軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ビーム搭載型大統領、偉大なる第一歩

勉強が頭に入らない、というのは中々に久し振りな感覚であった。まぁそれはいいとして今晩からいよいよ風雲プレジ伝への挑戦だ。

「……NPCとはいえリアルタイム進行だし何か言っといたほうがいいか」

というわけでシャンフロにログイン。エムルに「夢の世界に現れた黄衣の王を倒す為、顔のない神父の言葉に従ってうんたらかんたら」と適当に理由をつけてしばらくインしないことを告げる。

まぁNPCはプレイヤーの不規則ログインをそういうものである、と認識している設定らしいので失踪しない限りはなんとかなるだろう。

というわけでシャンフロをログアウト、それでは改めまして始めていこうか風雲プレジ伝……!!

『世はまさに戦乱の時代……』

『最後の皇帝が死の間際に帝位の返上を行なったことで千年帝国の栄光は途絶えた……』

『欲持つ者達は武器を取り、我こそが時代の王たらんと立ち上がる』

『されど、戦火はいつの時代も無辜の民を焼く』

成る程、よくある展開だ。戦乱の時代背景の導入としては中々のもんじゃないか。

『だからこそ君が立ち上がるのだ!』

『愛と平和を謳える世界を!』

『戦火を消し去るラブアンドピース!』

あ、不穏になってきた。

『そうだ! 他人じゃダメだ、君がやるんだ!』

『君こそが平和をもたらす者……大統領なのだから!!』

どうでもいいけどこれ開始時点から大統領名乗ってんの? 総資産千円の億万長者、みたいな矛盾起こしてない?

『これは、戦火の時代を終わらせた一人の人間、その偉大なる物語である───!!』

そしてデカデカとタイトルコール。

『風雲プレジ伝』

キャラクターメイキング場面に移った俺は、改めてこのゲームが秘めるポテンシャルに胸を高鳴らせる。

こいつめ、PVの時点では真面目な感じなのに冒頭からすでにクソとバカのオーラを漂わせてやがるぜ。

数少ないプレイ感想曰くマルチエンディング形式らしいが……何分、プレイしたやつがどいつもこいつも語らない、売らない、ただ「クソゲーだけど良かった」としか言わないのだ。

「あ、これラストネームも入れるやつか……」

え? じゃあ……どうするか、男キャラで名前はさっき食べたサンラク・ グリルドマックロー(鯖の塩焼き) で。

じゃあ今回の「サンラク」たるサバ塩君のアバターを整えて……顎髭いいね顎髭、初期武器? サーベル……いや、トマホークにするか。てかちょっと待て、これ経営系のゲームじゃなかったか? なんでプレイヤーが武器握ってんだ。

「最期にスーツの柄……あの、時代設定……」

細かいことを気にしているとクソゲーの速度についていけないので、濃紺のスーツを身に纏いさっさとキャラメイクを終了する。

次にチュートリアル。

成る程? プレイヤーは経営モード時は「 大統領の栄光(プレジデント・オーラ) 」というスキルを使うことができて、戦闘モード時は「 大統領の威光(プレジデント・ビーム) 」を使えると……待てやコラ。

「オーラは光なのか? いや、栄光ならオーラでもまぁ納得は……しよう、うん」

問題はてめーだよ大統領ビーム。ゲームカテゴリわかってんのか、というかビーム出るようなファンタジー世界観なのか? お?

もういいです、戦闘モードってのがある時点で現場に直接赴くアグレッシブプレジデントってのは理解できた。経営一辺倒よりはやりやすかろうよ。

「旗のデザイン……」

作り込みは悪くないんだけどな……串刺しにした魚が焼かれるデザインで。完全に自作デザインができるわけではなく、ゲーム側で用意されたデザインの組み合わせのようだ。

この手の形式は本気を出せばアニメなどのキャラクターの形にデザインすることもできるが、俺にはそんな技能も時間もないので簡単なものにした。

「む、秘書のキャラデザ? 性格設定?」

えー? えー……まぁ秘書だって話だし性格はクール系にして……デザインをこう、こう、あとこうして……はい完成。

「名前? ライス・ミソー」

サバ塩、米、味噌汁。やっぱりこの黄金コンボだよな、美味しかったです。

「よーし出撃! 細かいことは現地学習だ!!」

目を覚ませば、そこは如何にも手入れのされていないボロいあばら家の中のようだ。

「……やっぱシャンフロと比べると挙動周りにちょっと違和感があるか。まぁアレがおかしいだけともいうが」

手を開いたり閉じたり、しばらく身体を動かして調子を確かめてから明らかに「これを拾ってね!」と言わんばかりに発光するトマホークを手に取る。良かった、あくまでもチュートリアル的誘導であって常時発光するクソ武器というわけではなかったらしい。

あばら家に斧を持ったスーツ姿の顎髭男。絶望的にミスマッチな状況だが、まぁいいとしよう。

「とりあえず大統領として何をすればいいのか全く分からないが……外に出てみないことには分からないか」

と、俺が今にも蝶番が外れそうな扉に手を伸ばすよりも先に、外側から扉がバタン! と開かれる。

「はぁ……っ、はぁ……っ! く、ぅ……」

飛び込んできたのは、くすんだ灰色の髪をショートカットにまとめたツリ目の女性だ。キャラメイクの時は無表情だったのでどういうキャラになるのかは分からなかったが……いざ実際に動いているところを見るとこれは中々良くできてるな。

「人……!? なんで、こんな戦場のど真ん中で……!」

成る程、情報ゲット。とりあえず俺は今人のいるような場所ではないところで呑気に眠っていたらしい。

「あー……ん?」

司会の左下に何やらウィンドウが。何々?

「あぁ、成る程……」

「………?」

訝しむような視線を向けるライスちゃんはひとまず置いといて、視界の下に表示された「推奨対応」を改めて確認する。

フルダイブギャルゲーだとよくあるシステムだ、世の中常に完璧なコミュニケーションができる奴ばかりではない。そんなわけでこの手の選択肢があらかじめプレイヤーにだけ提示されることがある。

というのはあくまでも名目、世の中全てのゲームがシャンフロ並のAIを積んでるわけじゃない。だからこそこうして選択肢を提示することで返答を絞っているのだ、だから多分ここで「君のパンツ何色?」とか「君の妹さんを紹介してくれ」とか突拍子も無いことを言っても訝しげな顔で見つめられるだけだろう。

さーて今回の選択肢は……

・怪我をしてるじゃないか! 何か治療できるものは……

・敵か? 数は、所属は?

・やぁ美しきお嬢さん、僕とお茶でもどうだい?

これ最初のやつ以外全部ネタでは? 二つ目は大統領っていうか精鋭部隊の隊員とかそういうのだし、三つ目とか完全にただのナンパ野郎だし。戦場だってさっき言われたばかりだよね? これだからクソゲーは……

「やぁ麗しいお嬢さん、男が寝ている場所に飛び込んでくるとは随分と勇敢じゃないか」

当然選択肢は最後のやつだ、当たり前だろゲームを楽しんでいこうぜ。

「何を言って……」

蹄の音。

「くっ……どなたかは知りませんが、巻き込んでしまったようです」

お? 左下の文章が更新された。

・蹴り開けろ!

成る程? 嫌いじゃないぜそういうの。左下枠君は粋のなんたるかを分かってるようじゃないか。

「下がってな」

はい……いち、にーの、さん!!

「ドアノックだオラァ!!」

「ぶげぁ!?」

お、案の定。

勢いよく蹴り開けられた扉が何かに激突し、その拍子に扉は粉微塵に砕け散る。

見れば如何にも「雑魚兵士A」な雰囲気を漂わせる軽装鎧の男が転がっており、その後ろには同じような装備に身を包んだ雑魚B、Cがいる。

「初戦闘としちゃ上等かな」

「な、なんだてめぇは!!」

お、左下更新。

・大統領だ!

・大統領だ!!

・大統領だ!!!

実質一択じゃねーか。

「俺は……大統領だ!!!!」

いざ、偉大なるステイツを目指して───!!