軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

剣狼相対すは雷火の獣 其の一

上位職業「 破壊者(デストロイヤー) 」の固有スキル「スクラップアンドビルド」は装備した武器の耐久度をゼロにする、すなわち破壊する事で消費した耐久度に応じた攻撃力補正を付与する。

そしてシャンフロにおける武器の耐久度は当然レアリティに比例する。もし仮に水晶群蠍、金晶独蠍の素材に高レア鉱物をふんだんに使った煌蠍の籠手を消費したならば、最上位職業をも凌駕する火力を獲得できるだろう。

そして「皆伝の手甲」は職業「 修行僧(モンク) 」が戦闘方面に派生するジョブビルドを行った際の最終クエストの報酬として与えられる武器であり、そのレアリティは確定報酬としては破格の耐久力を誇る。

修行僧から派生する破壊者の固有スキル、何度でも発注可能なその最終クエストからして 狙っている(・・・・・) としか思えない組み合わせであるそれは攻略サイトでは破壊者ビルドまでの流れ、その基本形として登録されている。

そして何より、「素手」という条件を達成した事で培ってきた修行僧のスキルを使用する事ができる。

「黄、赤……二色混合【拳気「大橙衝」】!」

クリティカルの威力を上げる橙色のオーラが拳に宿り、スクラップアンドビルドの赤いスキルエフェクトと混ざり合ってそれはさながら炎の如く。

「一分でノックアウトしてあげるよ」

「ぬかしたな!」

煌めくスキルエフェクトの数々は間違いなくトップクラスのプレイヤーの証に他ならない。

「剣聖ジョブさえ取得できれば、あの「五重奏」を自分も使えるようになればサイガ-100すら超える」……そう自負するリベリオスのそれが事実かどうかはさておき、レベル99Extendのステータスで振るう凍結の魔剣は当たればオイカッツォの体力の殆どを削りきることも容易いだろう。

「悪いね、 人型(・・) を崩すでもしない限りこの距離なら基本負けないんだよ俺」

「なんで……っ当たらな……っ!?」

剣の腹を拳打で弾く、付与される凍結によるデメリットをそれ以上のバフで問題なしと断じてさらに殴る。

そもそも拳闘士系のジョブが剣士系のジョブに対して最大の効果を発揮する距離は 超至近距離(インファイト) 、リベリオスが距離を離さんと一歩後ずさればオイカッツォが一歩詰め、魔剣によるあらゆる攻撃を至近距離を維持したまま対処する。

「一応公式じゃ八割切った事なくてねぇ……ここまで詰めて対処できる奴は俺が知ってる限りじゃ五、六人くらいかな?」

意図的に急所を外した一撃、打撃点にリベリオスの意識が向いた瞬間別方向からの本命がリベリオスの顎を打ち抜く。

怯みモーションにふらついた魔法剣士の手に回し蹴りが叩き込まれ、凍て付く魔剣がその手から離れる。

「隙ありってね」

「かかったな!」

「ああごめん、それ知ってる」

「なぁっ……」

無手になったリベリオスへ攻勢を仕掛けるオイカッツォ。その瞬間、己の隠し球が効果を発揮すると勝ち誇りながらもう一本の魔剣、敵を焼く炎の魔剣を振り……無情にも己の上司によって横流しされていた情報によって それ(・・) を把握していたオイカッツォは難なく対処。

「まぁ、なんというか……対人特化、という意味なら 僕(・) 以上のやつは早々いないんじゃないかな、相手が悪かったね」

「そ、そんな……」

「赤、青、黄……」

鮮やかな三色のエフェクトが混ざり、漆黒へと変じる。

リベリオスは戦う手段を全て失ったわけではない、インベントリの中にはまだ武器があるし、回復アイテムだってある。

だがもっと根本的な部分で彼は両手を上げてしまった、故に対応できない。

「三色混合【拳気「過重黒衝」】!」

爆ぜる。かつては強大な戦術機馬をも打倒せしめた漆黒の衝撃がリベリオスの腹部で炸裂する。

鍛え上げたステータスを信じ頼っていたからこそ、そして 対人戦対策を(・・・・・・) 怠っていた(・・・・・) からこそ、リベリオスの防具は見た目を重視した軽装であり、腹部に装甲が無いという致命的な欠点を文字通り突かれたのだ。

「ぉ、ご……っ!」

折れたのは果たして身体か、心か。真横に吹っ飛び、地面を転がりながら闘技場の壁面に叩きつけられたリベリオス。

「それでも……リーダー、なら……」

崩壊。互いにペナルティのない勝敗が定められ、闘技場にはオイカッツォただ一人が立つ。

「とりあえず三抜きしたわけだけど……」

なるほど確かに戦術機獣はエネルギー切れ、三人目で隠し球の破壊者も晒した。手札のほとんどは晒し切ってしまった。

「とはいえ、全抜きしちゃダメってわけでもなし」

残るは一人、クラン「黒狼」団長サイガ-100のみ。

「で? なんでカッツォに全抜き命じなかったんだ?」

最初は向こうの面子を保つためにわざと負けろとかそういう意図かと思ったが、オイカッツォに「負けろ」と命じるわけでもなく、いまいちその真意が読めない。

だが意外な事に、そう本当に意外な事にこの場において理解していなかったのは俺ただ一人であったらしい。

ペンシルゴンは苦笑いを浮かべ、京ティメットは好戦的な笑みを、そしてレイ氏は申し訳なさそうに身を縮こませて。

「まぁ、シンプルな話だよサンラク君。例えば……あー、そうだね、例えば 一般的に(・・・・) クソ強いレイドボスにソロで勝とうと思ったらどうするべきかな」

「なんで一瞬俺見て言葉止めた? まぁいいや、そりゃレベリングして装備整えて攻略情報漁る、とかだろ」

まぁ、俺が参考にならんことくらいは分かるよ。一般的なゲーマーに「クソゲーで経験値貯めてプレイヤースキルとユニークで削り殺す」は適用できないだろう。

視界の端で闘技場にサイガ-100が降り立つ。

「そうだね、じゃあさ……」

携えた黄金の剣がオイカッツォへと突きつけられ、

「ほぼ一年間みっちりリュカオーンを倒す為だけに徹底的に鍛え上げてきたプレイヤーってどれくらい強くなるもんだと思う?」

飛翔する(・・・・) 四本の剣(・・・・) によって滅多斬りにされたオイカッツォが 即落ち(リスポーン) した。

呆然の表情で現れたオイカッツォが口を開き……

「……………………えぇ」

こればっかりはあまりにアレ過ぎて煽れんわ……やっぱ後で煽ろう。

「何今の」

「剣士系最上位職業「剣聖」の固有魔法【 従剣劇(ソーヴァント) 】、最大四本まであんな風に遠隔操作出来て、手持ち含めた五本……「 五重奏(クインテット) 」スキルも行使する、判明している限りじゃユニークを除いてシャンフロでの「前衛最強職業」って言われてるジョブでねぇ……」

「さらに言えばサイガ-100の「五重奏」はユニーク中のユニーク武器たる「聖剣エクスカリバー」を筆頭に「聖槌」所有者が作成した「超猫じゃらしLv.100」や、それ以外にも魔剣やらなんやら……まぁ、笑っちゃうくらいのスペシャルチューンだよね」

「ちょっと待て今クソ面白い単語が混じらなかったか?」

「斬りつけると最大30ヒットするとかいうド畜生兵器だけど」

何それこわい。

「あー脇腹をギョリギョリ削ってたのはそれかぁ……」

「その……姉の、場合……魔剣の効果もフルで、使うので……実質「後衛能力も備えた上に中距離も強い前衛」と言いますか……」

「そもそも近づかせてくれないからインファイトも出来ないっていうね」

「何そのクソゲー特有のヤケクソ調整」

あるよね、とりあえず最強武器を強くしようってバランス調整ミスった結果、「最速でそれ確保すればあとはよそ見してても勝てる」ってなるやつ。

そういうのに限って序盤で入手できるバグとか見つかってヌルゲー化して、ストーリーもつまらないもんだから目も当てられない蹂躙ゲーになるんだよなぁ。

よく強者との戦いに餓えた戦闘狂キャラっているけど、ああいうのの気持ちが分かるんだよ。

「これガワがバリエーションあるだけで戦いの楽しさもへったくれもねぇな」ってなるんだよ、ノートに同じ文字をただひたすら書き込むような無常さを感じるんだよ。

「クソゲー?」

「あー最近はシャンフロセラピーでマトモに戻ってきたと思ったけどやっぱり根っこが腐ってちゃ救いようがないね、気にしないでいいよ京極ちゃん」

「ぶっ飛ばすぞワレ」

「残念、今から私をぶっ飛ばすのはモモちゃんなんだよねぇ……本命のお二方には是非とも彼女の弱点を見つけて欲しい、私はその礎となるのだ!」

綺麗事の方は無視するとして、どうやら次の生贄に自ら立候補するらしいペンシルゴン。

装備を ガチ仕様(・・・・) に変えたのか、サイガ-100が持つ黄金の剣とデザイン的な共通が多く見られる槍を携え、防御力の薄そうな軽装に着替えたペンシルゴンは堂々と闘技場へと立つ。

「さぁ来なよモモちゃん! 具体的にどうと言われると困るけどぶっ飛ばしてあげよう!」

「ヘソ出しだね」

「私アレ着る度胸ないなぁ」

「そ、そうです、ね……」

「羞恥心と良心を母親の腹に置いてきた女の異名は伊達じゃないな」

「今用意できる最上級がこれしかなかったんですぅー! というかそこの半裸! 流石の私も羞恥心は持ち合わせてるからね!?」

良心は?