作品タイトル不明
コラテラル・サクリファイス
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ああなんて清々しい朝だ、やっぱり自分の思い描いた未来予想図をそっくりそのまま……いや、それ以上に完璧な形で実現できた次の日の朝ってやつは最高だ。窓から差し込む朝日すらもが俺を祝福しているように思える。
「いやはや、まさかランカー二枚抜き出来るとはなぁ」
幕末ランキング大体四位「針千本」こと「むっちりタングステン」、そして幕末ランキング大体三位「唯一剣」こと「メタルマシュマロ」……偶然にしては出来過ぎなほどに対照的なこの二人のプレイヤーは争うことが宿命であると言わんばかりに熾烈な争いを繰り広げるランカーだ。大体合えば天誅合戦になるこの二人を仕留められるとは………こういうのをジャイアントキリングと言うのだろうか。
正直次に幕末にログインするのが怖くて仕方がない、偶然の積み重ねによる結果とは言えランカー二人のスコアをそっくりそのまま奪い取った今の俺はイベントランキング首位に躍り出てしまった。効率的リスキルを徹底的にガン回ししてすら五位が限界だった幕末で、だ。
つまりもはや俺は有象無象ではなく明確に仕留めるべきターゲットとしてランカー達にロックオンされたと考えていいだろう。とりあえず「吹雪狩」……まぁ例の誠意大将軍に狙われるのは不可避として、不動のランキング一位ことレイドボスさんに狙われるのが割と致命的というか……正直幕末のエンジン下で奴に勝てるビジョンが全く思い浮かばない。ウェザエモンにタイマン挑む方がまだ勝ちの目がありそうなんだよなぁ……
「二位をどうにかして味方につければ……ダメだな、大判小判の詰まった袋を放置する理由がない」
幕末最強のプレイヤー、あんまりにもあんまりすぎて洒落た二つ名を与えられることなく「レイドボス」という身も蓋もない異名で呼ばれるプレイヤーに唯一タイマンで渡り合えるプレイヤー……幕末ランキング二位、「俺達の勇者」。奴と一位をうまい具合にぶつけられれば……いや無理だな、レイドボスさん強すぎるんだもの。
「……ああ、だが刀と身一つで戦う以上、無血の勝利ってのはあり得ないものさ」
想定外のジャイアントキリング、ノーリスクってわけにはいかなかった。尊い犠牲があったからこそ、俺は身にあまる栄光を手に入れることができたのさ…………………
【旅狼】
京極:サンラクはどこだ!!!!!!!!!!!
京極:サンラクの!!!!!!
京極:クソッタレは!!!!!!!
京極:どこだっっっっっっ!!!!!!!!
鉛筆騎士王:うわ、すごい荒れてる
オイカッツォ:なんだなんだ
京極:あの野郎絶対許さない!!!!!!
京極:私の信頼を返せ!!!!!!!
サンラク:いとおかし
京極:お前ええええええ!!!
サンラク:愚かなり京ティメット………幕末で背中を向ける事がどれほど愚かなことか理解できていなかったらしい……
鉛筆騎士王:あっ(察し)
ルスト:どういうこと?
オイカッツォ:イベント中なんだっけ? 何やらかしたのさ
サンラク:亡霊と談合した上で京極を騙くらかして怪獣大決戦に飛び入り参戦させて火薬樽&油壺で長屋地帯一帯ごと諸共に爆殺
鉛筆騎士王:鬼かよ
サンラク:ランカー二人分のポイントが入った結果、今現在トップ独走中です
オイカッツォ:マジかよあの魔境で瞬間風速でもトップに立つとか相当じゃない?
サンラク:レイドボス(プレイヤー)と勇者(こちらに牙を剥く)に狙われるんだよなぁ……
オイカッツォ:ああ……
ルスト:何のゲーム?
サンラク:辻斬・狂想曲:オンライン
モルド:調べた限りじゃ割と普通のゲームというか結構ほのぼのしてる感じだけど……
鉛筆騎士王:それ擬態だよ、幕末の本性はサイコパスしか生き残れない地獄だよ
オイカッツォ:あながち間違いなじゃい
サンラク:若干違うぞ、思考回路が幕末仕様に塗り変わるだけだよ
鉛筆騎士王:洗脳より悪質な人格汚染じゃなーいのー?
京極:お前本当許さないからな! 末代まで祟ってやる!!!!
サンラク:↑こちら、幕末汚染50%から70%まで進行した患者でございます
オイカッツォ:↑さらにこちら、表面上はマトモな風に擬態している幕末汚染度100%超えの末期患者です
サンラク:バカ言え、100%超えの幕末汚染患者はもっと頭がおかしい
ルスト:逆に興味が湧いてきた
サンラク:ちなみに初心者が一番最初に体験するのはチュートリアルガン無視でPK&リスキル仕掛けてくる先達プレイヤー達の襲撃な
モルド:………?
鉛筆騎士王:なんというかモラルが世紀末から一周してもう一回世紀末に突入した感じだよね
鉛筆騎士王:どいつもこいつも爽やかに話が通じないから困る
京極:次会ったら絶対天誅してやる………滅多斬りに天誅してやる……!
京極:覚悟しときなよ…………
サンラク:問、今の状況に相応しい表現を述べよ
オイカッツォ:死人に口無し
鉛筆騎士王:負け犬の遠吠え
ルスト:生者は死者の為に煩わさるべからず
モルド:さ、塞翁が馬とか……
サンラク:正解は「往生際が悪い」でした
サンラク:亡霊の言ってることちょっとよくわかんない……
サンラク:はよ成仏して……
京極:くおぉぉぉおおおおおおおおおおお………!!!!
鉛筆騎士王:字面だけ見ると悪霊退散シーンみたいなのがちょっと面白いよね
およよ……随分と嫌われてしまったようだ。そりゃ確かに亡霊たちに「ジャイアントキリングみせるよ!」って言いくるめて百鬼夜行を解除した上で「あいつらちょろいからちょっとポイント稼いで来いよ」って京ティメットを騙くらかして四位、三位の激突に割り込みさせた上でどう見てもそういう用途に使えと運営が言っている街のど真ん中にあるNPC花火職人宅に置かれた火薬樽やらなんやらを投下してまとめて爆殺したけど………
天がやれって言ったんです! だから俺は悪くないし、仮に俺が放り投げた種火が出火元で大体縦横25メートルくらいの長屋地帯が吹き飛んだとしてもそれは不幸な出来事だから明日への希望を信じて頑張ってほしい。というか定期的に爆発するしな幕末世界……城下町のど真ん中に花火職人の倉庫置くなよどう見ても設計ミスだろ。
まぁ火縄銃の火薬やらをロハで補充できる場所でもあるから大規模爆殺施設であると同時、石油プラットフォーム的な資源ドロップエリアとして銃メインのプレイヤー達が火薬確保のために熾烈な争いを日々繰り広げている最前線でもある……そして流れ弾で着火して爆発オチするまでが幕末の日常風物詩だ。
ひどい時は爆発オチ→リスポン→別の場所で同様のオチ、を繰り返して一日で何度も地上で玉屋鍵屋と叫ぶことになる。一応ロケーション的には花火職人の火薬保管所なのでカラフルな爆発なんだよね……むしろ吹っ飛ぶプレイヤー見る方が楽しいんだけど。
「さて、と」
本当はちょっと楽しんだら風雲プレジ伝に戻るつもりだったが、こうなったらとことんやってやろうじゃないか。今日か明日には命の灯火がかき消えていそうだが、不発弾のようにログアウトし続けるよりも花火みたいな一瞬、派手に輝いて消える閃光のように暴れてやろうじゃないか。
ログインと同時、ログインログボ天誅を狙った新選組を隊の規律に則り粛清していると、ジト目の視線を感じ取る。
「おっ、未練たらったらの京ティメットさんチーッス!!」
「………………!!」
無言で 親指(サムズアップ) を下に向けた悪霊に取り憑かれた、霊媒師とかいないかな………?
探したらマジでいた、業務用扇風機の最大風力喰らったみたいな感じに消し飛ぶ京ティメットの姿は正直録画しなかったことを強く後悔した。