軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

83話 お祭りを楽しんでみた

それから、王都では祝祭の準備が急ピッチで進められることになった。

もともと、大預言者ローナをもてなす歓迎祭の準備をしていたらしいが、それに『邪神テーラとの終戦記念』『国の借金完済記念』なども合わさり、盛大に“大預言者祭”をやることにしたらしい。

……というより、すでにテンションが振り切れた国王や、耳の早い王都商人たちによって、その日のうちに王都が盛大なお祭り状態になってしまったという感じではあったが。

「――本当にありがとう、ローナ殿。正直、大預言者の噂は眉唾ものだと思っていたが……エルフの女王が言っていた通り、君は本物の救世主だった」

(? なんの話してるんだろう?)

「ぜひ、祝祭を楽しんでいってくれ。君の友人になったという邪神テーラもつれてな」

「はい!」

そんなこんなで、ローナは国王から感謝の言葉をちょうだいしたあと。

邪神テーラと魔族たちを招いて、ぞろぞろと王都観光をした。

「じゃふぅ~っ! 今の地上はこうなっとるんじゃのぅ! おっほ! すごいのぅ! すごいのぅ! うまいメシがたくさんあるのぅ!」

「えへへ! あとでカジノってところにも案内してあげますね!」

「……ほぅ、これが今の地上か。ずいぶんと平和だな」

「……我、こっちに移住しよっかな」

(((――な、なんか、やばいやつらがいる!?)))

初めての地上の町に、テンションMAXで「のじゃ! のじゃ!」とあちこち走り回り、さっそく王都民の注目を集める邪神テーラ。

それから、いろいろ報告もあるので、光の女神ラフィエールのもとにもやって来た。

「こんにちは~っ! 今日はテーラさんをつれて来ました!」

「うむ! われが来たのじゃああっ!」

『――ぶふぉっ!?』

いきなり入ってきた邪神の姿に、光の女神ラフィエールが盛大に紅茶を吹き出した。

『げほぉっ!? ごほぉっ!?』

「ひさしぶりじゃのぅ、ラフィ!? 元気しとったか?」

『て、テーラ……っ!? な、なな……なんで、あなたが!? 邪神堕ちしたんじゃ……というか、ローナ・ハーミット! なんてものを、この空間につれて来てるのですか!?』

「えっと、テーラさんが、女神様とお話ししたいと言っていたので」

『え? テーラが、わたくしに話?』

「いやぁ、これまですまんかったのじゃ。なんかローナと話してたら、地上滅ぼさなくてもよくねってなってのぅ」

『はぁあっ!? こっちは、あなたの封印のために、どれだけ……はぁぁっ!?』

「じゃははははっ! びっくりしたかのぅ? おっ、鼻から紅茶出とるわ! じゃははは――」

『――――なにわろとんねん』

「……のじゃ?」

『なにわろとんねん』

「…………」

『…………』

「す、すまんかった」

わりと、神の中でも立場が弱そうな邪神テーラであった。

それから、光の女神ラフィエールは、これ見よがしに溜息をつくと。

『まあ、帰ってきてくれたのなら、それでいいですよ。こちらとしても戦わずに済むのなら、それが理想でしたし……もう心配かけさせないでくださいね』

「う、うむ。すまんかったのぅ。まあ、これからは昔と同じじゃ」

『ぐす……本当に、テーラが帰ってきてくれてよかった……』

「な、泣かなくてもいいじゃろ?」

『だって……うれしくて。これで、わたくしにテーラの分の仕事を回されることがないと思うと』

「……のじゃ? 仕事?」

光の女神ラフィエールが、テーブルの上に、どさどさどさっと書類の山を置いた。

『さ、邪神を卒業したなら、さっさと地の女神としての仕事に戻ってくださいね。1000年分たっぷりたまっていますから』

「………………」

だんだん状況を理解してきたのか。

さぁぁっ、と顔が真っ青になる邪神テーラ。

「や……やじゃああっ! われは邪神じゃあああっ! 働きたくねぇのじゃあああっ!」

『ふふふ、逃げられると思いましたか?』

「く、来るでない――ぶぇっ!?」

『残念でしたね、そこには謎の見えない壁があるんです』

「どうなっとるんじゃ、この空間!?」

そんな感じで白い空間を駆け回る、女神と邪神。

なんだか、こうしていると、仲のいい姉妹のようにも見える。

とりあえず、仲直りできたということでいいのだろう。

それから、お告げの時間制限とともに、邪神テーラは解放され……。

その後、かき氷の屋台にいたメルチェとコノハにも邪神テーラを紹介した。

「というわけで、邪神のテーラさんです」

「われは偉大なる黙示録の邪神テーラじゃ! ローナから聞いたぞ、おぬしらが“かれーらいす”を作っとるんじゃってな! もっと、われに貢ぐがよいのじゃ!」

「「………………」」

「どうかしましたか?」

「い、いやぁ……まさか、黄金郷に本当に行くとも思わなかったけど……日帰りで邪神までテイクアウトしてくるとはなぁ。スパイやめといてよかった」

「……ふふっ。ローナはやっぱり面白いわ」

「? なんで、みんな私を見るんですか?」

そんなこんなで、かき氷屋を手伝ったり、知り合いに挨拶をしたりもしつつ、ローナたちは祭りを回っていった。

邪神テーラは誰よりも祭りを満喫しており、いつの間にか、星型のサングラスや風船やお面を装備していた。

「じゃふふ、今の地上は面白いのぅ……きっと、1000年かけても見て回れないのじゃ」

「そうですね!」

「うむ! これからの時代は、“観光”なのじゃ!」

邪神テーラの瞳に、お祭り騒ぎの王都がキラキラと映りこむ。

しかし、ここにいるどれだけの人が知っているだろうか。

この景色を、たったひとりの少女が作り上げたということを。

そこでは、魔族も人も関係なく、みんなが笑顔になっていて――。

「…………そうか」

と、邪神テーラは少し目を見開いてから、ひとつ頷いた。

これまで、ずっと彼女は満たされなかった。

どんなに美しい黄金や宝石があっても、けっして手に入らなかったもの。

彼女がずっと見たかった景色は――これだったのだ。

「……ローナ」

「はい?」

やがて、邪神テーラはくるりとふり返ると。

「――この景色を見せてくれて、ありがとうなのじゃ!」

そう言って、にかっと満面の笑みを浮かべるのだった。