軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

英傑の残照

神代の加護を受けた「開拓者」は他の人類種と比べて急激な実力向上が起こりやすい。

そして死亡したとしても最後に休息した場所に転移して何事もないように動き回る。

さらに個体差はあるが数週間眠り続ける者もいれば、短い仮眠以外休息を取らない者もいる。

そして死なないように思えるが、ある日ふっと 消えてしまう(・・・・・・) 事もある。

上から順に「レベルアップシステム」「リスポーンシステム」「ログインログアウトシステム」「引退」となるわけだ。

成る程、陽炎より安定しない生物だな 開拓者(プレイヤー) ……

「つまりプレイヤーという立ち位置そのものが世界観として設定されてたって訳か」

ただ単に世界に住む原住民としてではなくプレイヤーそのものが何故異様に強くなるのか、変なタイミングで活動するのかなどを設定にしている……うーん。

「これわざわざ設定にする程の事か……?」

ぶっちゃけ「そういう生態の生物です」なんて設定を付けなくても誰も気にしないと思うんだがな……いや、この場合は明確にNPCとの線引きとする「一号計画」「二号計画」があるからこその区別化なのか?

「号」という単語は差異こそあれ同じ目的、用途で関連付けられるものに与えられる記号だ。つまり一号計画と二号計画は内容の違いこそあれ、最終的な目的は同一である可能性が高い。

古城骸の地下で見つけた映像、墓守のウェザエモンと遠き日のセツナ、ルルイアスに残された手記、謎の「Ω」……おおよその骨格は見えてきたがまだ肉をつけるまでには至っていない。

やはり鍵を握るのはバハムートなのか。ユニークモンスター関連でも結構情報が齎されるが、結局のところ主役というか話の中心はユニークモンスターだからな……

「そういや他の二人は?」

「秋津茜サンは足の調子を確かめるー、とか言って走って行ったですわ。サイガ-0サンは一回起きたけど今は寝てるですわ」

ログアウトかな? まぁいいや、あの二人にとってはただの防衛戦かもしれないが俺は別件が残っているし。

どうせこの後にもやる事があるんだ、徹夜したらぁよ。エナドリもう一本開けるか……

「さて、行きますか」

「エードワードおにーちゃんのお見舞いですわ?」

「ポーション風呂にでも沈めときゃええやろ、それもあるがわざわざゴルドゥニーネに喧嘩売った理由は別にあるだろー」

「刻傷」の克服、産廃ルートまっしぐらな冥輝君を救う為に呪いを上書きして相殺する手段を獲得する。

その為に必要なアイテムはゲットした、ついでのオマケもあるのでそれも含めてお楽しみの武器作成タイムだ。

ラビッツ、兎御殿には二つの鍛治工房が存在する。一つはビィラックの工房、古匠を獲得したせいか最近はSF味が増してきた。

そしてもう一つが兎御殿の主、ヴァイスアッシュの工房だ。華美にあらず、されど道具の一つ一つに命が宿っているかのような場所……そこにヴァッシュはいた。

「おう……来たかぁ」

「なんだかんだと邪魔は入りやしたが、ゴルドゥニーネの「呪い」……確かにここに」

取り出したそれは、紫色の液体を内包した掌サイズの水晶体。

アイテム名は「成分結晶:ゴルドゥニーネ・カースドポイズン」、ただでさえ長ったらしいモンスター名を加えて更に長くなったが「呪い」の採取に成功した確かな証だ。

「そして もう一つ(・・・・) 」

負け色濃厚な時間稼ぎ中、別に回避に徹し続けていたわけじゃない。隙あらばデコピンを叩き込む事を目標とし、鬱陶しい龍蛇の牙くらいもぎ取れないものかと色々と足掻いたりしていたのだ。

まぁ結果としてはお察しなのだが、それでも多少は攻撃に成功しているし足掻いたおかげで あるもの(・・・・) の発見に至ったのだ。

「ゴルドゥニーネが引き連れていた四匹の蛇……そのうちの一匹の背中に刺さってたんでさぁ」

お陰で腕一本を犠牲にする羽目になったが、意地と根性で回収したそれはカテゴライズするにしてもあまりに長い……

「えーと? 名は「朽ち果てたアラドヴァル」……っおぉ!?」

がしっ、と。

転移魔法でも使ったのかと勘違いする程の身のこなしで俺の腕を、そして取り出された 錆び付いた大剣(・・・・・・・) を掴むヴァッシュ。縮地か、縮地ってやつか。

「えーと……?」

「おぉ…… そこにいたのかよぅ(・・・・・・・・・) 、ドルダナ……」

普段の余裕のある態度はどこへやら、一気に老け込んだかのようにじっと錆び付いた大剣を見つめるヴァッシュ。

なにやらフラグを踏んだ臭いがあいにく俺はドルダナなる人物については知らないし、何か特殊なイベントでこれを入手したわけでもない。

いや、 特殊(ユニーク) っちゃ 特殊(ユニーク) だがジェットコースターみたいに突っ込んでくる龍蛇の上をルームランナーみたいに全力疾走してる最中に刺さってたのを引っこ抜いただけだし……まぁお陰様で身動き取れなくなって右上野郎に腕食いちぎられたんだけど。

調べたら特にゴルドゥニーネに対して有効とかそういうわけでもない錆び果てた産廃だったんだから笑い話だわな。

まさか聖剣とかそういう系の刺さり方してたくせに産廃とか、ハハハ……とか思ってたらヴァッシュのこの反応ですよ。片腕食われた価値はあったんだなアラドヴァル君。

「あー……なんか兄貴に縁のあるモンっすか?」

「………………いんや、今となってはただの 鈍(ナマクラ) よう」

なんでもないならそんな全力で言葉を飲み込んだような顔はしないんだよなぁ……ギャルゲーだと特定モーションや表情がフラグに直結している事が多いからこの手の感情機微には聡い方だぞ俺は。

「どうせ大剣ですし、なんなら兄貴に納めても構いやせんが」

「おうおう、いっちょまえに気遣ってぇくれるじゃねぇかぁよう……だが、 いい(・・) 。何処も知れず消えたぁもんが今ここにあるってぇこたぁよう、そりゃあ「縁」ってぇやつよ。つまりこいつぁおめぇさんが使うべきなのさ」

「はぁ……」

そういうものだろうか、なんだなんだ最近乱数の女神様微笑みすぎだろ。これ絶対揺り戻しが来るぞ、フィーバーの法則だっけ?

「こいつぁむかぁしむかし……ずぅっと昔の俺等ぁのダチが使ってたモンでなぁ……正確には大剣じゃあねぇ」

確かに大剣にしては妙だ、いや実在したタイプの大剣はいわゆるゲーム的「もう板じゃん」な大剣ではなく細身であるものが多いが、この錆び付いた刃はそういうのとは何かが違う。

「こいつぁ……巨人の槍、その穂先よ。どこぞの馬鹿がへし折って直剣として使ってたがなぁ……」

巨人の槍……成る程、違和感の正体はそれか。大剣ではなく、サイズ比が狂ってる槍の穂先だったと。いや待て刀身だけで一メートル以上あるんだぞ? 剣槍タイプだとしても二メートル、三メートルはあるわけで……でもこの横幅的に普通の槍サイズ? 五メートルくらいあるのでは?

「神代のモンじゃあねぇ、 世界が産んだ(・・・・・・) モンでもねぇ、確かに誰かが握り、携え、振るったもの……そう言うのをよう、「 英傑武器(グレイトフル) 」ってぇ言うのサ」

「グレイトフル……」

うん。

考察はまた今度でいいですかぁ!?

「…………」

「うわっ、死んだ魚がいる」

「うるさい仮釈放……」

「保釈金後払いなだけですぅー!」

「それいろんな意味でダメなのでは……?」

さぁ、楽しい楽しい対エネミー戦の後は楽しい楽しい楽しいたのしい対人戦だ。おかしいな、フルダイブしてる以上肉体側の感覚はほぼ感じないはずなのに舌にエナドリの味が残ってら。

牛乳で割って飲んだんだけどなぁ……