軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

マグネットな絆

スイッチの入ったレイドボスさんは止まらない、具体的に言えば獣じみた察知力で半径20メートル圏内ならプレイヤーの位置を高確率で割り出してくる。ホラーゲームのスラッシャーだってもう少しマイルドだぞ。

その戦法は流動的で不安定、リアルで剣の心得とかはないんだろう。やったらめったらに振り回される剣はトーシローのそれ、とは剣道経験者の言だ。

だが喧嘩殺法はボクシングに劣るのか? 否、過程の差異は結果にまで影響を及ぼさない。リングスタイルだろうがストリートスタイルだろうが、行き着く先は相手への暴力だ。

であればレイドボスさんの剣はまさに殺人剣、斬れば死ぬのだからそこに型もへったくれもねぇと言わんばかりの剣筋は無軌道で、それゆえにおぞましい程に純粋だ。

錆光(さびみつ) 、 最高効率(クリティカル) で振るえば鉄板すら障子紙の如く切り裂く最弱にして最強の刀が錆びた軌跡を縦横無尽に描く。

満身創痍の錆び鉄、あたかもそれは刃が引き連れた死に魅入られた者の末路を示しているようで。

「ぎゃっ!?」

ああ、肉が断たれる。流石にシャンフロほど狂ったリアリティはないが、それでもサイバーテクノロジーの結晶がフルダイブVRだ。肩から腰へと斜めに切り裂かれた身体はもう長くあるまい。尤も、斬られたのは俺ではないので他人事なんだがね。

「ごっつぁんです!!」

俺の振るった刀が満身創痍の肉盾を捉える。これで八人目だ、うーむまたしても効率的な稼ぎ方を発見してしまったか。

「げぇーっ! あの野郎レイドボスさんをトレインしてやがる!!」

「こっちくんな!」

「え? なんて? 近くからもう一度言ってくれる?」

「わざとか! ぎゃぁああ……!!」

「逃げるね、兎みたい」

脱兎の如く、と言いたいのか? 流石にシャンフロのサンラクとイコールで気取られたとは思いたくはないが、天然物の電波さんはエスパーじみた発言をするからドキッとさせられるな。

正直に言おう、多分俺は死ぬ。シルヴィア・ゴールドバーグと違ってレイドボスさんはバグすら味方につける正真正銘のモンスター、フェイントやらなんやらを多用してなお五メートル以上距離を離すことができない。

だから方針を変えた、どうせ死ぬならスコアを稼いでから死ぬぞ俺は。

名付けてレイドボス超特急、レイドボスさんに挑発コマンドを連打して進行方向の他プレイヤーを巻き込む。あわよくば横からスコアを掠め取り、そうでなくともレイドボスさんという絶対の一位がスコアを吸収することでポイントを高めた俺の順位を高水準に留める。

効率化が極まっているからこそ、レイドボスさんの動きはコンピュータに近しいものとなる。複雑な思考を経て単純な結論として出力されるからこそ、逆にその動きを外部から制御しやすくなる。

悪いな諸君、孤島じゃMPKは基本技能だ。

「天ちゅ……あ」

「対人に絶対は……無い!!」

錆光(さびみつ) 、クリティカルに成功すればありとあらゆる装甲値を無視し、失敗すればその瞬間に砕け散る諸刃の剣を物質化したかのようなピーキーソード。

レイドボスさんが常にクリティカルを出し続けるのならば、こちらから崩しをかけてやればいい。奇遇だな、俺もシャンフロじゃクリティカルアタッカーなのさ……!!

このゲームで最も確実な天誅の方法は首を落とすことだ。だからこそレイドボスさんの振り抜いた刃の行き先が分かったのならば、首を僅かにズラすだけでも致命傷をノーダメに貶める事が出来る。

砕け散った錆び鉄が散る。返す刀でレイドボスさんの眉間を狙った刺突は、一瞬その姿が消失したかと錯覚するような高速の屈伸で回避され、視線を下に向ければいつの間に体勢を変えたのか伸び上がるような逆立ちによる蹴りが俺の顎を狙う。

「っの……!」

「っ」

技のへったくれもないケンカキック、壁を蹴りつけるかのように足裏がレイドボスさんの背中を捉えて吹き飛ばす。

見た目こそ華奢な少年だが、内部ステータスは怪物のそれだ。どうせ大したダメージは入っていないだろうし、実際吹き飛ばされたレイドボスさんはすぐさま受け身を取ると軽やかに立ち上がる。

「やるね?」

「出来損ないの天誅に価値はないさ……!」

絶望的状況と諦観は必ずしもセットじゃない。首だ、首を断てばレイドボスさんとてキルできる。

だが、幕末プレイヤーはデフォルトで狂人なので残機1であろうとも 勇者(・・) は現れる。

「おいおい、楽しそうじゃないの。だがこの俺が混ざらなきゃ始まらないんじゃないかぁ?」

「げ、ランキング二位……」

「あ、 当千(とうせん) 」

残機1だからこそ隠れ潜む奴がいる、であれば逆に残機1だからこそ死を恐れずに駆け抜ける奴がいる。

貴重な肉盾……もとい、他プレイヤーが一刀の元に切り捨てられ、さながら幕が開くかのように砕け散ったそいつの背後から一人の新撰組プレイヤーが現れる。

レイドボスを相手にしてる最中に 俺たちの勇者(ランキング二位) 乱入だと? クソが、これだから幕末は最高なんだ。

「組むかい?」

「バカ言え、背負ったネギごと鍋にしてやるよカモが」

「言うじゃないのレアエネミー、逃げるコマンド打つ前に叩き斬ってやるよ」

打てば響くかのような敵対宣言、本音を言えば喉から手が出る程に加勢してもらいたいが、あいにくこの世界じゃ喉から出した手にも刀を握らせなければ生き残れない。

「いいね、楽しい」

「………」

「………」

錆び鉄の刀を携える最強の剣士、太刀を肩に載せる次点の勇者、そして二刀流のそれぞれを敵対者に向ける般若面の俺。

「来ないの?」

「「天誅!!」」

ふっ、流石は俺達の勇者と言うべきか。レイドボスさんのプレイスタイルは割とオンリーワンなので参考にならない面がある、であれば最も幕末らしいプレイスタイルを持つプレイヤーはコイツ……幕末総合ランキング二位、新撰組ランキング一位「当千」をおいて他にいない。

レイドボスさん相手にソロは蛮勇? そんな事は分かりきっている、どうせこいつもレイドボスさんを絶対的一位にする事で自分のランキングを上げるつもりなんだろう、つまり……

どうにかして俺は奴を、奴は俺を処理してランクインする場所を上げたい。つまりレイドボスさんに自分が天誅される前に相手を仕留める!! これが幕末の 流儀(スタイル) ……!!

「調理の時間だカモネギがよぉ!!」

「うるせー下っ端が! 粛清だオラァ!!」

とはいえナンバーツーは伊達ではない、極まった対人勢は隙を隙として放置しない、立ち回りが弱点を埋めるしもし隙があるとしたら半分くらいの確率で誘いの罠だ。

踏み込みからの大上段を横にステップを入れて回避、喉を狙って右刀を振るも攻撃は同様に回避される。

チッ、互いに早期決着を求めるが故の単調な動きになってしまったか。脚を斬って動けなくしてから仕留めるべきだった。

そして目の前にいると言うのにハブにされたレイドボスさんが動く。

「寂しい」

「うおお!?」

狙われたのは勇者だ、余裕の吹き飛んだ表情で的確に目を狙って放たれた刺突を紙一重で回避した勇者であったが、剣を引き戻す動きで頬に一筋のダメージエフェクトが走る。

引きつった顔をそのままに勇者はバックステップ、しかしレイドボスさんの左手に握られたリボルバーを目にした事でさらに顔の引きつりは増す。

「なんちゃって」

「クイッ……!?」

一発、二発。手首のスナップを活かした動きで放たれた弾丸が勇者と……あ、俺も射程圏内ですねはい。

「「うおおおおおお!?」」

なんであんな速攻の動きで的確に眉間狙えるんだこえーよ!!

「ばんばん」

「……っ!」

「……っ!!」

前言撤回。俺たちはソウルブラザーズ、二丁拳銃とかいう第二形態に進行したレイドボスさんを一緒に倒そうぜ兄弟!!