軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

87話 館を探索してみた

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▍マップ/【恐怖の館テラーハウス】

▍概要

【カジノ】の【景品交換】で解放される高

難易度ダンジョン。

古代において生物兵器の研究がおこなわれ

ており、ゾンビ系のモンスターが数多く出

現する。

実装されたばかりでバグも多く、現環境で

はいったん探索を開始すると【帰還の翼】

も使えなくなるクソ仕様。

クリア前に出たくなったときは、いったん

死んで【リスポーン】しよう。

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テーラの新居――テーラハウスに閉じこめられてから、しばらくして。

ローナは屋敷の天井に頭から突き刺さりながら、インターネット画面を確認していた。

(うーん、この家がダンジョンっていうのも驚きだけど……まさか“帰還の翼”も使えないとはなぁ。屋内だとファストトラベルも使えないし)

一応、ファストトラベルを試しに使ってみたのだが……。

その結果が、今の状況だ。

とりあえず、天井から頭を引き抜いたものの。

「な、なんで、いきなり天井に頭から突き刺さって……え? 呪いか? 呪いなのか? こ、怖いのじゃ……怖いのじゃ……」

と、テーラにすっかり怯えられてしまった。

(でも、ほかの脱出手段の“ 死んで復活(りすぽーん) ”っていうのは神様にしかできない方法だよね。さすがに私にはできないし……ん? “神”にしかできない?)

そこで、ローナはぱぁっと顔を明るくした。

「――そうだ! テーラさんが死ねばいいんだ!」

「……ッッ!?!?」

“邪神”であるテーラなら、“りすぽーん”によって家から脱出できるだろう。

さらに、テーラが外から玄関の扉を開けてくれれば、ローナも脱出できるというわけだ。

それに、神々にとって“りすぽーん”のために自殺するのは日常的なことらしく、なんでも少し近道をするために自殺することを意味する“デスルーラ”という言葉もあるほどだとか。

そんなこんなで、名案だと思ったのだが。

「――テーラ、自害しろ? ま、待つのじゃ! こっちに来るでない! だ、誰か……誰か助けて、ローナに殺されるッ!」

なんかダメそうだった。

どうやらテーラは、神は神でも“りすぽーん”ができないタイプの神らしい。

となると、残る手段は――。

「うーん。やっぱり、脱出するにはこのダンジョン――『恐怖の館テラーハウス』を攻略するしかなさそうですね」

「うぬぬ……カジノのやつらめ、こんな家をつかませおって」

「ま、まあまあ。ダンジョンをクリアすれば、この家に問題なく住めるようになるみたいですし」

インターネットによると、この家でおかしな現象が起きるのは、ダンジョンならではのことらしい。

そのため、最深部にある迷宮の動力源――迷宮核を取ってしまえば、そういった現象も起きなくなるんだとか。

そうなれば、ここに残るのはただの立派な家だけだ。

むしろ、『ダンジョンをクリアすれば全て解決』となったことで、状況はだいぶわかりやすくなったとも言える。

「ふんっ、まあよいのじゃ。ちょうど、最近は暴れたりてなかったからの。いい機会じゃし、我が家の掃除をするついでに、ダンジョンでストレス発散させてもらうのじゃ!」

「そうですね、私もそろそろダンジョン観光したいなって思ってました!」

「え……ダンジョンを、観光……? え……?」

というわけで、ローナたちはさっそく屋敷の探索を開始した。

「えっと、インターネットによると、この使用人休憩室のロッカーを動かせば――あった!」

「な、なんじゃ、この階段はぁ!?」

というわけで、探索開始から数分後。

ローナたちの前に、あっさりと隠し階段が現れた。

本来なら、『博士の手記』の暗号を読み解いたり、さまざまな謎やパズルを解かないと見つけられない階段らしいが――。

(うん、インターネットに書いてある通り♪)

そんなことは、ローナには関係のないことだった。

「えっと、この階段の先には『非人道的な生物兵器の実験がおこなわれていた古代の研究施設』があって……迷宮核は『封印された神殺しの生物兵器』の奥の部屋にあるみたいですね」

「われの家、そんなことになっとるの!?」

「えへへ、地下室が広いと収納に便利そうですね! “からおけ”も“ぱーりー”もやりたい放題ですし!」

「……おぬしの人生は楽しそうじゃな」

「はい!」

そんなこんなで、ローナたちはさっそく階段を降りていく。

地下に入るとがらりと雰囲気が変わり、ぼんやりと発光している培養槽や、よくわからない機械が並んでいた。

「ふむ……これは、たしかに古代の研究施設っぽいの。知らんけど」

「えへへ。家に秘密基地があるみたいで、こういうのもいいですね――あっ、謎の“かんづめ”を見つけました! テーラさんも食べますか?」

「いや、われは遠慮しておくのじゃ」

と、完全に観光気分でダンジョンをエンジョイするローナ。

もちろん、ここまで余裕があるのは、インターネットがあるおかげだ。

「お、おい、ローナよ。一応、ダンジョンなのじゃから、気を抜くでないぞ」

「大丈夫ですよ。インターネットがあれば、敵の位置もわかりますから――あっ、さっそくこの先にモンスターがいるみたいですね」

「む? それもおぬしのスキルの力か? さっきの階段の発見といい、とんでもない力じゃの」

「はい……って、あれ? テーラさんはインターネットやってないんですか?」

「いんたーねっと? なんじゃそれ?」

「えっ、まさかインターネットをご存知でない!? インターネットは神様たちが正しい情報を共有したり、 愉悦(たの) しくおしゃべりしたりする場所で、神様ならみんなやってるって聞いたんですが――」

「………………」

「テーラさん?」

「――われ、それ知らない……われ、それ誘われてない……」

「え…………あっ……」

「………………」

「………………」

「「……………………………………」」

それはさておき――。

ローナたちが物陰からこそこそと通路の先をのぞいてみると。

そこにはインターネットに書いてあった通り、包帯でぐるぐる巻きのネズミ、ツギハギだらけの犬、血まみれの包丁を手にした人形……といった不気味なモンスターたちが徘徊していた。

「あれは……ゾンビ系のモンスターですね」

「そうみたいじゃな……って、おばけ否定してたわりにゾンビはよいのか?」

「? ゾンビはおばけじゃなくて生物兵器ですよ? “SNS”にもたくさんいますし……」

「なるほど、そうきたか」

「それより、すぐにあのゾンビたちの攻略法を調べ――」

「――待つのじゃ」

「え?」

「攻略法なんぞ調べたらつまらんじゃろ? こういうのはの、なにが起こるかわからんから楽しいのじゃ」

「う、うーん、たしかに?」

「そもそも、われ邪神ぞ? レベル108ぞ? 絶対ゾンビなんかに負けたりしないのじゃ!」

「え? あっ、テーラさん!?」

そうして、テーラがゾンビたちの前へと飛び出した。

「じゃふん! やあやあ、われこそは真の邪神テーラな――『ドデスカァアア!?』『アリエンナァアアッ!!』『ペラペラソォオオオスッ!!』――ちょっ――な、なにをする、貴様らぁ!? いや――えっ、強っ――待って、話せばわか――イ゛ェアァアアアアッ!?」

「テーラさん!?」

一瞬でボロ雑巾のようになるテーラ。

「……ケテ……タス、ケテ…………」

「わぁあっ、テーラさん!? す、すぐに助けます! えっと、えっと……」

ローナは急いでインターネットを確認する。

(あのモンスターたちは、ミイラット、ゾンビーフ、デッドドッグ、ブラッドール。平均レベルは――140!?)

ただのザコ敵とは思えないほどの強さだ。

たしかに、インターネットにも『高難易度ダンジョン』と書いてあったが、まさかこれほどとは。

(えっと、ゾンビたちの弱点は火属性、光属性、それと……治癒? 治癒が弱点ってどういうこと? 治癒でダメージでも受けるの? ど、どういう原理で?)

よくわからないが、テーラが近くにいると攻撃魔法も使えないし、かといって他の手段を調べている時間もないし……。

「ここはインターネットを信じて――水分身の舞い! からのぉ――プチヒールしゃがみ撃ち!」

「えっ、ちょっ、待っ――」

――ずどどどどどどぉおおおおお……ッ!!

と、分身したローナ×3の杖から、破滅的な轟音とともに一斉に光線が放たれた(※回復魔法)。

さらに、しゃがんで撃つことによって魔法の反動を無効化し、怒涛の3人×3連続の極太ビーム(※回復魔法)をお見舞いする。

まるで神罰のように荒れくるう光の嵐撃(※回復魔法)が、ゾンビたち(+テーラ)をのみこんでいき――――。

『邪神テーラを倒した! EXPを52149獲得!』『ミイラットを倒した! EXPを6100獲得!』『デッドドッグを倒した! EXPを10109獲得!』『ゾンビーフを倒した! EXPを9290獲得!』『ブラッドールを倒した! EXPを19364獲得!』『LEVEL UP! Lv75→80』『スキル:【ゾンビキラーⅠ】を習得しました!』『SKILL UP! 【大物食いⅤ】→【大物食いⅦ】』『SKILL UP! 【殺戮の心得Ⅵ】→【殺戮の心得Ⅶ】』…………。

『称号:【人の心がない】を獲得しました!』

「な、なんとか倒せたぁ……」

視界に現れる大量のメッセージとともに、ローナの分身がかき消える。

どうやら、無事にゾンビたちを討伐できたらしい。

「ふぅ。もう大丈夫ですよ、テーラさん……あれ? テーラ……さん? なんだか体が透けて……」

「――ローナよ――おぬしといた数日――悪く――なかったのじゃ――――」

「テーラさん!?」

「――止まるんじゃ――ねぇのじゃ――――」

「わぁあっ、テーラさん!? なぜこんなことに!?」

とりあえず、ボロボロになったテーラを慌てて 安全部屋(セーフルーム) へと運びこむローナ。

ちなみに、部屋のベッドに寝かせたら、テーラの体力はなぜか一瞬で全快した。

「うぅ……ぐすっ……し、死ぬかと思ったのじゃ……」

「よ、よかったぁ、テーラさんが無事で」

「とゆーか……あのゾンビたち、強すぎん?」

「まあ、平均レベル140ですし」

「そうか、レベル140なら仕方な――って、待つのじゃ」

「はい?」

「それ、 邪神(われ) より30レベぐらい高いんじゃけど……あやつら、魔神かなにかなの?」

「いえ、ただの無限にわいてくるザコ敵だそうです」

「…………」

「テーラさん?」

テーラは無言で近くにあったクローゼットに入って、がたがたと震えだした。

「――地上怖い……地上怖い……ガタガタガタガタガタ……」

「テーラさん!? ど、どうしたんですか、そんな“まなーもーど”みたいになって!?」

「いや、常識的に考えて、邪神よりも強い存在が無限にわいてきたらダメじゃろぉおっ! 世界滅ぶじゃろ、そんなのぉおっ!」

「だ、大丈夫ですよ。ただのよくある世界滅亡案件ですって」

「世界滅亡の扱いが軽すぎて怖い……もう嫌じゃ、われの新居はもうこのクローゼットでいいのじゃ! このクローゼットで静かだけど充実した余生を送るのじゃあああっ!」

「テーラさん……」

すっかり怯えきって、クローゼットに閉じこもってしまったテーラ。

(うーん、なんとか元気づけてあげたいけど……)

とはいえ、ローナにとっても、さすがに今まで経験したことのない難易度のダンジョンだ。

再使用まで時間がかかる【水分身の舞い】という奥の手を使って、ようやくザコ敵のHPを削りきれたような状況であり。

たしかに、テーラが不安になる気持ちはわかるが……。

それでも、ローナに不安がないのは――インターネットがあるからだ。

「――大丈夫です、テーラさん。私たちにはインターネットがあります」

「……むぇ?」

「インターネットがあれば、どんな困難だって乗り越えられます。このダンジョンだって絶対に攻略できます。だから、テーラさんもインターネットを信じてください」

「……いんたーねっとを、信じる?」

「はい! 実は、私も少し前までは、弱くて、なにをやってもうまくいかなくて、いつも不安になってばかりでした……でも、インターネットを信じるようになってからは、人生が一変! 友達もたくさん増えて、年収も一気にアップしました! そう、インターネットを信じる者は救われるんです! なにも恐れる必要はありません! だって、インターネット画面の光は――私たちの希望の光なんですから!」

「……いんたーねっとは……光……」

ローナの熱のこもった言葉に、テーラの瞳にもだんだんと強い光が宿っていき――。

「……本当に……信じて、よいのじゃな?」

「はい!」

やがて、ローナの差しのべた手に、テーラの手がゆっくりと重ねられた。

「えへへ! ようこそ、“ こ(・) ち(・) ら(・) 側”へ!」

そう、どれだけ障害が大きくても、インターネットがあるかぎり、人が負けることはないのだ。

このダンジョンをクリアするためにも、住みやすい我が家を手に入れるためにも――。

「――ここから先は、インターネットの時間です!」