軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44話 余罪を増やしてみた

召喚して2人に増やしてしまった水竜族の姫ルルの接待をしていたところで。

「あら、ローナちゃん? なにをしているの?」

「あっ、アリエスさん」

たまたま道を通りがかったアリエスが、ローナのもとへ歩み寄ってきた。

なぜか『わたしは少女を隠し撮りしました』と書かれた紙を首からさげているが、それは触れないほうがいいのだろう。

「ん、その子たち……は……?」

アリエスがルル×2を見るなり、ぴしりと固まる。

「あっ、この子たちは、2人ともルルちゃんっていいます」

「か……か……」

「アリエスさん?」

「んきゃわいい~~っ!!」

「「るっ!?」」

アリエスにいきなり抱きしめられそうになり、ルルがびくっとローナの後ろに隠れる。

「こ、この人間、目がやばい……っ!」

「よ、寄るな、人間! ルルを食べる気か!?」

「「……が、がぉーっ!」」

誇り高き水竜族の姫、人間にめちゃくちゃビビっていた。

「――ハァ……ハァ……❤

2人は、ルルちゃんって言うんだネ❗✋

ルルちゃんたちと知り合えて^^

おじさん嬉しいヨ~(^з<)-☆

ところで、おじさんは

今日、お休み^^なんだけど

これから、みんなでデート❤とか、

どうカナ⁉️(笑) ナンテネ❗(^_^;)」

「アリエスさん! 内なるおじさんしまってください! 国際問題になります!」

「は――っ!? ルルちゃんたちがかわいすぎて、つい! ……って、国際問題?」

「に、人間とは、なんと恐ろしい生き物か……っ!」

「やはり、人間は滅ぶべき……」

「あ、安心してください、ルルちゃん! 私たちは敵じゃありませんから! そうだ、同じ海の仲間だし……ほ、ほ~ら、“ふかきモン”の絵ですよ!」

「「な、なんだ、そのおぞましい化け物!? うるるるぅぅ~ッ!!」」

「ローナちゃん……敵対行動とみなされてるわよ、それ?」

「な、なんで!?」

それから、なんとか釣りエサでルル×2をなだめたあと。

ルル×2を見ながら、アリエスがそっと耳打ちしてきた。

「それで、ローナちゃん……この子たちはなんなの? ただのお友達……ってわけじゃないわよね? 尻尾や翼が生えてるし、まったく同じ見た目をしてるし」

「それは……」

ローナが思わず口ごもる。

この問題に巻きこんでいいものか迷ったが……。

「――なにか、困っているのかしら?」

「え、それは……」

「ごめんなさい。詮索するつもりはないの。だけどね、ローナちゃん……あなたが全てを抱えこまなくてもいいのよ?」

「え?」

「たしかに、ローナちゃんには、なんでもできるだけの力があるわ。でも、だからといって、なんでもひとりで解決しないといけないわけじゃないのよ。もしも困って、どうしたらいいのかわからなくなったときは……遠慮せずに、わたしたち大人に頼ればいいわ。ちょうどローナちゃんには、返しきれないほどの恩があるしね」

「アリエスさん……」

全てを包みこむ聖女のようなアリエスの微笑みを見て――。

(……この人なら頼れるかもしれない)

と、ローナは思った。

なぜか、『わたしは少女を隠し撮りしました』と書かれた紙を首からさげているけれど……関係ない。

ローナは懺悔をするように口を開いた。

「……聞いて、くれますか?」

「ええ、もちろんよ。それで、なにがあったの?」

「それが……海底王国アトランに住んでいる水竜族の姫を、無断で召喚してしまいまして」

「うんうん……うん?」

「あと、水竜族の姫を2人に増やしたり、売って金にするって言っちゃったり、釣りエサを食べさせちゃったりして……このままじゃ、深刻な国際問題になって、種族間戦争にまで発展しそうで……」

「……………………」

「ど、どうしましょう、アリエスさん!」

「……落ち着いて、ローナちゃん。大丈夫よ」

アリエスが優しげな微笑みのまま――すっ、と。

どこからともなく、酒瓶を取り出した。

「こういうときは、焦らず騒がず……お酒を飲んで、全部ぱぁっと忘れましょう!」

「アリエスさん!?」

「あはっ……あははっ! 昼間から飲むお酒おいしいいいいっ! あはははははっ!! ほら、ローナちゃんも一気! 一気――は、離して、ローナちゃん! これはお酒じゃないわ! お酒という名の、大人の燃料なのよ!!」

「アリエスさん……」

お酒を飲んでヤケクソになり、子供になだめられるダメな大人がそこにいた。

「ぐすん……ごめん……ごめんねぇ、ローナちゃん。わたし、今度こそローナちゃんの役に立てると思ってぇ……舞い上がっちゃってぇ……ふぇぇえん……」

(面倒事が増えたなぁ……)

ローナが抱えこむ問題が+1されてしまった。

「って、あれ? ルルちゃんがいないっ!?」

やけに静かだと思ったら、いつの間にかルル×2の姿が消えていた。

慌てて辺りを探すと――すぐにルル×2は見つかった。

「おい……貴様ら、なにを見ている?」

「まさか、ルルの“つりぇーさ”を奪う気か?」

「くくく……いいだろう、ならば3秒だ」

「3秒で――貴様らを返り血まみれにしてくれる!」

「「にゃぁあああおッ!!」」

「………………」

なぜか、ルル×2は猫たちと睨み合っていた。

「あ、あの、ルルちゃん? なにをして……」

「「「――ギャフベロバギャベバブジョババッ!!」」」

「ルルちゃん!?」

「い、痛いっ……や、やめっ……」

「…………けて……たす、けて……」

「ルルちゃん!?」

誇り高き水竜族の姫、猫とガチの喧嘩をして負けていた。

ローナは慌てて猫を引き剥がし、ルル×2にプチヒールをかける。

「これが、人間の使い魔……なんて、凶悪な」

「……ち、地上……恐ろしい場所だ」

(ただのかわいい動物なんだけどなぁ……)

しかし、ルル×2は魚っぽいオーラでも発しているのか、今もやたら猫にたかられていた。

ルル×2にとって、猫は天敵なのかもしれない。

(というか、この子たち…………弱い?)

さすがに、猫に負けるのはどうなんだろうと思っていると。

「るぅ……なぜか、力が入らない……」

「お、おかしい……地上だからか……?」

ルルたちもまた、首をかしげていた。

なにやら嫌な予感がして、ローナがインターネットで調べてみると。

(えっと……『召喚したキャラクターはレベル1スタートです』か。ということは、もしかして……召喚されたことでレベル1になっちゃったってこと?)

つまり、どういうことかというと。

①他国の姫を拉致して使役する。

②他国の姫の複製体を作る。

③他国の姫に「共食いしろ」「売って金にする」発言。

④他国の姫に釣りエサを食べさせる(←NEW!)

⑤他国の姫のレベルを1に下げる(←NEW!)

(わ、私の余罪がとどまるところを知らない……)

思わず、頭を抱えるローナであった。

そんな一幕のあとも、ローナはルル×2の面倒を見続けた。

ルル×2は元気に走り回り、あちこちで騒ぎを起こし続け――。

「「るー♪ ルルは満足である」」

(つ…………疲れた……)

やがて、ルルがご満悦そうにぽんぽんとお腹をさする頃には、ローナは心なしかげっそりしていた。

途中から、釣り大会の賞品である“すんごい釣り竿”を出すと、ルルたちがぴょんぴょんっと寄ってくることがわかったおかげで、少しは対処が楽になりはしたが……。

なにはともあれ、それだけ苦労したかいはあったらしい。

「げぼくはいいやつだ! 気に入ったぞ!」

「特別に、信頼してやってもいい!」

「「げぼくー♪」」

(……す、すごく懐かれた)

誇り高き水竜族の姫、めちゃくちゃチョロかった。

どうやら、釣りエサをあげたり猫から助けたりしたことで好感度が急上昇したらしい。

(釣り大会で、釣りエサ1年分もらっといてよかったな……)

と、ローナは一気に寂しくなった財布事情を思いながら、力なく笑う。

「と、とりあえず、満足していただけたようですし、そろそろ海底王国アトランに帰りましょうか」

「るっ、そうだな。地上のこともよく知ることができた」

「だが、アトランまでの道はわかるのか?」

「ああ、それなら大丈――」

と、ローナが言いかけたところで。

「――どうやら、わたしの出番のようね」

「え?」

そう言って歩み寄ってきたのは、アリエスだった。

酔いが抜けたのか、先ほどとは違って真面目な表情をしていたが……その首からはまだ『わたしは少女を隠し撮りしました』という紙がさげられていた。

「えっと、アリエスさん? もしかして、なにか知ってるんですか?」

「ええ、さっきローナちゃんから話を聞いたあと、神殿の書庫を調べていたの。海底王国アトランへの具体的な場所まではわからなかったけど、この町には数多くの“水竜伝説”が残っていてね。とくにうちの神殿は昔からあるし、海底王国アトランは聖地みたいなものだから、ヒントのようなものは見つけることができたわ」

そう言って、アリエスは抱えていた石板を見せてくる。

「古の巫女マリリーンが残した石板には、こんなことが記されているの。『満月の夜、星が正しく配列されしとき、水竜の旋律と唄がアトランへの道を切り開くであろう』と……このうち、“水竜の旋律”は水竜神殿の地下祭壇にまつられている竪琴のことでしょうね。それで、こっちの“水竜の唄”については、すでに失伝しているようだけど……町の西にある“水月の大灯台”というダンジョンで、古代ゴーレムの灯台守から聞けるかもしれないわ」

「……そ、そうなんですね」

「ふふっ、今までローナちゃんにはお世話になりっぱなしだったからね。この水竜の巫女アリエス・ティア・ブルームーンの名にかけて、必ずや海底王国アトランの場所を解明すると誓うわっ!!」

「…………アリエスさん」

今さら『インターネットで海底王国アトランまでの地図は見れますよ?』とは言いにくいなぁ、と思うローナであった(※このあと、めちゃくちゃ言った)。