軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

40話 エルフの隠れ里に転移してみた

イフォネの町でいろいろとお土産を買いこんだあと。

ローナは次に、エルフの隠れ里に転移した。

エルフたちには転移現場を見られてもいいかなと思って、そのまま里の前に転移したら少し騒ぎになってしまったが……。

なにはともあれ、城へと向かうと、さっそくエルフの女王エルハゥルと姫のエルナに出迎えられた。

「こんにちは! 女王様、エルナちゃん!」

「あっ、救世主様!」

「“おっは~”である、ローナ殿。ここを出てから2週間も経っておらんが、ずいぶんと早かったな」

「はい! 実はこのたび、行ったことのある場所に転移することができるようになりまして!」

「……なるほど。あいかわらず、めちゃくちゃやっているようで安心したぞ」

「エルフの隠れ里は、あれからどうですか?」

「うむ。ローナ殿のおかげで“よいちょまる”だ」

「みんな、“まじルンルンご機嫌丸”ですよ!」

(……? なに言ってるんだろう、2人とも?)

自分の教えた言葉をすでに忘れているローナであった。

「あっ、そうだ。これお土産です!」

それから、他の町で買ってきたお土産を2人にわたす。この前、この里を訪れたときは、お土産をもらうばかりになってしまったので、そのお返しだ。

「このホタテ食べてみてください! 飛べますよ!」

「ほぅ……? 海の幸など数百年ぶりだが、これは……“飛ぶ”な」

「わぁ! シーフードって、わたし初めてです! ホタテって甘くて、すごく飛べますね!」

最初はエルフの口に合うか不安だった海産物だが、びっくりするぐらいに好評で、ローナが持ってきたものはすぐになくなってしまった。

むしろ、『エルフならフルーツとか好きかな?』と選んだイプルパイのほうが反応は小さかった。

森の中で長生きしていることもあって、野菜やフルーツにはもう飽きているのかもしれない。

ただ、港町アクアスにあったスイカだけは、見たことのないフルーツなのかわりと好評だった。

そんなこんなで、いつの間にか他のエルフたちも集まってきて、宴のようになり――。

「それでは、救世主様の帰還を祝して―― 乾杯(KP) !!」

「「「――いぇあッ!!」」」

そんな陽気なノリとともに、酒杯がくみ交わされる。

それから、ローナは目をキラキラさせたエルナに、インターネットの画像や写真を見せながら土産話を聞かせていた。

といっても、エルフの隠れ里を発ってから時間はあまり経っていないため、話せることはあまりなかったが。

「わぁ……雷がずっと降っている湿原に、景色のずっと先まで広がっている大きな水たまりですか! なんだか、おとぎ話の世界みたいですね! こういうのって、“ナーロッパ”って言うんでしたっけ!」

「しかも……水曜日になるとモンスターが必ず大量発生する町か。まるで“嘘松”であるな」

「ちなみに、海のにおいは人の口臭のにおいなんですよ」

「わぁ! アマゾン生えます! いつか、わたしも海見てみたいなぁ!」

「それなら、今度、私がつれて行ってあげますよ」

「本当ですか、救世主様! 約束ですよ!」

「む、むぅ……しかし、エルナは子供だし、まだ外の世界は危険ではあるまいか?」

「もう、お母様! わたしだって、もう130歳! いつまでも子供じゃないんですからね!」

(…………エルナちゃんって、115歳も年上だったんだ)

などと、土産話などに花を咲かせていたところで。

「――陛下、少し確認していただきたいものが」

と、近づいてきたのは、白衣姿の紫髪の女エルフだった。

以前よりもどこか真面目そうな格好をしているが、間違いない。

毒花粉をばらまき、世界征服の一歩手前まで近づいた薬師――。

「あっ! もしかして、ザリチェさ――」

「ひ……ひぃいいいッ!? 出ましたわぁあああああ――ッ!?」

めちゃくちゃ悲鳴を上げられた。

「え? あ、あのぉ」

「言う通りにします! しますから! ひどいことしないで!」

(……な、なんで、こんなに怯えられてるんだろ? 私って、そんなに怖いのかな……?)

それから、しばらくして。

とりあえず、ザリチェが落ち着いたところで話を聞いてみると。

「へぇ、ザリチェさんは今、薬草の無限採集法の研究をしているんですね」

「ああ、ザリチェはもともと研究者として有能であったからな。罰としてただ強制労働させるよりは、その知識やスキルを活かしてもらったほうが実りも多いと考えたのだ。この間のようなことがないよう、とくにマボロリーフの量産体制は作っておきたいしな」

「なるほど、適材適所っていうやつですね」

「お母様やみんなにひどいことしたの、許したわけじゃありませんけどねっ」

いろいろ複雑な状況ではあるものの、一応は収まるところに収まったという感じらしい。

「でも、大丈夫なんですか? ザリチェさんの植物を操るスキルは、その……危険かもしれませんが」

実際、ザリチェはエルフたちに野望を感づかれることなく、秘密裏に世界征服の一歩手前まで迫っていたのだ。警戒するに越したことはなさそうだが。

「まあ、心配なさらずとも……今のわたくしは、ただのトゲを抜かれた薔薇みたいなものですわ。罪人用の契約魔法をかけられているから逆らえませんし、ググレカース家からのマナの供給がなければたいしたこともできませんし。それに……」

と、ザリチェがぷいっと顔をそむける。

「今はあなたが持ちこんだ、この“ローナ式農法”を研究していたほうが楽しいんですの。少なくとも100年間は、世界征服なんてしている暇がありませんわ」

「ローナ式農法……」

以前に教えた無限採集法に、なんか変な名前がつけられていた。

それから、ザリチェが興味津々といったように、ローナにいろいろと質問を浴びせてきた。

「らふふふふ♡ すごいですわぁ♡ 本当に、この世には知らない薬草や錬金レシピがたくさんありますわぁ♡」

と、だんだんテンションが上がってくるザリチェ。

「まったく、陛下も“ 神々の俗語(ゴッドスラング) ”などに執心してないで、こういった実用的な知識を聞くべきなのですわぁ♡」

「うぐ……」

「あっ、そうだ。この辺りに生えてない薬草とかありますけどいります? 雷湿原のカミナリーフ、港町アクアスで売っていたスイッチハーブ、ウルス海岸のサンゴツリーの枝とか……」

「いいんですの!?」

「ザリチェさんの分のお土産はなくなっていたので」

「らふふ♡ わたくしにはこちらのほうがご褒美ですわぁ♡ んほぉ~、この草具合たまりませんわぁ♡ おハーブですわぁ♡」

と、その辺の地面で拾ってきた草に、よだれを垂らしながら頬ずりし始めるザリチェ。

わりとマッドサイエンティスト気質というか……研究熱心なエルフらしい。

見れば、持ってきていた紙の束にも、細かいグラフなどがびっしり書きこまれていた。

もともと世界征服を狙っていたのは、『好奇心を満たしたかった』という理由も大きかったようだし、わりとこっちが素なのかもしれない。

それから、エルフたちと一通り話したあと――帰り際。

「ああそうだ、ローナ殿。これをわたしておこう」

女王がローナに袋をわたしてきた。

中を見ると、水晶玉がぎっしり入っていた。

「これは?」

「ググレカースのやつらが悪事に使っていた“通信水晶”という 古代遺物(アーティファクト) だ。これにマナを注いでおけば、なにかあったときに対になる水晶と通信を取ることができるらしい。里の外にもエルフがいるから、なにか困ったことがあればその者らに連絡を入れてくれ。きっと力になるだろう」

「へぇ、便利なアイテムですね。でも、こんなにもらっちゃっていいんですか?」

「わらわがこれだけ持っていても使わんからな。他にもわたしたい相手がいたら、わたしておくといい」

「ありがとうございます!」

というわけで、ありがたく通信水晶をアイテムボックスへとしまうと。

ローナはエルフの隠れ里をあとにしたのだった。