に真っ二つに裂け、ポリゴンとなって爆散する。

紙吹雪の如く散っていく妄執の樹魔が居た場所の向こうには、馬鹿デカい大太刀……いや、斬馬刀か?兎も角巨大な刀を振り抜いたヴァッシュの姿。あの、物理無効じゃ……っていうか杖ごと消えたし! 使うわけじゃないがすごく勿体無い気分!

「後半素手頼りだったのはちぃと残念だが……確かにおめぇさんのヴォーパル魂、見せてもらったぜ」

ヴォーパル魂 とは [検索]

大体察しはついているが、一度口頭かテキストで説明してもらいたいものだ。足元でワーワー騒いでいるエムルはとりあえず置いといて……俺はヴァッシュをまっすぐ見据える。

「見込み通りの人間だったようだぁな……いいぜ、おめぇさんをラビッツの【名誉国民】に認定してやるよう」

「ん? え、あー……押忍」

え、いや、もうちょっとこう現物支給的なものは……

『ユニークシナリオ「兎の国からの招待」をクリアしました』

『称号【ラビッツ名誉国民】を獲得しました』

『アクセサリ【致命魂の首輪】が消失しました』

『NPC「魔術兎エムル」が正式にパーティに加入しました』

『ユニークシナリオEX「 致命兎叙事詩(エピック・オブ・ヴォーパルバニー) 」を開始しますか?はい いいえ』

待て待て待て待て今の俺にはちょっと情報過多だって!あ、レベルアップしてる。