軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

竜よ、竜よ! 其の十九

「………いやいやいや、待ってくれディプスロさん。つまり……全部嘘?」

「んー? 隕石魔法に関しては全部嘘だねぇ」

あっけらかんと、ここに至るまでの全ての大前提を根元からへし折るかのような白状。数秒ほど呆然としていたトットリであったが、ハッと我に返るとディープスローターへと詰め寄る。

「い、いやいやいや! この状況でそれは笑えねぇって! どうすんだよ! サンラクの奴は隕石前提で戦ってんスよ!?」

「隕石前提で戦う、って字面面白すぎなぁい?」

「〜〜〜〜っ!!」

尚ものらりくらりと茶化すディープスローターに、業を煮やしたトットリは怒鳴り声をあげてさらに詰め寄らんとする。だがそれよりも先に突き出されたディープスローターの縦向きの人差し指がトットリの唇へと押し当てられる。

「しぃー、怒らない怒らなぁい? まずは落ち着こう……ね?」

穏やかな女性の声でそう言われて、尚も怒りを放出できるほどトットリは怒りに我を失ってはおらず、さらに言えば「実現杖ザ・デザイアー」を持つディープスローターであれば何か策があるのではないか、と渋々ながら一歩下がってディープスローターの言葉を待つ。

「……なんで、嘘なんかついたんだ?」

「え? なんでって……ぼかぁサンラクくんが苦難を乗り越えるのを見るのが大好きなんだぜ? そんな、ただ制限時間まで耐えきれだなんて、そんなそんな……」

何故か顔を赤らめて身をよじりだしたディープスローターに、トットリは心からドン引きすると同時にサンラクが何故ああもディープスローターを蛇蝎の如く嫌っていたのかを悟った。

「イ、イかれてる……」

「自覚してる」

だからこそ、とディープスローターは実現杖を構えて笑みの種類を変える。

「今からやるのはサンラクくんが知らない、サンラクくん ごと(・・) あの二体を仕留める魔法さぁ……!」

「なん……はぁ!?」

「何言ってるですわぁぁぁあ!?」

本当に同一人物なのかも疑わしい凶悪な笑みを浮かべて告げた言葉に、トットリのみならず遊撃から合流したエムルすらもが叫ぶ。

「大丈夫大丈夫、サンラクくんは大概頭おかしいから普通に許してくれるって」

「いや、いやいやいや! レイド戦でFFされるとかリアルファイト案件ですよ!?」

「───それはこまるなぁ」

でもね、と実現杖を動かしながら大きく息を吸い込んだディープスローターは、そのまま目まぐるしく動き回るサンラクへと大声で問いかけた。

「サンラクくぅーん! 諸共巻き込んじゃっていいかなぁーーーっ!?」

数秒ほど返答はなく、荒れ狂う大質量の猛威の中で巻き上げられる土煙。それを掻き分けるようにしてステップと呼ぶには少々飛距離の大きすぎる後退をする喪服の女が真紅の閃光を避けながら叫ぶ。

「死ね!」

「オッケーだってさ」

「いやどこが!?」

「まぁ確かに「駄目」とは言ってないですわ……」

いつまで経っても落ちない羽虫に、いい加減業を煮やしたのか(業を煮やす、という感情が貪る大赤依にあるのかは別として)再生した尻尾だけではなく、四本ある胴体から生えた首のうちの半数を含めた合計三本のレーザーがサンラクを狙う。

「なんであんな当たり前のようにモンスターと共闘出来てるんだ……」

「どっちも戦い方が大味なのもあるんだろうねぇ……さぁて、やりますか」

実現杖ザ・デザイアー。今はまだその名を知られぬ「具現杖」と対を成すこの杖は、対を成す杖と同質の力を、その名の通りの能力を持つ。

これはディープスローターと、 魔女教会(ウィッチャーチ) のリーダーだけが知る言葉。実現杖ザ・デザイアーが安置されていた祠に刻まれた一文こそが、実現杖の本質をこれ以上なく明確に述べていた。

〜 欲望に果てはなく、故にこそ我は汝に寄り添うもの 〜

「じゃあ今回は大盤振る舞いだぁ…… 二十倍(・・・) 行ってみようかぁ!!」

トットリの目からは如何なる操作をしているかを理解できるはずもなく、いくつかのアクセサリーを取り替えたディープスローターは心底楽しげに実現杖へとある魔法を 装填(リロード) する。

それと同時に実現杖の捩れた無限の輪の中心に浮かぶ宝玉が輝きを増し、モノリスが等間隔にその円周を大きく広げながら回転していく。

「ふむふむ……おやおやぁ? これもしかして、案外嘘から出た真ってやつかなぁ……?」

「いやあの! ディプスロさん具体的にどれくらいの範囲を───!?」

「さぁ? セットしたのが二メートル四方だから二十倍……ここら一帯吹き飛ぶんじゃなぁい?」

「全員退避ーーーーっ!!!」

わぁ、と待ってましたと言わんばかりに森人族達が逃走を開始する。

ディープスローターのますます深まる、しかして何処か祈っているかのようにも思える笑みを作っていた口が、その魔法の名を唱える。

「───どうか君の真価をまた見せて欲しいよぉ……【 地殻(ウラノガイア) 天移(・テクトニクス) 】!!」

所有者の望む 倍率(欲望) を実現する、故にこそディープスローターが設定した「 引寄転移(ジョウント) 」の効果、範囲、コスト……あらゆる要素が「二十倍」となった新たなる魔法が今この瞬間、使い手へと提示された。

それはまるで、今この瞬間に 魔法を創ったか(スペルクリエイション) のようで。

「知ってた」

どうせどこかしらでやらかすとは思ってましたよ、うん。

ペンシルゴンの場合は一緒に悪行の引き金を引かせる邪悪だが、こっちは事故を装って後ろから背中を撃ってくるタイプの邪悪だ。

まとめて「 傷だらけ(スカー) 」と貪る大赤依を屠る、って聞いた時点で「それ俺も含まれてねぇ?」という疑問が常に俺の後ろ髪を引っ張っていた。ドンピシャで大当たりだったわけだ、掛け金何倍? 誰もディープスローターが本当のことを言っている、にベットしてないから賭けにならない? はははクソが。

ただな……

「悪辣さが桁違いすぎんだろうがぁぁ!!」

まるで大地を支える土台そのものが前触れなく綺麗さっぱり消失したかのように。数十メートル規模で「陥没」した大地に赤い竜巻を背負う怪物と、黒煙噴き纏う怪物と無害な人間一人が落ちていく。

言葉が通じる俺ですら予想外の落下だ、貪る大赤依や「 傷だらけ(スカー) 」がそれを予測できるはずもなく、ジタバタともがきながら落ちる二体のモンスターはギャグっぽくて少し可愛い。だが死ね、死んで経験値とアイテムになれ。

「くっ……どうする? いけるか?」

成る程、上と思わせて下にアプローチをかけるのは奴らしい、後で殴る。

だがここで一つ疑問がある、奴がどんな手段を取ったのかはこの際どうでもいいとして……奴が消した大質量の土やらなんやらはどこに行ったんだろうか?

なんて事はない、 見ればわかる(・・・・・・) 。

「あ、あんのクソ変態がぁぁぁ!!」

地盤が消失した地面の直上、即ち俺の真上に浮遊する規格外質量。いいや違う、あまりに大きすぎて落ちてくるのがスローに見えているだけだ。

要するに、あの変態クソ一人劇団はこの大地でダルマ落としをして、引き抜いた地盤で俺達をサンドイッチにするつもりらしい。よーしあとで半殺しにする為にも絶対生き延びてやるァ!!

よーし落ち着け、スキルを使えば落下死を免れる事そのものは難しい事じゃない。壁際で 重律踏覇(エクシードグラビティ) と 無重律の恩寵(スペースチャージ) を使って横向きに直立しつつ……はい作戦会議。

プランA、全力で駆け上ってサンドイッチから脱出する。最有力だが瓦礫が怖い、封雷の撃鉄・災は必須なので一発でも瓦礫に被弾すればそのまま死ぬ。

プランB、インベントリアエスケープ。格納空間から現実空間へ戻った時に土の中に出るのか地上に出るのかが不明なので危険すぎる。

プランC、地下を掘って脱出……んー、 鶴橋(ツルハシ) じゃなくてスコップを持っていたのならワンチャンあったな、却下。

ここはやはりプランAで……あれもう地盤がそこまで、ってか間に合うか!? 思ったよりタイムリミット速いんだが、あれこれ詰ん

「Ooi」

はい?