軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

満身創痍の鬼ごっこ

「うおおおお!?」

自称ゴルドゥニーネは身を以て教えてくれた…… アレ(・・) に捕まったら死ぬ、と。いや見りゃ分かるので無駄死に感が酷いがストーリー進行における強制イベントっぽいので成仏してほしい。

ガヂン! とおおよそ蛇の顎門から出る音ではない牙と牙の激突音がすぐ背後で鳴り響く。

なんとなく詰み感が漂っていたので念の為に瑠璃天の星外套を外しておいて正解だった。今の位置、間違いなくマントをはためかせていたら喰いつかれていた。

「あっ、馬鹿やめろ先回りは死ねるだろうが!」

タイミングと位置を合わせて拳が地面に激突する寸前に走りながら晶弾発射、着弾と同時に前へ進んだ分拳が叩きつけられる場所がズレて丁度晶弾を起動できる位置を叩く。

水晶柱に飛び乗ってジャンプ、前方から俺を丸呑みにせんと口を大きく開いて突っ込んできた龍蛇の突進をさらに空中でフリットフロートを起動して回避。壁に足が触れたところでグラビティゼロ、オーバーフローも合わさって猛烈な速度で走り出す。

「くそっ、ミスったか……!?」

思わずラビッツ側に逃げてしまったが、どうせ死ぬならゴルドゥニーネ側に逃げて情報収集すべきだったか。いや待て、逆にこれラビッツまで逃げ切ればなんとかなるんじゃないか?

今までラビッツに侵攻していたのは自称ゴルドゥニーネ……もとい分け身だった。本体が現在進行形で俺を追いかけている以上、別にゴルドゥニーネがここには入れないという制限は無いようだ。では何故今まで分け身に侵攻を任せていたのか?

ああそうとも、ラビッツにはヴァッシュがいる。十中八九ユニークモンスターのヴァイスアッシュがいる、恐らくそれがある種の抑止力になっていたんだ。

というかクターニッドの真理書やゴルドゥニーネを見るに、ええと……「墓守」「夜襲」「天覇」「深淵」「冥響」「無尽」だから……「不滅」のヴァイスアッシュになるのか?

「っだぁぁ危ねえっ!?」

クソ、見た目通りの頑丈さでゴリ押ししてくるとか……!

顔から思いきり壁に激突した龍蛇を壁面フォーミュラドリフトで回避したのはいいが、ただでさえ加速している最中にさらに加速するような真似をしたせいでドリフトと言うよりもスリップに近い状態になる。

「お、ととととと……ぉっ!?」

一瞬身体が制御不可能になるが、ここで焦ると派手にすっ転ぶ。落ち着いて……おや、丁度いいところに道が。

「背中借りるぜ蛇野郎!」

リキャストが終わり次第ノータイム再起動で酷使し続けている遮那王憑きの効果で上昇した跳躍力で天井から地面へと跳び上がる。

両足が離れた瞬間、スキルによって歪められていた正しい重力方向によって一気に真下へと引っ張られるように落下するが、丁度真下で首を持ち上げていた龍蛇……クソ、どいつもこいつも似た見た目してるからこんがらがってくる。空中で体の向きを直しつつ宙返り、そのまま龍蛇の背中を滑って降りる。

クソ、今の着地は流石に瞬刻視界を使わないと失敗する。本当にヤバい時に使わないとリキャストが足を引っ張りかねないと言うのに……おや、何やら後ろから毒の大剣が。

「うぐっ!?」

煌蠍の籠手を収納! クソが、左腕がやられた!

自称ゴルドゥニーネと同様にあの毒は「呪い」であるようで、先程から刻傷がものすごい勢いで毒をレジストしているのだが、そのせいで左腕に電流を流され続けているような感覚が消えない。

ダメージは……多分幸運の効果で耐えたか? 最後の予防線を使わされてしまった、というか本体は毒武器飛ばせるのかよ卑怯くせぇ!

「まずは左腕……ウフフ、さぁ泣き叫んで逃げなさい鼠さン?」

「クソガキめ……」

もう一度デコピンしてくれようか。しかしどうしたものか、レジストによって致命的なデバフは防がれているがこれでは左手が使い物にならない。

「そもそもクリア条件がさっぱり分かんねぇ……」

自称ゴルドゥニーネは撃破した……まぁ厳密には撃破 された(・・・) だがまぁそれはいい。じゃあ絶賛鬼ごっこを繰り広げるコイツをどうすればいいんだ? 強制負けイベントならそれまでだが、シナリオ名が「兎の国防衛戦」である以上、この大規模戦闘が終わって初めてクリアの可能性が高い。

つまりどちらにせよゴルドゥニーネを何とかしない限り終わらないし終われないのだ。

選べる選択肢は三つ、逃げ切るのか……戦うのか……死を選ぶか……おや、灯り? ……あっ、そうか。戦線を押し上げるって言ってたし、ヴォーパルバニー達の防衛が成功したなら俺が自称ゴルドゥニーネと戦っていた位置から近い場所にヴォーパルバニー達が来てるのか……これマズくね?

「全員逃げろぉぉぉぉ!!」

これやってる事は完全にモンスタートレインだなぁ!? 畜生プランBだ!

ゴルドゥニーネの眷属達が混乱状態に陥り、ヴォーパルバニー達を蝕んでいたヒビ割れの呪いが消失した。

それは即ち最前線のさらに先、敵の懐に飛び込んだ人物が呪いの根源を撃破したということを示している。

ある者は顔の半分がひび割れていた、またある者は腹部が半ばほど砕けかけていた。酷い者は全身がひび割れ、下手に動けば砕けてしまいかねなかった。

さらにこの毒は病のように伝染する、故に兎達はこのくらい洞窟から帰ることもできなければ家族に会うこともできなかった。

だがそれも今日この瞬間終わる、歓喜に跳ねるヴォーパルバニー達の武器に力が篭る。それは希望に満ち満ちたものであり、混乱するゴルドゥニーネの眷属が一掃されるのはそう遠くない未来であった。

そして最後の一匹、複数の頭を持つコブラのような蛇が大槌と大鎌によって 命(HP) の最後の一雫を削り取られ沈んだ事で、奇妙な静寂が広がる。

ヴォーパルバニー達の見つめる先、そこには一目見て 業物(レア武器) と分かる長ドスを携えたヴォーパルバニーがゆっくりと武器を持つ手を掲げる。

「我々の……勝」

「全員逃げろぉぉぉぉ!!」

緩みかけた雰囲気が緊迫に塗り潰される。それは響き渡った警告の声を聞き取ったからであり、それと同時に迫り来る禍々しい気配を本能的に感じ取ったからに他ならない。

「えっ、えっ、何事ですか!?」

「ごめーん! やばいの連れて来ちったー!」

暗闇の中から申し訳なさげな声が響く。それに伴い、頭陀袋に肉を詰めて引きずった音を何千倍にもしたような轟音はその音と振動を次第に大きくしていき……そしてついにヴォーパルバニー達によって設置された松明の光がそれらを照らし出した。

「うおおおおプランBィィィィ!」

電光石火の如く駆け抜ける半裸の人間、鳥を模した面をつけたその男は四体の龍の如き蛇に狙われながらも、左腕に力が入っていないものの驚くべき事にほとんど無傷なままトンネルの隅へ……四体の龍蛇が 一塊に連なる(・・・・・・) 位置へと移動すると右手で虚空に何かを描くように動かす。

次の瞬間、どこからともなく現れた純白のマントと漆黒の籠手を構えると、殺到する龍蛇に臆する事なく拳を振りかぶる。

「残存全ブッパ……75%だ。【 超過機構(イクシードチャージ) 】、 超排撃(リジェクト) ォ!!」

秘めたる黄金を晒した鉄拳のフックが龍蛇の横っ面を捉える。ほんの一瞬、何もかもが停止したような静寂。そして次の瞬間、莫大なエネルギーの破裂によって龍蛇が真横へと吹き飛ばされる。

倒れゆくドミノは次のドミノへと崩壊を伝達する。蘇った超技術によるな七割五分の 排撃(フック) が直撃した龍蛇は吹き飛ばされるように仰け反り、大質量の不意な挙動はすぐ横にいた三体の龍蛇を巻き込んで 絡まる(・・・) 。

そしてただ一手で一時的に四体の龍蛇を行動不能にしてみせた張本人はと言えば。

「こういう時だけ乱数の女神微笑みすぎじゃね……?」

「意地汚く生き延びてるなんテ、本当に不愉快ネ」

「あっこれ知ってる頭がリンゴみたいにグシャアされるやつ」

誰も それ(・・) が近くに来ていたことを気づいていなかった。獲物を狙う蛇が静かに地を這うように、殺すと決めた人間の……サンラクの頭を掴んで持ち上げる純白の 少女(へび) 。

その表情はヴォーパルバニーを苦しめ続けていた分け身の命を踏みつぶした時と同様に、その行為に躊躇いも感慨もない。

「さぁ、血色の花を咲かせまショウ?」

「お、俺を倒したとて第二第三のサンラクがお前を……」

みしり、とサンラクの頭からダメージエフェクトが漏れて……

ゴッ!!!

次の瞬間、スキルエフェクトの乗った大槌の一撃が純白の少女を打ち据える。規格外の膂力を持てどその身体は華奢な少女の平均的な重量に準拠する。それ故に純白の 少女(へび) は軽々と吹き飛び、思わずといった様子で緩んだ手からサンラクの頭が解放される。

「て……敵ですよ、ね? 敵でいいです、よね? ……敵、ですね。」

「斎……もといレイ氏、諸々の質問は飲み込むけど、グッジョブ……」

「だ、大丈夫ですか!? えーとサンラクさんも、派手に吹っ飛んだ方も!」

「あれでくたばるなら俺も自称ゴルドゥニーネも苦労してないさ……あれはモノホンのゴルドゥニーネだ」

まるで寝起きに身体を伸ばすように、サイガ-0のフルスイングによって妙な方向に曲がった首を元に戻す純白の 少女(へび) 。

「嗚呼……不愉快だワ」