軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ブリュンヒルデ・バスカヴィル三世(14歳)

【旅狼】

サンラク:突然ですがアンケート

ルスト:アンケート?

サンラク:なんか適当にカッコイイ名前言って

ルスト: 絶対零度(アブソリュートゼロ)

秋津茜: 黒天無塵鎌(ノーブルー・サイスレント) !

オイカッツォ: 血液感染(ブラッド・インフェクション)

鉛筆騎士王:ブリュンヒルデ・バスカヴィル三世

サンラク:誰それ

鉛筆騎士王:リアルでけったいな内容のファンメールを送ってきた子が名乗ってた名前

鉛筆騎士王:この私相手に超上から目線でアドバイスしてきた勇気を称えて三年後くらいに大々的に弄ろうかなって

サンラク:鬼かな?

京極:サンラクぅ……君も幕末の世界に戻ってきなよぉ……今楽しいことになってるからさぁ……!

サンラク:幕末プレイヤーの誘い文句とか天誅予告と同義なんだよなぁ……

京極:あのリスポン地獄から抜け出すのにどれだけかかったと……!

京極:なんか忍者みたいなのに奇襲されるし! 全く身に覚えのない仇討ちのターゲットにされるし!

サンラク:あぁ、仇討ち感染か……あれ上手い人は数十人規模で巻き込むからなぁ

鉛筆騎士王:幕末キライ、あいつら会話能力を殺傷力に変換してるもん

オイカッツォ:世紀末円卓より「こんにちは!死ね!」がデフォルトな世界があるとは思わないよね普通

サンラク:どちらかというと「死ね!(意、こんにちは)」かなぁ

京極:それはそれとしてカッコいい名前…… 極(アルティメット) ・将軍とか

サンラク:却下

京極:いつか絶対天誅してやる……!

モルド:というかなんのアンケート?

サンラク:実はシャンフロ内で高い買い物をしたんだけど買ったものにまだ名前が付いてなくてだな

ルスト:……何を買った?

サンラク:それは秘密

「どうしよう、このままだとブリュンヒルデ・バスカヴィル三世が最有力候補になりかねんぞ……」

くっ、肝心な時に使えない奴らめ。

とはいえ「完成」までにはまだもう少し時間がかかる、というのが設計者の言だ。

フフフフフ……こと鉱物資源という点で現状俺に匹敵するプレイヤーはそうはおるまいて。購入費と改造費込みで合計 四十九億マーニ(・・・・・・・) もブッ込んだのだから、相応の働きはしてもらわねばなぁ……!

「あー……こういう金銭感覚狂ったショッピングは最高だな……」

「ほ、ほぁぁぁあ……! アタシは今一億マーニを抱えているんですわ……!?」

積み上げられた魔道書を抱えながら喜びと荷重にプルプル震えるエムルを眺め、ふとロクに装備を強化していないなと思い立つ。つまり吉日なので即行動しよう。

「おーっしエムル、どうせならお前の装備も大々的に強化すっぞオラァ!」

「うひゃあサンラクサン最高ですわーっ!」

「来たる新大陸でも働いてもらわないといけないからなァ……!」

「うひゃあ……」

はははエムルよ、死んだような目をしてどうした? どちらにせよ俺とパーティ組み続けるならリュカオーンやゴルドゥニーネとほぼ確実にぶつかるんだぜ?

折角の 頭に乗る重(オプション) さと大きさ(パーツ適性) 、もっと活かしていかないとなぁ?

というわけで現在、懐かしの第一エリア「跳梁跋扈の森」に来ています。

「見ろよエムル、ゴブリンが泣き叫びながら逃げて行く姿ってレアじゃね?」

「リュカオーンに遭遇するモンスターってあんな感じですわ?」

「おいおい失礼な、それじゃまるで俺がモンスターみたいじゃないか?」

「うわっ!? なんだこいつ、モンスター!?」

「と、鳥頭の……原始人?」

「レアエネミーだろ! 倒そうぜ!」

「プレイヤーなんだよなぁ……」

ちなみにこれで十二回目のモンスター誤認だ。このエリアのレアエネミーがヴォーパルバニーなせいでエムルが襲われかねないのでマフラーモードだ。

女体化聖杯はなんかもう単純に面倒なのと、ギルドに登録する時に性別が違うと不都合があるのではという予想から使っていない。

「あーなんか懐かしいなぁ、割と最近なはずなんだが遠い日の思い出みたいに感じる……」

「アタシはここを駆け抜けた頃のサンラクサンを知らないですわ。でも絶対それ以降の密度がヤバすぎるってことは分かるですわ」

「大体ペンシルゴンって奴のせいなんだよなぁ……いやマジで」

少なくともサードレマで阿修羅会に絡まれたのも、ウェザエモンを倒したことで面倒事に巻き込まれるのも…………

「やっぱ分かっちゃいたけどあいつのせいだな」

「前々から薄々思ってたけど、サンラクサン元凶は自分じゃないって事を大義名分にしてないですわ?」

「ソンナコトナイヨ」

まぁでも困った時は「アーサー・ペンシルゴンにやれって言われました」という言い訳を切る用意は常に用意してるよ。

進むたびに初々しさを隠しきれないプレイヤー達とすれ違う。どいつもこいつもギョッとした目で半裸の俺を見てから「あぁ装備買う金もないんだな……」みたいな目を向けてくるが、むしろ俺と同じ選択をしたらしい半裸に馬頭のプレイヤーとすれ違った時の「友よ!」みたいな視線の方が個人的に堪えた。別に俺は望んで半裸ってわけじゃないからな! 望まざる半裸だからな! いや、まぁ最初は見た目より金を優先して半裸になったわけだけど根幹にあるのは半裸願望じゃなくて金だからつまり資本主義万歳。

「さて、いよいよ到着だな」

「見えてきたですわ!」

きっと、こちら側からの光景を見るプレイヤーはそう多くはないだろう。

誰もが「一」から「二」へと進む旅路の中で、逆行するように開ける森の景色。その先に見えるは開拓者達が降り立ち、未知へと旅立つ足場となる最初の街。ともすればサードレマと同等かそれ以上の盛り上がりを見せるその街は名を「ファステイア」と言う。

「セカンディル以上サードレマ以下、ただし広さはサードレマ級ってところか……?」

「と言っても広場が多いから広い、って感じですわ」

もう新大陸に王手な状況で最初の街を初訪問、ってのも中々に感慨深いものがあるな……

新たな旅立ちの地故に栄えていたフィフティシアのような港町ではなく、三つの選択肢の前に立ちどまる場所として存在するサードレマのような台地の都市でもなく。

広さはある、建物もそれなりにある、だが絶妙に田舎臭い。なんというか若さに任せて飛び出したくなるような正しく「一番最初の旅立ちの街」という感じだ。

「す、すごいわちゃわちゃしてるですわ……!」

「これでも大人しい方っぽいけどな」

ともすれば大都市に匹敵する 開拓者(プレイヤー) の群れ、夏休みシーズンとか相当ヤバかったと話には聞く。まぁ流石に一ヶ月以上この街に留まり続ける理由もなし、殆どのプレイヤーはセカンディルかサードレマを拠点としているだろう。

つまりここにいるのは文字通り新たに参入した新規だけでこの混雑っぷりという事だ。深夜帯であるというのにこの盛り上がり、この1%でいいから「便秘」とか「危牧」に分けてくれねぇかなぁ……クソゲーだから無理か。

スリリングファームはいいぞ、トイレに行くような頻度で核シェルターを使用する危険環境下での農業は「努力が必ずしも結ばれるとは限らない」という残酷な真理を作物の全滅という形で教えてくれる。それ以上に「適材適所の重要性」を知る事が出来るけどな!

「……エムル、静かにしておけよ?」

「はいなっ」

さて、傭兵ギルドに登録して「証」を手に入れたらさっさとオサラバして……いや何処だよ傭兵ギルド。

当たり前だが初めて来た街の何処に何があるか、なんて知る訳がない。とりあえず観光がてらファステイアという街を探索してみるか。

「成る程……新規で街が溢れかえるのは想定済みだからショップは大多数を想定した露店型なのか」

大量に押しかけてくるプレイヤーを捌くため、横一列にテーブルを並べてその上に回復ポーションやら薬草やらを並べたおばちゃん達が喧騒を押し返さんばかりの大声で客を捌いている。

中にはゲーム故の悪戯心で並べられたアイテムをスろうと手を伸ばす不届き者もいるが、明らかにAGIの足りたはたき落としと睨みつけによって窃盗が未然に防がれている……いや待て瞬間速度だけならシルヴィア・ゴールドバーグくらいなかったか今の? あのおばちゃん、出来るっ!

「………兎が」

「……蛇が……」

「毒を……」

うーん、色々心当たりのある単語が漏れ聞こえてくる。どうやら既にこの街から飛び出し、そして死に戻ってきたプレイヤーも結構な数いるようだな。

このゲーム、一応跳梁跋扈の森がチュートリアルなんだろうけど普通に初見殺しカマして来るからな……思い出したらなんか腹立って来たぞあのクソ蛇、ヴォーパル魂ノルマが無かったらイジメに行ってもよかったんだが。ていうかアイツ、もしかしなくてもゴルドゥニーネの縁者じゃね?

「くっ、どいつもこいつも似たような装備しやがって……」

いやまぁ始めたばかりのプレイヤーが殆どであり、態々戻ってくる理由も薄い以上殆どがキャラメイクした程度の連中だ。

つまりせいぜい二、三種類の中から選ぶことになる初期支給の装備を着たやつばかりという事であり、多少のカラーリングの違いや装備の違いこそあるが、なんだろう……ヒヨコの性別を見分けるアレを彷彿とさせる。

「つまり逆説的に半裸こそが稀少性を持つアイデンティティを確立している……?」

お、凝視の鳥面だ。

強く育てよ新人、 泥掘り(マッドディグ) で詰みかけるが回避特化なら終盤まで使える装備だぞ……

と、なにやら混雑的喧騒とはまた違う騒めきが目に留まる。

「なんだなんだ?」

長身アバターを生かして背伸びして見えたそれは、初々しさ剥き出しな新規の街にしては不釣り合いな 慣れ(・・) を感じさせるプレイヤーが相対している光景であった。

「勝った負けたは二の次!」

「スク水は持ったな?」

「おうとも!」

「いざ尋常に……」

「「勝負!」」

いやマジで何してんだこれ。