軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33話 友達を召喚してみた

「――ついに念願の防壁が手に入ったわ」

“水曜日”のスタンピードに備えて、防壁作りが完了したあと。

アリエスは手の空いた冒険者たちを集めて、話し合いをしていた。

「ローナちゃんが作ってくれたこの防壁――“ウォール・ローナ”と、ローナちゃんという心強い戦力があれば、もはや“水曜日”など恐るるに足らず! 町の安全が守られれば、出ていった人たちも戻ってきて、町の復興も一気に進むはずよ!!」

その言葉に、わっと冒険者たちが歓声を上げる。

ローナの存在はまさに、久しぶりに見えてきた希望だった。

「でも、もちろん問題はまだ山積みよ。装備の消耗、物資の不足……そして、とくに深刻なのは人手不足ね」

さすがに、ローナひとりで“水曜日”のモンスターを全て倒すのは無理があるだろう。モンスターの発生範囲はそれなりに広いし、曜日が変わるまでモンスターが発生し続けるためだ。

できるだけ、ローナという最高戦力を温存したかったが……。

とはいえ、“水曜日”のモンスターに対抗できる“レベル20以上のベテラン冒険者”なんてものは、一握りしかいない。

さらに、そのベテランたちは通常依頼でも駆り出されているため、休憩が満足に取れていない状態が続いている。

「人手が足りてない……あっ、そうだ! いいこと思いつきました!」

「えっ」

そこで、ローナはアイテムボックスから水晶のかけらのようなものを取り出した。

これは、雨宿りしたときに知り合った親切な黒ローブの人たちから、『必要があれば呼んでください』とわたされたものだ。

「そ、それは?」

「たしか、召喚石っていう 古代遺物(アーティファクト) だそうです。えっと、使うには……こうかなぁ?」

「あっ、ちょっ!? ちょっと待って! 嫌な予感が! ローナちゃんがなにかすると絶対にやばいことが起きそ――あぁあっ!?」

と、アリエスが慌てて止めようとするも。

それより先に、ローナが頭上に掲げた召喚石が、まばゆい光を放ち、そして――。

…………ずるり、と。

ローナの背後から影絵が立ちのぼるように、黒ローブの6人組が現れた。

「「「……我ら、参上しました」」」

使い魔のようにローナに付き従う6人組。

――黄昏の邪竜教団・ 六魔司教(ろくましきょう) 。

それは、終末竜ラグナドレクを復活させようとたくらむ邪竜教団の幹部であり――。

最近できたローナの“ズッ友”だった。

(ほらぁ……もう、すぐそういうことするぅ……)

いきなり現れた黒ローブ集団に気圧されて、アリエスが尻もちをつく。他の冒険者たちも黒ローブ集団の力を悟ったのか、悲鳴を上げたり気絶したりする。

そんな中、ローナはくるりと黒ローブ集団のほうをふり返ると。

「我らの絆は~?」

「「「……答えは……“永遠”……」」」

「いえ~い!」

黒ローブ集団とハイタッチをするローナ。

(…………めちゃくちゃ仲いいじゃん)

アリエスは思わず頭を抱えた。

「みなさん、来てくれてありがとうございます! それで、みなさんにちょっと協力してほしいことがあるんですが」

「……ッ! ついに、“動きだす”のですね……」

「……そのお言葉を……待っておりました」

「……来るぞ……闇の時代が……ッ!!」

「OKだそうです! これで人手も増えますね、アリエスさん!」

「い、いえ、あの……ローナちゃん? なにかな、この『裏で世界を滅ぼそうとしている邪教団の幹部』みたいな人たちは……?」

「私のお友達です!」

「いえ、絶対におかしいわよね!? だって、闇のオーラ的なもの出てるし! 画風が違うし!」

「闇のオーラ? 画風?」

「……くくく」「……きひひひひ」「……ふぉっふぉっふぉ」

「ほらぁっ! なんか邪悪な笑い方してるしぃっ!」

「……? みなさん、とても親切な人たちですよ?」

「え、えぇ……? 本当にそう? まあ、ローナちゃんがそこまで言うのなら――」

「……人間よ……なにゆえ、もがき、生きるのか……」

「……命……夢……希望……どこからきて、どこへゆく?」

「……滅びこそが我が喜び……死にゆくものこそ美しい……」

「……悲しい……悲しいなぁ……きひひひひひひ……」

「――――チェンジで」

などとアリエスが騒いだものの。

なにはともあれ、心強い味方ができた。

「と、とりあえず……人手不足は解決したわね。あと装備の修理については、わたしのほうからまた鍛冶師のドワーゴさんにお願いしておくわ。みんなは今のうちに明日に備えて休むこと。いいわね?」

その言葉とともに、その場は解散となった。休みなしで働きづめだった冒険者たちは、少しでも疲れを癒やすためにぞろぞろと帰っていく。

そんな中、ローナはウルス海岸に残って、作業を続けていた。

「プチウォール!」

ずずずずずず……っ! と。

ふたたび巨大な城壁を作り、作業場で借りたノコギリの刃を当てるが。

「うーん、ダメかぁ」

ただのノコギリでは、ローナ製の壁にまったく刃が立たない。

(うーん、困ったなぁ。“水曜日”を攻略する前に、インターネットに書いてある“あれ”を作っておきたいんだけど……よく切れるノコギリがある場所とか、どこかに書いてないかなぁ?)

ローナは肩を落としつつ、改めてインターネット画面を操作する。

(へぇ、この町って、イフォネの町よりも“サブクエスト”っていうのが多いんだね……って、あっ! これとかいいかも!)

ローナの画面の先、そこに書かれているのは――。

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■マップ/【港町アクアス】

入手アイテム⑧:【殺刀・ 斬一文字(キルイチモンジ) 】(S)

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(うん! 名前からして、すごく切れそう! Sランクだし!)

Sランクの剣というと、SSSランクの“世界樹の杖ワンド・オブ・ワールド”のでたらめっぷりのせいで、扱うのが怖く感じるが……。

(まあ、どうせ剣なら『切れ味がいい』ってだけだろうしね)

さすがに剣を振ったところで、天変地異が起きたりもしないはずだ。

(えっと、この剣は『ドワーゴの日用品店』ってところで手に入るんだね。あっ、ただもらうにはアイテムがいくつか必要なのか。うーん、今からだと明日に間に合うかなぁ……)

と、少し悩んでいたところで。

そんなローナの様子を見ていた黒ローブ集団が、すかさず話しかけてきた。

「……なにか、お困りでしょうか?」

「……なんなりと、お申しつけください」

「……我らは、あなた様の召喚獣のようなもの」

「え? あ、はい」

そんなうやうやしい態度に、ローナは少し戸惑うが。

(こんな礼儀正しくて親切な人たちも、世の中にはいるんだなぁ。雨宿りしたとき水をあげたぐらいだけど、人から受けた恩を忘れないタイプなのかな?)

それにもしかしたら、黒ローブの人たちは退屈していたのかもしれない。

思えば、召喚しておいて待機させているだけというのも失礼だろう。

(うーん、せっかくだから力を借りるか)

というわけで、ローナは黒ローブ集団に向き直った。

「それじゃあ、少し集めてきてほしいアイテムがあるんですが――」