軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Side4:ユニーク自発できないマンのユニークな日常

場所は変わって現実空間。

「さぁ、キリキリ全部吐いてもらうわよ……ケイ!」

魚臣 慧十九歳、絶賛壁ドン中であった。

「なんで、シルヴィア・ゴールドバーグがあんたに手作り弁当を届けに来たのかを、ね……!!」

「ハローっ」

尤も、当人は壁ドンされている側であり、現状を極めて簡単に表すならば「修羅場」以外の何物でもないという状況であるが。

「いや、それには深い訳があって……」

「 へ ぇ ? 」

目を据わらせ、さながら葉巻の如くフライドポテトを咥えた夏目 恵が壁ドンを行いながらにっこりと笑みを浮かべる。

「それじゃあ聞かせてもらおうじゃない、その深い訳ってやつを……ね?」

「えーと、あの、そのぉ……」

「Heyナツメグ! クールダウンクールダウン!」

「っぐ……誰のせいでヒートアップしたと思って……!」

「そんなことより私、ケイと一緒プレイスに住んでるわ!」

優越と自信がこれ以上ないほどに込められた笑顔とサムズアップによる爆弾投下、少なくとも慧の耳には開戦を告げる号砲が高らかに鳴ったのを幻聴した。

「な、ぁ……?!? ど、どどっ、どういう事よケイィィ!!」

「いや違っ、隣の部屋に……!!」

「リビング住まいだろうがダイニング住まいだろうが同棲じゃないのバカーッ!!」

「違ががががっ、マンションの隣室って意味ででででで」

肩を掴まれ、ガクンガクンと頭をシェイクされていた慧であったが、恵の脳内で三段階程進展し過ぎていた誤解をどうにか解いて揺れる視界をなんとか正常へと戻す。

「なんだマンションの隣室ってだけだったのね……」

「でもよく遊びにいくワ」

「待っ……! 首掴むの……っ! 無……っ、死……っ!!」

「ケイのバカーっ!!」

「ぐぇ……」

がめおべら。

「アメリア・サリヴァンが?」

「YES! 彼女、こっち来るかも?」

「えぇ……「ダイナスカルの猛禽」とか、また面倒なのが来るなぁ……」

かろうじて三途の川を渡らずに済んだ慧は、シルヴィアが持って来た自称弁当……厳密には出前のファーストフードを弁当箱に詰め直したものと形容すべき、箱に縦挿しでぎっちりと詰め込まれたフライドポテトを引っこ抜きながらその名前を呟く。

アメリア・サリヴァン。

プロゲーミングチーム「Zodiac Cluster」程の最大手ではないものの、彼女が所属することで米国内でも最上位に格付けされるプロゲーミングチーム「Dinoscull」。

プロゲーマーとして、格ゲーをメインとするゲーマーであればシルヴィア・ゴールドバーグに次いで有名な人物だ。

女性でありながら身長180オーバー、 鷹の目(サリヴァン) に相応しい鋭い目つきという非常に印象的なリアルの姿もあるが、何よりも重量級キャラをメインで扱いながら実質的なナンバーツーに上り詰めた実力こそが特筆すべき点だ。

米国格ゲー界において、シルヴィア・ゴールドバーグという人物は神に等しい。確かに慧はシルヴィアに勝利するという快挙を成し遂げたが、それを差し引いても現在に至るまでの戦績に黒星はただ一つしか存在しないのだから。

だからこそ当然と言えば当然だが絶対王者のフォロワーとして手数とフットワークによる攻めのスタイルをメインとする者は多い。

そんな中で鈍足、重装甲、高耐久という主流の真逆を行くキャラを使ってシルヴィアへと迫るアメリアという人物は、ともすればシルヴィアと同等の人気を誇る。

「……やっぱり、 あいつ(・・・) だよね」

「Exactly! ケイにもメール、来たでしょ?」

だがそこに、突如として現れたのが正体不明、強いて言うならエナジードリンクが好物であり…… あの(・・) シルヴィア・ゴールドバーグが操るミーティアスと互角に渡り合った「リアルカースドプリズン」だ。

それは、ともすればそう呼ばれるはずだったかもしれないアメリア・サリヴァンからすれば決して看過できない存在であり、GGC以降一切の情報が出ないその存在を確かめるべく来日を決心するには納得のいく理由ではある。

問題はそこではなく、

「あの人、プライドが服着て歩いてるってくらい負けず嫌いだからなぁ……絶対詰め掛けてくるよね」

「ウン」

魚臣 慧は知っている、シルヴィア・ゴールドバーグはそれ以上に知っている。

アメリア・サリヴァンを動かす原動力は恨みや嫉妬というものとは真逆のものであり、そしてその歩みが止まることは滅多にないと言う事実を。

謎の助っ人ゲーマー「 顔隠し(ノーフェイス) 」「 名前隠し(ノーネーム) 」の正体について知っているのは現状慧ただ一人。厳密には恵も片割れの正体については知っているのだが、それについては割愛。

さらに言えば、プライベートな付き合いからシルヴィア・ゴールドバーグの現在地を知っているとするならば。

「……ねぇケイ、」

「やめてメグ、見たくない! 曇りガラスの向こうに見えるでかいシルエットなんて見たくない!」

「いや、あれはウチのマネージャーでしょ」

「あぁなんだ、まぎらわしい………」

ガチャっ

「おぉいたか慧、なんかお前に会いたいって人がいるんだが俺の目に間違いがなければあれアメリア・サリヴァンな気がしてならないんだが……サインもらっちゃダメかな?」

「戦略的逃走!」

「あっ逃げた!!」

「イッツァハーンティーング!」

オイカッツォ:あの

サンラク:なんだよ

オイカッツォ:折り入って相談があるのですが

サンラク:これ断った方が楽しいやつ?

オイカッツォ:待って! これ俺の身の危険もかかってるの!

オイカッツォ:鯖折りにされちゃう!!

サンラク:え、なにそのデンジャラスな状況

オイカッツォ:あー、経緯はいろいろ面倒なんで省略するけど

オイカッツォ:ズバリ、十一月くらいに「 顔隠し(ノーフェイス) 」としてイベントに出てみませんか、と言うか……

サンラク:え、やだ……

サンラク:ただ純粋に 面倒(めんど) い……

オイカッツォ:それを踏まえて交渉しよう

オイカッツォ:このままだと俺のプライベートがズタボロになる

サンラク:そっちが提示する情報を聞いてやろうじゃないか

オイカッツォ:参加しないと君の家にシルヴィア・ゴールドバーグを突撃させる

サンラク:脅迫ゥーッ!

サンラク:それ世間一般に言う脅迫ゥーッ!

オイカッツォ:うるさい! どちらにせよもうあいつフィフティシアまで秒読みだから次の第三次新大陸調査で新大陸側に来るんだから諦めろ!

サンラク:え、早すぎね?

オイカッツォ:いやそれ俺達が言っちゃダメなやつだと思うよ

オイカッツォ:まぁいいや話を戻すけど、さっきのは一つめの条件ね

サンラク:えっそのまま進行するの? 正気かよ

オイカッツォ:我がプライベートを守るためなら狂気にだって堕ちてあげるよ

サンラク:お前が堕ちるのはメスの方だろ

サンラク:お前の写真加工して女っぽくしたコラ画像、顔パーツ一切いじられてないの面白すぎな

オイカッツォ:シャラーップ!

オイカッツォ:シャラーップ!!

オイカッツォ:あれのせいで女装罰ゲーム食らいかけたんだからね!?

サンラク:おいやめろ笑う

サンラク:モルドしちゃう

オイカッツォ:モルドする(動詞)

オイカッツォ:ていうか元を辿れば君が派手にシルヴィアと戦ったのが原因だからね?

オイカッツォ:米からプロゲーマー来日して君との対戦をご所望です

サンラク:えぇ……そこはシルヴィア倒したお前がヘイト受け持つべき場面だろ

オイカッツォ:………

サンラク:あっ

サンラク:まぁ十一月なら……

オイカッツォ:はい言質取ったぁー!

オイカッツォ:スクショもしたからね!

オイカッツォ:三枚!

サンラク:迫真すぎる

サンラク:ていうかそういう話なら「 名前隠し(ノーネーム) 」さんはどうなんですかね

オイカッツォ:あれを公共の電波に載せちゃダメでしょ

サンラク:全世界に流れてんだよなぁ……まぁいいや、それはそれとして

オイカッツォ:ん?

サンラク:フラゲでゲーム贈ってきたりとか、完全に外堀埋めようとしてない?

オイカッツォ:気のせいでしょ

サンラク:本音を言うと?

オイカッツォ:スターレインだけはやめろ

サンラク:海外はちょっと……