軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

倶に天を戴いて 其の十六

俺(サンラク) のスキル構築は兎にも角にも機動力に特化している。

矢が飛んでこようが、槍が突き出されようが、崖っぷちだろうが、行き止まりに追い詰められようが。

道がないなら壁を、壁がないなら空を。すべてのスキルを同時起動できる手段が実装されれば天井だって走ってみせる自信がある。

振り下ろされる特大の質量兵器が地面へと突き立てられる。戦っていて分かるクターニッドという キャラクター(・・・・・・) の特徴。宝珠を用いたプレイスタイルのコピーは確かに強力、かつ非常に厄介だが今の所脱落した者は一人たりとも存在しない。

それは俺やレイ氏、秋津茜のような相手の攻撃に対しての対処法を持つ前衛が攻撃を引き受けていることもあるが、なによりもクターニッド自身が「弱い」からこそ今の状況が成り立っている。

「動きが単調すぎるんだよ……っ!」

大剣とは切れ味ではなく重量で圧し斬る武器だ、故に刃の部分は触れば肉が切れるというほどの鋭利さはない。

遮那王憑き、グラビディゼロ、トライアルトラバース起動。大剣の刃に飛び乗り、綱渡りの要領で大剣を駆け上がる。

さらにリキャストが終了した致命秘奥【ウツロウミカガミ】再起動、ヘイトが残影として大剣の中腹に取り残され幻影と化した 本体(おれ) が大剣を登りきり跳躍する。

プレイスタイルのコピー、なるほど強力かつ厄介だ。だがその模倣には応用がない、どう身体を動かしてどう攻撃するかを真似してもそれを独自の思考でクターニッドは応用しない。コマンド制の格ゲーのようなものだ、奴の動きはパターン化されている。

理屈として八つのタイプのパターンをそれぞれ即興で覚えることは難しい、だが理屈ではない体感としてそれを覚えることは可能だ。要するに習うより慣れろ。

「これで三回目だ、学べよクターニッド」

フリットフロート起動、頭を下に足を上にした天地逆転の状態でクターニッドの頭上に跳躍した俺が空気の足場を踏んで上から下へと跳躍する。重力に跳躍の勢いが加算された落下を攻撃力へと転換し、二種類のスキルエフェクトを帯びた煌蠍の籠手を構える。

レテ・バニッシャー及びアガートラム起動。頭部に命中させることで気絶怯みを起こす確率が高められた幸運参照の拳がクターニッドの眉間に叩き落とされた。

Vu、voooooooo…………!

「ゔ」なのか「ぼ」なのか識別しづらい呻きと共にクターニッドの巨体が膝をつく。クターニッドの背中を滑り台代わりに着地した俺は向かってくるレイ氏に頷いてすぐさま横っとびに回避、次の瞬間クターニッドの背中に純白の光が叩きつけられた。

「カタストロフィ……!」

レイ氏の……厳密にはユニーク装備「双貌の鎧」とその手に握る「 神魔の大剣(アンチノミー) 」が秘める最大火力の代名詞「アルマゲドン」、ユニークモンスター相手であれば必須とも言えるその一撃のためにレイ氏には合計十発の大技を命中させてもらわなければならない。

一旦頭から下ろしたエムルをメッセンジャー代わりにパーティメンバー全員に通達は完了した、今は後衛で頑張ってもらっているがいざという時はまた走ってもらうことになるだろう。

脳天に直撃を受け、さらに背中に大火力を受けたクターニッドが 転倒(土ペロ) する。すっ転んだ巨人相手に小人が群がって袋叩きにする光景は正直中々にアレな光景ではあるが、効率と攻略のために見てくれを犠牲にすることはゲームにおいて避けられない宿命だ。

「……矢が尽きた」

「なんて!?」

「ルストの矢が尽きたって!」

魔法弓に移行するようだが、MPを消費する以上ルストが射ち切りになるのはそう遠いことではないか……

「ごめんなさい! 道具類がそろそろ尽きそうです!」

「アタシも魔力が限界ですわーっ!」

「ぼ、僕も魔力が限界で……」

次々と上がってくる悪い知らせが現在の有利と、後々の不利を同時に伝えてくる。クターニッドめ、タフネスすぎるだろう……怯み値自体は他のユニークモンスターと比べて低いので結構すっ転ぶが、タフネス……というかあのモンスターを継ぎ接いで作ったのだろう究極つみれボディの耐久値が高すぎる。

第二形態から最終形態まで戦い通し、更に言えば回復アイテムは魚で代用できるが武器の耐久値などの対策ができなかった以上、俺たちはじりじりと追い詰められていた。

俺自身も多様な武器を持っているとはいえそろそろ限界が近い。クリティカルで耐久が減らない 傑剣への憧刃(デュクスラム) だってじりじりと耐久が減りつつあるのだ、このゲームでは耐久が0になると武器や防具はロストする。ロストはしない 一部例外(ユニーク) もあるようだが全員が全員それを持っているはずもなく。

だが少なくともレイ氏と俺が切り札を切っていない状況でクターニッドが倒れるとは思えない、それにもう一つ懸念があるのだが…………………

「サンラクさん……行け、ます……!」

くそ、よくよく考えたらなぜ皆ナチュラルに俺に判断を委ねようとするんだ。俺は先頭で進みたいだけで他の者を先導したいわけじゃないんだぞ……ええい、やるか、やるしかないか?

俺が懸念すること、それはボスエネミーにありがちな一定体力でダメージを止めてしまう現象だ。その直後にイベントに入ったり別形態になったり……理由は何であれ体力100の相手に10000のダメージを与えたとしても50しか体力が削れない、そういうシステム的なトラップがこの世には存在するのだ。

もしもそれがクターニッドにもあったとしたなら、俺たちは一気に不利状況に陥ってしまう。だがこのままぐだぐだと続けていてもジリ貧になってしまうのも事実……ええいなるようになれ!

「分かった……スパートかけよう! 俺とレイ氏が勝負をかけるから他は距離を離しつつ追撃の用意を!」

「サンラクさん! 私も参加すべきではないでしょうか!」

「いや、 秋津茜(おまえ) はいざって時の保険だ、温存しておいてくれ」

「はいっ!」

「覚悟しろクターニッド……【 超過機構(イクシードチャージ) 】!」

海上に浮上したのは間違いだったなクターニッド、煌蠍の籠手はずっと月の光を浴びていたんだぜ?

降り注ぐ月光はこの一撃の火力をずっと高めていた。最終形態なんだから妙なダメージストッパー仕込んでるんじゃねぇぞ?

煌蠍の籠手が変形し、黄金の核が破壊のエネルギーを解放せんと光を放つ。クターニッドはマッシブボディを手に入れて思考が脳筋になったのか拳を構えて先に俺を殴り潰すつもりらしい。

「脇腹貰うぞ、【 超排撃(リジェクト) 】!」

先に動いたのは俺、先に届いたのはクターニッド。だが奴の右腕から放たれたパンチが俺に命中する寸前、前へ出した左足を軸に身体を捻りながら右足を前へ、軸を左足から右足にシフトした状態で身体を回す。

真っ直ぐなストレートで突き出されたクターニッドのパンチを歯車が回転するように回避し、ステップでクターニッドの左脇腹を射程圏内に収める。

出力120%、俺自身の自滅も覚悟した超火力……もしもダメージストッパーがあったとしても、次のレイ氏が確実にダメージを入れられるように。

腹筋や骨で守られた部位と比べれば脇腹は守りが薄い、ボディブローが命中し、右拳の仕込み針がクターニッドの脇腹に突き立てられた瞬間、侵食と破壊がインパクトとなってクターニッドを激しく痙攣させた。

「隠し球があるなら……さっさと、吐き出せぇぇぇっ!!」

破裂。

水晶の欠片となってクターニッドの脇腹が大きく抉れる。衝撃波に押し出された俺の身体が冗談のように 跳ね飛ぶ(・・・・) 。さらに両拳には亀裂が走り、明らかな不調を示す黒煙が噴き出しているのが吹っ飛ぶ中で確認できた。

「上に吹っ飛んだなら好都合だ……アラバ! 助けてー!」

「何故自信満々に情けない台詞を叫べるんだ君は……」

地面にぶつかるから反動で体力が1になった俺は死んでしまう、だったら空中キャッチしてもらえばいい。

まだクターニッドの反転効果で水のない場所でも泳げることはアラバに証明させた、だからこそ宙を泳ぐアラバによってキャッチされた俺は体力1ではあるがそこで踏みとどまることができる。

「クターニッドは!」

俺の体力のことなどどうでもいい、レイ氏の攻撃は? 俺の攻撃を食らったクターニッドは? ふらつく視界をなんとかマトモに立て直して眼下に俺が見たものは、

VoooooooooooaaaaaaAAAAAAA!!!

「─── 始源(ハジマリ) の 終焉(オワリ) を謳え……く、「アルマゲドン」っ!!」

脇腹を穿たれながらも、背中から巨大な漆黒の触手を……七日前、俺たちを深海の底に引きずり込んだ あの(・・) 触手を展開させたクターニッドと、白と黒の交差が混じり合った破壊の螺旋が激突する光景であった。